表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/124

闇の巫女part  イーステルムの王族殺し-5

モニターを見ると、そこには城下町と思われる石造りの広場に、人が何人も入れるような手動のミキサーと、そこそこ顔の良い男が褌だけを身につけた状態で立っていた。


雑食とも思える第二王女もそこら辺は気にしているのだろうか?と思いながら俺はモニターの方を見る。そこには、奴隷と思われる人達が泣きながらミキサーを回していた。


ミキサーを動かす部分は奴隷などが描かれるシーンではよく見る横に長い丸太を前に押しながら回していた。ミキサーの下に回す部分があったため、中に入れられた奴隷が砕ける音はよく聞こえるのだろう。


もしかしたら、断末魔らしき声や呻き声もはっきりと聞こえているかもしれない。また、それを見ている………いや、見せられている国民も良い顔をしていない。…………耳の良い人なら聞こえてるかもしれないしね。



某ガキ大将のリサイタルに参加しているような顔だ。よほど精神的に辛いのだろう、失神している大人もいれば泣き出す子供もいる。これが恐怖政治らしき悪政の実体なのか………とも思える。


王族の気分であそこまで酷い事が実行されているのだ。安易に逆らうこともできないだろうと思ってしまう。騎士団側はどう思っているのかは分からないが、面倒なので第五王子に全て任せよう。そう思いながら二人の心の声の会話の方に集中しなおした。


『でも公開処刑されている奴隷なんて僅かな者よ。毎晩出てくるって事は奴隷市場の方でも同じ事がされているわ。もっとも、奴隷市場でやられているのは身寄りが無いものや大罪人。あれの方は馬や牛に引かせているから、公開処刑よりは気が楽かもね。』

『確かに、公開処刑の方は挽き肉にするのに一週間かかる事もあったと聞いてますし…………』

『まぁ、公開処刑でミキサーを回すのは処刑される人間と仲の良かった人達や家族だから、ある意味ゆっくりになるのは仕方ないけどね。』

『………聞きたくないんですけど、血ってどうなるんですか?水分は流石に肉の方には入っていない気もしますけど………』

『血はミキサーから挽き肉を血液から漉した後に赤い宝石に加工されるわ。そして、その宝石は王族が売りさばくだけで、形見として残させてもくれないわけ。』



完全に心の傷になるよね。身内に回させるとか、形見すら残さないとか。第二王女も何を考えているんだかと思いつつも、俺はモニターの映像から目を逸らせなかった。逸らせば、臆病者であり第二王女を殺す資格が無いと自覚してしまいそうだったからだ。


『ゆっくりと回す事は、逆に苦しめることになるんだけどね………。ミキサーの中でどれだけミンチになっても痛覚だけは生きる様に『伝授』されているの。生命維持の魔法を………。』

『そ、それって…………』

『えぇ、骨が粉々になっても、脳味噌や心臓がどれだけ潰れても、魂が残っているの。苦しみから解き放たれないの…………それを聞かされるのは第二王女の側近だけなんだけどね。』

『そ、そうなんですか…………』

『あれを回した時、私は表面では第二王女には逆らわないで、革命なんかが起こったときに手引きするぐらいの立場になったの。私と一番仲の良かった彼女を挽き肉にする時は………自分が壊れそうだった。』


それから、先輩である人は、元クラスメイトの友人にこう言い続けた。泣きながら話しかけるが、これは『心声視聴』の中でのイメージのため、現実では涙は流れていない。二人とも無言で木製のドアの隣に並んで立っているだけだ。


『あの子を挽き肉にする時、あの子の呻き声や悲しそうな声がずっと聞こえるの………そして、私が疲れ切っていると、もう聞こえないはずなのに、あの子が私に向かって嘘吐きだとか言ってくるの。…………でも、現実で聞こえるのは呻き声と骨が砕ける音………。』

『辛かったらやめてください!!ここで叫んでしまって先輩めで挽き肉にされてしまったら………優しい先輩がいなくなったら私はどうすれば良いんですか!!』


てなわけで、二人が友情らしき絆が育まれている時に一言……………すいません、他の人にシリアスに語られると自分がそれに近いことをしていた事でこれ公開処刑にしたら怖すぎるだろ………って、思いました!マルタの殺し方それに近かったです!!


砕くでは無く弾ける………だったけど。それと、第二王女の二人、ゴメンナサイ。トラウマ一つ増やしそうです…………。まぁ、それで男性奴隷公開挽き肉の刑が無くなるから許してください………と思いながら、俺は『魔塊毒』用に調合用の魔力を生み出す。


その間にもモニターの映像は続くけれど、もうそろそろ第二王女の食事が終わるので、準備を始めるには丁度良い時間帯だった。なので俺はさっさと調合しておこうと思ったのだ。


今回の毒は、高熱と、熔解、反発、痛覚と生命維持に声帯強化の魔力を調合する。魔力を調合するには少し時間がかかる事と、第二王女以外の被害者を作らないために、多少の時間は必要だ。


『……………もし、第二王女が奇声をあげながら死んだらあの子が報われると思ってしまうんだよ…………』

『そういえば第二王女って声帯どうなっているんですかね?食べ始める前に流暢な声を出してましたけどあの口でどうやって声を出しているんですかねぇ………』

『あぁ、あれは魔導具である入れ歯の効果。第二王女は幼い頃から角砂糖ばかり食べて生きていたからね…………。当然歯は溶けてしまって年齢二桁になる前に総入れ歯。あれは交換不要であると同時に、声を三つまで登録できるの。だから食べる前の声以外はフハフハとしか聞こえないわ。』

『あまり聞きたくないような声のような………』


段々雑談に近づいている二人をよそに、『魔塊毒』の調合が終わった…………そして、俺はその毒を針金を切って作った針に塗り、第二王女に投げた。


………………さてと、『魔塊毒』が第二王女に効き始めた後の対応を見る。できれば第二王女の側近がより多くの人間をこの第二王女の部屋に集めてくれれば良いのだが………。


そう願いながら、俺は二つ目の混乱の起爆剤を発動するタイミングを伺うために、第二王女の部屋の中を覗くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ