聖者達part 代表さんに質問責め-6
「私としてはどちらで転職してもあまり変わらないと思いますけど、アーサーの方が安定してますよ。」
シータさんがそう言うと、隼人はすぐにエペルシュバートの集まりに向かっていった。そして、そのままアーサーさんに土下座をしてまで転職の儀をして欲しいと頼み込んでいた。
「そういえば、転職の儀って何回でもできるの………?」
響がそう聞くと、シータさんはふるふると首を振った。
「いえいえ、回数制限はありますよ。大体転職の儀を受けるのは人生で百年に一回ほどしかできませんから、実質的に普通なら人生で一回だけしかできませんよ。」
「それは結構キツいような………。」
「まぁ、さすがに上位職でもレア度の高い職業でもあんなのじゃあ悲惨すぎますけどね。あの職業はかなり便利ですけど、頭の中まで完璧な変質者でなきゃあ、耐えられませんよ。
」
話を聞いてみると、隼人のあの職業は、ダメージを受けた時にその痛みを快感にしてそれで回復するという、ある意味不死身な人になっていた。まぁ、幼なじみの一人がそんな変態だったとしたら私達は確実に隼人と縁を切っていただろう。アイツがそこまで変態じゃなくて良かった。
「よっし!!まともな職業になれる!!ありがとうございます!アーサーさん!!」
「いいってことよ。ベルよりも転職させた人が多くなってるしな!!」
アーサーさんが隼人の肩を叩いていると、転職の儀を始めようと見ていたベルさんがアーサーさんに突っかかっていた。
「………黙って見ていたら、相変わらずショボい雰囲気の転職の儀でしたね。もう少し優雅に、美しいようにしなければいけないでしょう?ねぇ、アーサー。」
「なんだと!!お前のは派手すぎるんだよ!!それで結果が花屋だったりとかだったらかなり落胆するだろ!!」
「うるさいですね!!大体あなたの転職も本当はあまり受け入れられてはいないじゃないでしょうか?ねぇ、そうでしょう?さっき転生した君も。」
「え……いや……俺は……」
あ、隼人が完全に巻き込まれました。ついでに言うと、ユンクさんは希望者が大体集まったのでシェイヌケーテの本部まで行ってしまい、止める人がいない状態になっていた。
「だいたい剣士系で満足できますか?やはり遠距離戦こそが最高の美学でありましょうに。それに、剣士にはわざわざ転職しなくても剣などは装備できますしね。」
「うるせぇな!!スキルとかなんて凡庸性高いし、隙だってねぇ!!すくなくとも接近されたらほぼ負けのお前には言われたくねぇよ!!」
「あぁそうですか。ならば演習場で確かめますか?ユンクさんもいませんし、他の転生者達にもこの世界での闘いがどのようなものかを知ってもらえますしね」
「けっ。じゃあお前をボッコボコに潰してやるよ。」
「それはこちらのセリフです。たとえ男であろうと女であろうと、私は転職の儀は私の方が良いと証明させましょう。ついでに、あなたを潰す……なんか、楽そうですね。」
完全に隼人の事は蚊帳の外になっていたが、きちんと演習場まで連れて行かれていった。この二人は最初から決闘したいだけなんじゃあ……と思っていると、シータさんはかなりおろおろしていた。
「どうしましょうか………。ユンクの率いるシェイヌケーテの本部は演習場から離れてますし………私ではあの二人を止められませんし………。」
「私もテンペストのメンバーに招集かけちゃったから向こうを優先させないといけないしね。だからまぁ、ユンクが気付くか二人が倒れるまでやらせておいたら?」
シータさんと比べると、ガンさんはかなり落ち着いていた。というか、せめて盥を降らして二人を止めてくれないかと思ったが、隼人があのまま変態のような職業では困るのでなにも言わないことにした。
「というかガンさんは転職の儀ができないんですか?」
早瀬が聞くと、ガンさんは頷いた。
「あぁ、言ってなかったっけ?転職の儀は生まれつき持っているって方法でしか手に入らない。それに、転職の特性も人それぞれだってこと。この国ではあの二人しか持ってないから、あれだけいがみ合えるわけだよ。」
そう言ってからガンさんはテンペストに入団希望の子を連れて去っていった。ガンさんの話を聞いている間に、隼人とアーサーさん、ベルさんは演習場のほうまで行ってしまったらしい。
「……今は隼人は放置して私達の職業について話して貰おう?そうしないといつまでたっても暗を探せないから。」
響のその言葉で、私達はシータさんに再度質問した。すると、シータさんは解説し始めた。
「武器には特殊効果の付いている物があるんです。そして、その武器系統に関係する職業であれば、そのスキルを使うことができるのです。鈴さんはガンナーでしたね。」
「あぁ、そうだが…………。」
「ガンナーは一応上位職となっていて、ボウガン、弓などの遠距離射撃系の武器のスキルが使用できます。まぁ、剣なども使えますけど、武器の力を最大限に使用することはできません。」
「ならば、この万屋というのは?」
すると、シータさんはゴホン、と咳払いしてからこう言った。
「この万屋というのは、どの武器を使っても武器のスキルを使用できます。まぁ、魔法の杖や魔導書などは使えません。スキルを使うぐらいの魔力しかありませんから、使用はできません。万屋の魅力は剣や槍は勿論、弓やボウガンに斧や鎚などの武器の選択肢がよりどりみどりな事ですね。」
そう言われてから私は、どの武器を使っても良いと言われても、あまりに多すぎる武器の種類の前で、完全に悩むことになった。何でも良いが一番困るのは、この世界でも同じらしい。私は他の皆の職業についても聞いてみて、それから武器を決めようかなと思ったのだった。