聖者達part 代表さんに質問責め-9
『じゃあ……ガンさんのスキル解説はっじまっるよ~。』
呑気な声が聞こえた後、別の人形が三体ほど飛んできた。説明用に色々と準備したのだろう。
『じゃあ最初に、この犬猿の仲の二人が使っていた移動系スキルについて説明だ!!とはいっても二つしか出てきてないけどね。』
確か、『瞬』と『稲光』だったかな。あの闘いで使われていたのは……と、自分の記憶を確認していた。
『まず、『瞬』と『稲光』の違いについて説明しようと思うけど…………二人の使っているところを見て何か気付く事は無かった?』
ガンさんの人形が言うと、鈴が何かに気付いていたらしく、ガンさんの質問に答えていた。
「『稲光』は攻撃にも使えそうだったが、『瞬』は完全に移動に要点を置いていた気がするな。」
鈴がそう言うと、うんうんとガンさんの人形が頷いていた。
『その通りだよ~。『稲光』は高速移動での突進、『瞬』は瞬間移動を利用した緊急回避的な所かな。まぁ、進化させれば『韋駄天』と呼ばれてるスキルに変更できる。これは回避行動じゃなくて攻撃に転じる瞬間移動だからね。移動系のスキルは瞬間移動か高速移動と覚えて置いてくれれば良いよ。実践でもよく使われるしね。』
移動系のスキルの説明が終わると、倒れていた三人が起き出していた。隼人はあまり辛そうには見えないが、他の二人はかなり辛そうだった。
「くっそ…………潰したと思ったらとんだ隠し玉使いやがって…………。」
「そちらこそ…………あんな小癪な技で私を倒そうなど甘かったですね………。」
完全に仲が悪いなぁ、この二人は………………。
『はいはーい、二人とも。喧嘩はしゅーりょーだよ!!これから二人の使ってるスキルについて説明するけど、機密とかもあるから新技関連だけでいいかなぁ?』
「かんっぜんに嫌がらせか!!こっそりと練習した必殺技完全に看破されるんだけど!!」
「そうです!!この事も機密に…………」
団長二人が必死にガンさんに抗議するも、ガンさんの、
『無断で決闘して演習場ボコボコにした事をユンクに言いつけられるのと新スキルの秘密を暴露されるの、とっちがいいの?』の一言で沈んでいた。
落ち込んだまま、アーサーさんは喋り始めていた。
「『雷分身』についてってなぁ…………。これ自体は雷系の名前の付く上位職が使えるっていうスキルだ。まぁ、俺はその分身が消えた後の力を変えてみただけだけどな。」
『見た感じ、『雷雲』にはさっき使ってた捕縛の効果の他にも反撃や閃光での目眩ましもありそうだね。多分、撃と光って付くんじゃないかな?』
「…………ガンダレスよぉ、お前実は秘密の修行とか覗いてんだろ!!俺誰にも言ってねぇんだけど!!」
『まぁまぁ、味方の実力を知るのが私のポリシーなのさ!!ははは。』
「その言葉が苛つきますね……ガンダレス。面白がってるだけじゃないですか。」
『そうとも言うね。じゃあベルの第何の矢については私が説明してあげよう!!』
それを聞いて、ベルさんはジト~ッとした目でガンさんの操る人形を睨んでいた。
『ベルの使う第何の矢系のスキルは格好いいからって事で名付けてあるわけ。この掛け声で他の人が使おうとしても同じスキルは使えないんだ。簡単に言うとスキルじゃなくてあくまで大雑把なスキルを使った技という扱いだから。まぁ、職業での力を使うのは間違いないんだけどね。』
「…………私が十代前半の頃に、当時のテンペストの団長の使う魔導書の言葉が格好良かったからですよ!!」
『それで今では第十三の矢まで完成したってわけだね~。いやぁ~、後五十七の矢も完成すると良いよねぇ~。』
「や、やめてください!!ガンダレス!!」
『うっさいなぁ。じゃあ止めて見せてよ。お~にさんこちら。て~のな~るほうへ。』
ガンさんの人形が逃げ始めると、ベルさんは辛いであろう体を立ち上がらせた。
「すぐに終わらせましょう……『第二の矢 狼』!!」
そう言って、ベルさんは二本の矢を同時に射った。ベルさんの放った矢の一本は、ガンさんの人形を追尾していた。そして、もう一本は人形の行き手を遮るように人形の前を進んでいた。
『相変わらず嫌な矢だなぁ………まぁ、壊されないけど。』
そう言った直後にベルさんの放った矢が人形を射抜き、氷付けにした。しかし、人形はあっさりと氷を砕いて脱出していた。
「…………やはり、これで行きましょうか?『第十三の矢 土……』」
『やらせるわけ無いよ~。そんな強力な技。だからはいっ。お終いっ。思い切って白状しちゃいなよ。黒歴史みたいな技の名前!!』
「ぐっ………勝負に負けてしまいましたか………。」
いつのまにか勝負になっていたらしい。まぁ、参考にとベルさんから十三の矢までの名前とその技の方向性を教えて貰ったので箇条書きにしてみた。
1 獅子…通常の攻撃力の何百倍もの力を込める。連射不可。
2 狼…追尾して確実に相手に当てる。
3 川蝉…上空に放ち、その後急降下させて攻撃する
4 熊…モンスターを怯えさせるような威嚇を持った矢を放つ
5 竜…第一の矢の亜種。何百倍かの力を込めて放った矢が自壊し広範囲に広がっていく。
6 太陽…光沢を出し、相手の目を眩ませながら攻撃できる。
7 鷹…矢に自我を持たせて攻撃させる。
8 蜘蛛の巣…射た後に好きなタイミングで蜘蛛の巣のように六角形に広がらせる。相手を一網打尽にしたりするのに使用する。
9 籠鼠…円を描く矢を放つ。円を描いたままその場に定着するために防御や妨害に使用する。自分を囲むように放つことで盾にすることも可能。
10 兎…地上を跳ねるように進む矢を放つ。足場を凍り付かせる効果もある。
11 蜂の巣…細かい矢を複数同時に放つ。
12 猪…真っ直ぐにしか飛ばせないが最速の矢であり、距離が伸びる度に加速し威力が上がる。
13 土竜…下に放ったあと、矢が相手のいる場所まで移動し、突き上げる事で攻撃する。
『ちなみに~、『終の矢 帝』なんていうなんとも中二クサいのがベルの部屋のゴミ箱の底に残っていたのは内緒だよ~』
「ここにいる人にも知られたくないことを言わないでください!!」
文句を言った後に恥ずかしさからか顔を赤くして悶えているベルさんと、そんなベルさんを見て笑っているアーサーさんを見ていると、なぜか和んだ。
「…………俺の転職、どうなったの?」
そういえば、まだ転職が終わらず、ドMの王様のままな隼人が言った。
『………………なんかゴメン。』
ガンさんも、元々は隼人の転職から始まった事を、すっかり忘れていたらしかった。