闇の巫女part 転生しました-1
聖者達のプロローグなどのプロローグを続けるよりもpartによって現状確認させてからの方が良いと判断したのでそのまま進みます。
ふと気が付くと、そこは薄暗い洞窟の中のようだった。
「あぁ、そうか、転生させられたんだっけ?」
思い出したように声を出した所、派手に転んでしまった。着ている服を確認すると、転生する前とは違って巫女さんの着るような袴だった。ただ、袴の下は朱色ではなく紫という所だ。しかし、なぜこんな…………と、そう思った。ただ、現実逃避と感じながらある部分を見ないようにしていたのだけど。…………テンプレなんだろうか?自分の体は男らしいとは無縁の体になっていた。まぁ、赤子となって転生よりは楽なので文句は言えないが。
とりあえず洞窟の外を見てみようと思い、立ち上がってから進もうと思うもまた転んだ。さっきは尻餅をつくように後ろに滑ったが今回は前側に転んでしまった。そして、頭をぶつけてしまうと思ったところ、ムニュッとした感覚で頭が地面に着くことが無かった。頭をぶつけてしまうと思っていたので助かったことは良かったのだが正直認めたくないものを認めてしまった気がする。俺は恐る恐る自分の胸を見た。…………………………………………巫女服の白に合う、立派な胸がそこにあった。自分で揉んでみると、成る程確かに柔らかい。正直言ってなぜこのような胸があるのかは分からないがとりあえず下を見ようと思った。男の威厳はもう残っていないと思う。というか、この胸になってしまったのならばもはやあって欲しくないのだ。そして、巫女服を少しずらしてみた所、見慣れたものは無く、見慣れぬものがあるだけという、なんとも悲しい結末となっていた。男としての人生は、今ここで途絶えたのである。………………………………いや、一回死んでからここに来たんですけどね…………。
しかし、自分の声を何回か発してみると、なんとも言えないようになっていた。簡単に言えば、「生麦生米生卵」と早口言葉を言うと、自分の声は全て「むぃー」としか聞こえない。しかし自分ではそれが何を言っているのか認識しているのだ。なんか、赤ん坊になった気分だ。よくよく考えてみてみると自分の身長も縮んでいる。その割には髪は伸びている。髪の毛に足を取られて転ぶことは無かったが、多分腰ぐらいまではあるだろう。色を確認すると紫がかった黒髪だった。しかし、これぐらいの長さだと途中で髪ゴムなどでまとめようと思うもこの洞窟の中、使えそうな草の一つも生えていない。そのため俺は髪をまとめるのは諦めた。転生する前は髪を短くしていたので髪が長いというのは少し違和感を感じるのだが、この体で今後生きていくために俺は文句を言えるわけではなかった。
しかし、自分の顔がどうなっているのかというのとステータスウィンドウなどの出し方………そもそも自分は何として転生したのかを確認したい。そう思い慣れない体を使いながら洞窟を進むことにした。いや、出口なのか奥の方に向かっているのかは不明なままなのだけど、仕方のない事だと思いつつ進む。死んだら死んだで教会に「情けない」と言われながら何食わぬ顔で出れるのだろうか?そう思いながら、暗闇で何も見えないはずなのに、なぜか道を認識できる場所を歩いていった。道中なぜかモンスターは一体も出てこなかった。何も落ちていないし、何の仕掛けも無いために物凄いダルさを感じた。それはもう、某廃人量産機系育成ゲームの金稼ぎに利用される何度も倒されるラスボスの前の地味に長い演出を感じているようだ。そう思いながら俺は道を歩き続けた。
何分か歩くと何やら玉座が遠めに見える広間に着いた。いかにも魔王がいますよ~とでも言っているようなそんな広間だったが、肝心な魔王がいない。というか、自分が魔王の敵としての人物として転生していた場合、俺は何もできずに死にそうだ。転生前に聞こえた音声からステータスウィンドウの情報をもう少し聞けていれば良かったのだが、誰も聞いていなかったために知らずに転生してしまった。つまり、戦う術が俺には一切無いことを証明している。かなり嫌な証明だな………なんか悲しくなってきた。いや、本当に。そもそも今の名前はなんなんだろう?アイツ等と連絡は取れるのかな?とかを考えていると、玉座の奥から、カツンカツンと音がした。
「初めまして……僕の娘であり、闇の巫女であるアン。」
玉座の奥から現れた男は俺の事を自分の娘だと言った。…………良かった…………とりあえず俺は敵として認識されていないようである。
「僕は、君の父親であり、君の母親のローズの夫だよ。」
そう言って近づいてきた男は俺の頭を撫でた。撫でられると気持ちよい気持ちになるツボでもあるのか、段々とぽかぽかした気持ちになっていく。なんだか本当に赤子になった気分だ。しかし、
「え~っと、そういえばまた自己紹介していませんでした。僕は三体いる魔王の内の一人、キラクと言います。」
この言葉だけで、俺の気持ちが一気に引き締まった。
「そういえば、転生の魂を入れて現世に引き出したんですよね……。まぁ、それはそれとして、アンは生後15分ぐらいですよ。」
生後15分という言葉で、俺は完全に赤ん坊じゃないかと落ち込んでしまった。ドヨーンとオノマトペがでるくらいに。転生したと感じた瞬間に丁度産まれたってなんなんだよ……。