聖者達part 代表さんに質問責め-8
演習場につくと、残念なことにそこはアーサーさんとベルさんの戦場になっていた。ルールは分からないのだが、隼人もその戦場に駆り出されていた。
「相変わらずうぜぇな!!ベルさんよぉ!!」
「それはあなたも同じですね、アーサー!!」
二人が鬼気迫る表情での攻防の中、隼人はボロボロになりながら二人から逃げていた。
「おーい!!隼人ーー!!どんなルールでやってるのかなぁーーー?」
山彦を楽しむような感覚で奈津が隼人に聞いていたが、隼人の息は切れており、ゼーハーゼーハーとしか聞こえなかった。本当になにがあったのだろうか?私が考えている間にも、二人の戦闘は続いていた。
アーサーさんが電気を纏って高速で突っ込むが、ベルさんがそれを瞬間移動の様な何かでかわしていた。そして、ベルさんは矢を放つがアーサーさんはそれを剣を一振りで砕いた。
「アーサー、貴方はいつも『稲光』で攻撃してきますが、私はそれを簡単にかわせますね!!私の『瞬』ならば!!」
「けっ、どうせ『瞬』の後の攻撃はよわっちいんだよな!!俺はそれを簡単に砕けんぞ!!」
「ならばかわすだけでなく迎え撃ってあげましょうか?来なさいよ、『稲光』で。」
「うっせーよ。どうせ『氷塔』だろ?俺がそんな手にかかるかっつーの!!行くぜ新技、『雷分身』!!」
アーサーさんが叫ぶと同時にアーサーさんそっくりな分身が五人ほど出現した。それを見て私達はかなり驚いたが、対戦相手のベルさんはあまり動揺していなかった。
「増えただけでは何も変わりませんよ。アホですか?アーサー?『第八の矢 蜘蛛の巣』」
ベルさんがそう言って放った矢は、ベルさんに同時攻撃を仕掛けていたアーサーさんの五人の分身がベルさんの目の前で切りかかっていた。
しかし、ベルさんの弓から放たれた矢は五人の内の一人に当たると、そのまま六角形のように広がっていき、他の四人も貫いていた。
「一網打尽ぐらい、私ができないとでも思いましたか?」
「…………いや、『瞬』を使わなかった事が意外だったな…………まぁ、別に良いけどな。」
「何を言っているのですか?アーサー?」
新技をあっさりと破られたのにも関わらず、アーサーさんは笑っていた。それがなぜなのか、私達もベルさんも気付いていなかった。ただ、分身の消えた後に出た煙がベルさんにまとわりついているだけだった。
「さてと、そろそろか………『雷雲・縛』。」
アーサーさんが呟くと、煙が途端に電気に変わっており、ベルさんを縛っていた。アーサーさんはこれを狙っていたのだろうか?ベルさんは動けなくなっていた。
「まさか分身は囮だったわけですか………。単細胞にしては中々やりますね。私も貴方に弓先を当てることすら出来ませんね。」
「このまんまじゃあ『瞬』も使えないだろ?それに、攻撃手段もねぇわけだ。サクッと決めさせて貰うぜ!!『落雷』フルパワー!!」
アーサーさんがそう言いながら剣を振り下ろした。それと同時にベルさんに向かって巨大な雷が落ちた。縛る時間に限りがあったのか、ベルさんを縛っていた電気はベルさんから無くなっていた。
「さ~て、勝った勝った。これで俺の方が一勝リードだなはっはっはっ……………。さてと、アイツを転職させてやらねぇとな………。」
そう言いながらアーサーさんは隼人を探し始めていた。さっきの『落雷』で力を殆ど使い切ったのか、フラフラの状態だった。
フラフラになっているアーサーさんに隼人が駆け寄り、肩を貸した時だった。隼人もアーサーさんも、闘いが終わったと錯覚していたのだろう。だが、現実はそう思ってしまうと違う未来に行きやすい物であり………。
アーサーさんと隼人は、ベルさんの一矢報いる攻撃を受けることになった。と、言うのも、二人がさぁ転職の儀を始めようとした時に、二人の足下に直径10メートルほどの魔法陣が出現し、そこから矢のようなエネルギー体が二人を遙か空へと突き上げていたのだ。
「私も……新技があったんですよ………アイツに一矢報いるために使わされたのには苛つきますけどね…………。まぁ、よくやりましたね、『第十三の矢 土竜』。」
…………いやいや、最後になんで一矢報いるどころか道連れにさせる技を最後の最後に撃ったんですかと思ってしまった。
『まったく、この二人には呆れるよ。大体演習場を穴ぼこだらけにする奴がいる?いないよね?せっかく後輩たちに人形使いとしての実演をしようと思ったのになぁ………。伝言の人形をユンクに送ってしまおうかなぁ?』
手のひらサイズの双眼鏡を持っている人形がそこにいた。彼女?から聞こえてくるのはガンさんの声だった。
『はい二人とも正座!!まだ一般人の子を巻き込んで大暴れしないの!!いいよね!二人とも!!』
しかし二人ともガンさんに返事をすることは無かった。物凄いダメージを受けているのだ。無理もないだろう。
『参ったなぁ………じゃあ、この戦闘であったスキルを説明しておこうかなぁ……その後に私の人形と希望者で模擬戦をやってみようかなぁ……。』
鈴と響、奈津はそのまま話を聞く気まんまんだが、私と早瀬はこのままあの三人を放置していいのかと不安になっていたのだった。