闇の巫女part イーステルムの王族殺し-2
考えた結果、槍を投げて首をはね飛ばしてしまおうという結論になった。……………ただ、第三王子が実力者なのかどうかは分かりづらい。一応公務もしていたらしいので、食っちゃ寝ての暮らしだけとは思いづらい。
槍は槍でも風魔法で固めて作る物のため、槍という証拠は残らない。ただ、威力はキラクなどから貰ったチートのせいでヘマをするとかなりの被害が出る。
なので、役に立ちそうに無かった物を使わせて貰うことにした。これを使えば緩衝材になって路地裏を作り出している建物を破壊することは無いだろう。
一応この国を滅ぼすために来ているわけではない。愚なる王と勇者である勇ノ宮を殺すためだけにこの国に来ているのだ。街への被害は最小限に抑えたいのだ。
なので、マルタ夫婦の使っていた馬車も壊してないし、グレルアのバーも血で少しだけ店が汚れたぐらいですんでいるのだが、今回はどうなってしまうかが分からない。
そう思った俺は早速『第一王子の首』を取り出した。第三王子も油断するだろうし、一応王族の首なのでそれなりに防御力………みたいな数値は高いだろう。実際に持ってみると釘が打てるほど硬い。
どうやら生前どれだけ弱かったとしても、死なせると一定の強さの道具になるらしい。もしそうでなかったらこの『第一王子の首』は何の役にもたたなかっただろう。精々現在の王を驚かすぐらいにしか……。
そう思いながら俺は路地裏にいる第三王子の顔の前に落ちるよう二場所を調節しながら、転移魔法で『第一王子の首』を落とす。そして、首が第三王子の目の前に落ちるまでの間に風魔法で槍を作る。
……………第三王子は、何かが落ちてくるのを察したらしいが、殺した女性の事を食べることを止めなかった。胸は食べ終わったらしく、今度は胸が千切られて露わになった心臓や肺などの内臓に手を伸ばしていた。
…………彼にとってはホルモン的な感覚で食べているのだろうか、かなりしわいらしく何回も何回も噛み千切ろうとしていた。……………いや、その辺はどうでもいいのだけど………。人の肉を食う想像なんてしたくないです。
まぁ、逃げられなくて良かったなぁと思いながら、俺は風魔法で作った槍………いや、威力を抑えたためナイフになってしまったが、多分大丈夫だろう。俺は風ナイフを第三王子に向かって投げた。
とりあえず、路地裏への道には誰もいないことは確認していたので、安心して風ナイフの飛んでいく先を見ていた。…………まぁ、血の臭いやら人肉を喰らっているクチャクチャとした音から気味悪がって、誰も寄り付かなかっただけなのだけど。
後、この世界の王族のマナーでは常識が違うのかもしれないが、第三王子は口を開けながら音をたてて食べるというなんとも行儀の悪い食べ方をしていた。正直言って手掴みで食べている時点である意味マナーは違うとも感じるのだけど。
そんな第三王子に風ナイフを首元に投げつけた。…………その結果、第三王子の首は首の皮一枚で繋がっているだけで、死んでいる事は明白になっていた。
…………いや、首の皮一枚繋がっているというよりは、千切れていないというのが正しいのかもしれない。鍵の回収のために路地裏の方に来たのだけど、数メートル先に第三王子の首が転がっているのは見えるのだが、ゴムみたく伸びた首の皮があった。
太っていると、あそこまで首の皮を伸ばすことができるのだろうか?そう思ってしまうのだけど、なかなかエグい光景だ。第一王子の生首は風ナイフで完全に赤色の液だけになるまでミキサーのようにかき回されて、スピードと威力が下がったらしい………けども、回転だけはそのままで首の皮は捻れている。
しかも、捻れの中に肌色の固形物も残っている。多分あの女性の何かだろう。………でもまぁ、鍵が回収できるのは良いことだが…………ここでこれからどうしようかと思ってしまう。現実逃避は便利だな………。人を食う人を殺した後も冷静になれて。
だって第二王女については色々聞いていたけれども、第三王子に関しては第一王子の登場で詳しく聞いていなかったからある意味一番濃かったよ………。そして、惨殺している自分で言うのもなんだけど………まさか、人の心臓を噛み千切ろうとしている血塗れの捻れ首の死体を作るなんて思いもしなかった。
後、第三王子は何かをしようとしていた形跡は無い。多分心臓を食べるのに夢中になっていたのと、第一王子の首が原因なのだろう。……………後者の方が強くあって欲しいような………。いや、これから先に人の挽き肉で作ったハンバーグ食べる人殺さないといけないんですけどね。食べている最中では無いと思うから大丈夫だと思うけど。
とりあえず第一王子の残骸と第三王子の血でビチャビチャになった第三王子の服を探る。マルタ達や第一王子のように式神の紙は今回使えない。紙がきれたのでは無く、あくまで怪死体として放置したいからだ。
服の中を探り終わると、収穫は三つあった。一つは目的だった城の鍵だ。イーステルムの紋章らしき印が彫ってあるが、その下にガリガリと何かを消した後がある。多分ラングムートの紋章が描かれていたのだろう。
鍵の先はよくある凸な形で、特に何の仕掛けもないためかピッキングしやすそうだなと思えるほど簡易な物だった。もしかしたら使用条件に王家の血とかもありそうだなと思ってしまう程、セキュリュティに関しての疑問が出てくるのだった。
そして、二つ目は予想しなかった程意外な物……………城の精巧な地図だった。おそらく王家ではない人間に城の中を案内するために持っているのだろう。第三王子は公務をしているとは聞いていたので、地図を持っていたのだろう。
まぁ、これで城の入り口から第二王女の部屋と、王の間への道が分かるのは嬉しいことだ。なるべく暗いうちに終わらせたいのだから、道に迷うことなくいけるのは嬉しい。そう思って俺はその地図を頭に叩き込んだ。
三つ目の収穫のブツの使用方法を確認した後、王女は時間かかってもいいからなるべく苦しんでもらおうと思い、俺は大量に貰ったスキルの中にある、一種の毒を利用することにする事を決めて、そのまま城へ向かうのだった。
………路地裏を去った後に悲鳴があがっていたので、心の中で謝っておく。グロい物放置してすみません、と。