聖者達part 代表さんに質問攻め-1
「まず、性転換しているのは流と鈴、響の三人だけ。ここまではもう分かってる。さてさて、三人の共通点は?」
奈津はくるくると回りながら私達を指さした。私達三人はすでにその共通点に気付いていた。私達三人は暗の事が好きだ。それは三人の共通点だと当たり前のように分かっていた事だった。
「うんうん、三人供すでに分かっているように、流達は暗の事が大好きなのは私達の共通の認識だからね。でさ、ここで考えられるのは仮説を何度も思い描いてみただけなんだけどね?もしかしたら、暗も性別が変わっているんじゃあないかって。」
奈津の言葉は私達にはその方向性があることを気が付かせた。しかし、あくまでそれはご都合主義のように理想的な答えだった。だが、まだ私達の不安は晴れなかった。もしも、暗が男のままだったら………?それを思うと私達は奈津の主張をまだ受け入れることができなかった。
「あのさぁ…………もしこの性転換がランダムでも起こるなら、ここにいる何人かも性転換してるかもしれないし、シータさんも何かしらの事を言うはずだよ。性転換した者が元に戻ろうとした時の体験談も聞けたかもしれない。それが無いって事は、この事例は初めてというわけですよね?シータさん?」
すると、シータさんも頷いた。どうやらこんな事例は無いらしい。あるのなら資料がどこにあるかを教えてくれるかもしれないしね。
「だいたいさぁ、この転生の時の不具合じゃなくてバグ。バグってのは不具合とは全く違うんだよ。不具合が多発するのならここに死体で来る奴や赤ん坊になってるやつもいるかもしれない。でも、バグは意図的に使われることもある要素だからね。ゲームとかでもよくあるじゃん。幻のモンスターを隠すためとか、無限に残機を増やしたり当時の技術じゃ到底叶わなかった高速移動を可能にしたりさ。それと同じように必然的に流達が男に性転換したというのも分かるわけ。」
つまり、暗が女に性転換したから私達の暗への好意と反応して私達も男になったと言うのが奈津の主張だった。つまり、暗にバグが起きてそれに反応した私達にも必然的なバグが起こされたという事だ。だが、確証は無い。
「し、しかしだな………。そこまで正確にバグを起こせるか?あの声の主はそこまでの調整はできていなかったと思うのだが………?」
鈴が疑い深く奈津を見た。しかし、奈津は全く動じていない。むしろ得意げだった。
「あのさぁ、なんでそこまで消極的に考えるかなぁ?偶発的なバグじゃない。エラーで髪の色などの体型だけが変わるのが普通だとシータさんは言っている。流達を絶望させたかったらこの世界は暗を殺しているよ。少なくとも、そんな偶発的な事を信じるよりは希望を持とうじゃんか。それに、いつまでも恋に関連する事でうだうだしてたら早瀬が自分の恋叶えてもいいのか?と不安になるじゃないか。」
「奈津ねぇ!何言ってるの!?」
「いや、別の人にも迷惑がかかるって言っておかないとこいつらネガティブから立ち直れそうに無いし。」
「だ、だからって隼人の前で言わないでよ!!」
「?なんで俺になんだ?」
当の本人が呑気に早瀬の肩を掴んでいた。しかし、早瀬の好意に気付いたわけではなく、ただなんで自分に矛先が向いているのかに気付いていないだけだと思った。
「隼人のバカ!!唐変木!!」
早瀬の拳が隼人の胸をかなり深いところまでえぐっていった。響がコークスクリューブローと呟いていたが私には理解できていなかった。……………………………別の人にも迷惑がかかる……か………………。その言葉は身に染みた。いや、痴話喧嘩は余計だったのだけど。うん、本当にいらなかった。ちなみにドMに目覚めかけている隼人の反応を覗き込んでみると、一般人と同じように白目を向いているだけだったので安心した。
とにかく、暗が女に性転換していることを希望に持っておこう。とはいえ、暗は見た目も変わっているのだろうか?元々料理が得意などの女子力は高かったため、順応はすぐにできるだろう。
「まぁ、私は暗が女の子になるならないに関わらず、可愛かったおにゃのこがさらに可愛くなっているので気分上昇中なのだけどね♪」
奈津はさっきまでの真剣な表情を一変させて他の女子の所に走っていった。
「……知的に見させてたのに、さっきので台無し……。」
響の言うとおり、さっきの台詞だけ言わなければ奈津は格好いいと思ったままでいれた筈なのに、あっという間にいつも通りの奈津になってしまっていた。
「…………それじゃあ、別に聞かないといけないことは聞かないとな。」
そして、私達はシータさんへの質問を考えてみるのだった。
一番初めに必要な情報を手に入れるための質問は…………………。
「他に転生の儀式をした国はこの国の近くだとどこですか?」
すると、シータさんは答えてくれた。
「ジーブルフリーデでの探知により転生の儀を行ったと分かった国は三つあります。東のイーステルム王国、西のフィルアーマ王国、南のピェンルーカ公国の三つです。」
…………そういえば、私達の高校の校舎とクラスはかなり多いんだった………。さて、どうやって探そうか?
この小説の初期案では奈津も男体化する設定だったくせに、と思う今日この頃。まぁ早瀬一人に女性やらせるわけにも行かないので変更したというかなんというか…………。
感想欄に質問などを書いていただければネタバレにならないことならばまた後書きなどでコメントしようと思っています。これからもこの小説を楽しんでやってください。