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闇の巫女part  イーステルムの王族殺し-4

俺は早速スキル『心声視聴』を使って二人の従者の心の声を、トーク番組みたいにして見ることにした。イメージとしては、二人がパイプ椅子に座っていて、二人の後ろに回想用のモニターが付いているという物だ。


だが、接続にも時間がかかるため、俺はそれまで待機することにした。どちらにしろ、第二王女が食事を終えるまで第二王女を殺害する気は無い………というか、したくない。


これは第三王子を殺したときに思ったことだが食事中の人間を殺すと、頭部や食道のある首あたりから、見るのも嫌になりそうな物体が出てくる。


それは主に噛み千切られて、小さくなっているだろうけども、グレルアからの情報通り第二王女は口というよりは穴を開けながらくちゃりくちゃりと音を出しているのだ。


赤ん坊の時には歯を使って噛むということがないために躾されないが、人間ならば食べ物を噛むときは口を閉じながらという事を教えられる。この世界では常識が違うのか?と思えばそうではない。


グレルアはくちゃりくちゃりと音を出しながら食べる人間を普通のマナーを守っている人間という風に話してはいなかった。つまり、くちゃりくちゃりと音の出る口を開けながら物を噛む食べ方は非常識、マナーの悪い人間となるわけだ。


そんな食べ方をしている第二王女を殺せば、第二王女の嘔吐物はより酷い物になりそうだ。今回は首を跳ね飛ばす方法ではないのであまり心配はいらないのだが、一応気持ち悪さは半減させておきたい。唾だらけになった嘔吐物を見させられるのってどんな罰ゲームなんだと思ってしまうからだ。


…………『心声視聴』の接続はまだ終わらない。しかし、別に長くても良いやと感じるのだ。なぜなら、第二王女の食事は当分終わらないからだ。流石に手掴みでハンバーグを一つずつ丸飲みしているが、人の肉となれば一人分はかなりの量になる。


奴隷とはいえ顔が良いということはガリガリではなく、一般的な男性と変わらないのだろう。つまり、最低でも45キロ、スポーツマンみたいな奴なら60キロはあるだろう。となればハンバーグ一つだけに収まるわけが無い。


事実、第二王女の周りには大量のハンバーグが積み重ねられている。第二王女はそれをくちゃくちゃぐちゃぐちゃと食べ続けている。しかし、味に飽きるのか別の肉を焼いた時に出した肉汁やらをかけて味を変えつつ、楕円と化している手を油まみれにしていた。


……………よくよく考えたら、公開処刑で挽き肉にしているということは、骨のような味気ない部分や、血液などの鉄臭い味もあるのでは?と考えてしまう。血抜きは料理では一番大切なのだけど……。まぁ、何の躊躇いもなく食べているので問題は無いと思われる。


あぁ、もう見たくないと思える第二王女の食事風景を見ていると、ようやく『心声視聴』の接続が終わった合図が脳の中に流れ込む。これ幸いとばかりに俺はそちらに集中して第二王女から目を逸らした。


以下、『心声視聴』から始まった第二王女の従者二人によるトーク番組である。視聴者は俺一人だが、この従者二人も無意識の内にやっているので気にしないで始めようと思う。



『先輩、どうして第二王女はあれだけ食べても死なないんですか…………?』


よくよく見てみると、従者の一人は元クラスメイトのクラス外の友人として見たことのある顔だった。どうやら騎士団に殆どの転生者が来たのは本当らしい。もしかしたら、無理矢理騎士団で働かされているだけかもしれないけど。


まぁ、城の警備をしている従者の一部に転生者がいれば、思わぬ収穫だったアレを使うことによる騒動はさらに大規模な物になるだろうと、俺は喜んだ。


『あ~、初めて第二王女を見た人は全員そう言うよ。でも、あの王女様は多少魔力の扱いに長けていてね………。攻撃や防御の様な戦闘向きの魔法は使えないけど生命維持の魔法へ天才とも言えたのよ。もっとも、あそこまでの巨体になれば死んだ方がマシだと思うんだけどね………。』


それを聞いてから俺は二つまで絞っていた毒の候補の内、ある一つの毒に決めた。そして、その毒を調合するために魔力を変化させながら調合する。


正直言ってあの巨体だと普通の毒では全身に毒が回らない気がするのだ。それに、ただの神経毒やらも意味が無さそうなので、とても恐ろしい毒になってしまうけど、気にしないでいこうと思う。


だが、魔力を使って作る毒………『魔塊毒まかいどく』は調合に多少時間がかかり、どれだけ長く維持しようとも、作成者の手から人に使わなかったら効力が無くなってしまう。


例えば、床などに滴を落としてしまい、床板に付着または瓶などで保存していた場合、僅か三分で完全に毒としての効力が無くされるという弱点はあるが、どの様なシチュエーションの毒が作れるのだ。


ボツにした毒は、吸引と締め付けをイメージした魔力を調合してできる毒だった。この毒は、相手が太っている時…………ようするに脂肪が多い人間用だ。


この毒を受ければその人間の脂肪は全て心臓に向かって収縮を始め、ギュウギュウと心臓を脂肪の塊で締め付けていく。そして、そのまま心臓が締め付けに耐えられなくなって、弾けてしまうというのがこの毒で死ぬ人間の死因なのだが、生命を維持する魔法が使える相手となると少し使うことを躊躇ってしまう。


生命維持の魔法というのは、この世界ではかなり厄介な魔法なのだ。基本的には病気の進行を抑制したり、大量出血している時に意識が薄れる時間を少しでも長くするという物が一般的で、死にかけた時に辞世の句を読むぐらいの時間が稼げるかなぁというレベルなのだが、生命維持の魔法に極振りするように強化すれば、どれだけ体に異常があっても死なない体となるのである。


第二王女がまさにそれだ。生命維持関連のスキルだけ何回も限界突破しており、簡単には死なない体になっている。恐らく、心臓をどれだけ締め付けたところで死ぬ事はない。あのレベルだと心臓が割れた風船の様になっても生き続けるだろう。


……………その心臓の仕組みがどうなっているかなんて、想像したくも無いけれど。それと、生活習慣病をコンプリートしているだろうとも思える体の使い心地もだ。健全健常な人間なら誰だって自分の足が象みたいに円の形だったりする体なんて使いたくないだろう。


『………確かに、私ならあそこまでなったら死にますよ。むしろ、あの体になって自殺したくならない人間なんて、あの王女様ぐらいだと思いますよ。』

『良かったわね…………あの王女様が他人と体を入れ替える魔法を使えなくて。転生者のあなたから聞いて改めてそう思ったわ…………。でも、あれはもう見たくないわよね?』

『……………………あれ、本当に義務なんですか?』

『義務ではないけど、あの挽き肉を作る作業を見ることだけは未だに許容できてないわ…………。拒否したら第三王子に食されると思うと余計にね………。あれを見るよりも機械を回す方が辛いわよ。』

『…………表面上は、拒否しないでおきます……先輩も私もあれを回したくは無いですから………』


どうやら、第二王女のハンバーグ用のミンチマシンは第二王女に反抗した女性を挽き肉にするのにも使われるらしい。……………というか第三王子も人肉を食う事は最初から言っておいて欲しかったなぁ…………。


俺は今はもうこの世にいない第三王子の異常さも改めて感じながら、トーク番組てまだ一度も画面が変わることの無かったモニターが切り替わるのを確認する。どうやら、挽き肉製造の回想が始まるらしい………………俺は、モニターの方に注目するのだった。


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