闇の巫女part イーステルムの王族殺し-1
夜という事で空は大分暗くなっており、街灯のおかげでどうにか真っ暗では無いという事もあるが、人通りは少なかった。とりあえず娼館通りと呼ばれる所の近くに寄ってみることにしようかなぁ………と思い、城の方に近い通りに向かう。
すると、娼館通りを歩くのは以外にも男よりも女の方が多かった。それも、胸の小さい奴が。中には学校内で見た事があるような奴もいた。多分客引きのために外に出ているのだろう。
ただ、看板を持っているのはキャバクラなどの本番行為の無い所の物なのだろう。しかし、ベタベタと男に擦りよっているのは娼館である事がSWのステータスから分かってしまう。
しかし男の方は客引きの方の手を払ったり、逆にどっか別の店に連れて行かれたりと様々だった。ちなみに俺は『インビシブル』なるスキルを使って通りの入り口に待機している。少なくとも第三王子はここから入るだろうと。
だが、男の方は大工の頭領やら商人やらと、金を持つ一般人が多く、客引きは結構必死にやっている様に見える。しかし、第三王子らしい男は出てこない。そう考えながら場所を移動しようとすると、客引きの中でこんな声が聞こえた。
「あの~、お客さん?良かったらオカマバーにいらっしゃらない?女の人も大歓迎なのよぉ~。」
………………なんか普通におかまな衣装のおっさん出てきたんですけどぉぉぉぉ!!!しかも店に誘ってるよ客引きの女の子共を!!しかし、来る方向は店の通りでは無くて、城の方からだった。…………まさか、いや、そんな………ありえて欲しくない………と思いながら、俺はSWによるそのおっさんの正体に驚愕していた。
シャツァ・イーステルム
それがあのおっさんの名前だったのだ…………いや、確かにグレルアは娼館に入り浸っているしか言っていないから間違いでは無いが、なんでだぁぁぁぁぁと思ってしまった。
まぁ、おかまと言ってもムキムキでいかにもおかまと分かる屈強なのでは無く、まるまるとしていて、化粧が濃い方のおかまだ。………………だとしても、これが王子だとは思いたくない。口汚い王子とおかまな王子、醜く太って人肉も平気で食う王女しか残っていなければ誰だってまともそうな第五王子を選ぶだろう。
………にしても、第三王子にはどのような悪評げあるのだろうか?なぜか殺す気も失せそうだったので学校で見たことある顔の女が持っている看板を元にスナックらしい所に向かうことにした。そこで情報を買おう。
このまま第三王子を殺したらおかまだから、王族だからと差別的に殺した事になる。それだけは後味が悪いのでもしおかまな事以外に何も無かったら鍵を盗んで『王位継承封印』でもかければいいし………。
そう思いながらスナックに入る。スナック的な店はそこだけのためか、スナック以外何も書かれていない。そこは完全に娼婦達が食事する所と認識されているようだ。そうで無ければ夜なのにここまで客が少ないわけが無い。
『すみません、情報が欲しいのですが金貨五枚で足りますか?』
「あー、別に構やしないよ。充分すぎる程に手にはいるんだからね。それに連れ去りが目的では無いらしいし。で、なんだい?欲しい情報は?」
このスナックのママは特別美人とは言えないが、最低限の化粧で清潔感はきっちりとしている。スナックのママ曰く料理するのに化粧が必要かとのことだ。年齢も二十代半ばと、若い。
『知りたいのはこの国の第三王子についてここら辺の評判。一見してみたけど、おかま的なイメージしか持てなかったから、殺してもいいのか少しだけ躊躇しちゃいまして………』
「なんだ、嬢ちゃんは暗殺者の知り合いでもいるのかい?まぁここの王族は第五王子しかまともな人間が残ってくれなかったからねぇ。」
そして、スナックのママは第三王子の事について話し始めた。……………せっかく命は助けようかなぁなんて思った俺が浅はかでした。何?なんでそこまで悪事に手を染めないと満足しないんだよ………。そう思うほど嫌な噂しか聞けなかった。
「第三王子はね?料金は払わないわ勝手にヤるわ………。しかも、両方いけるわけ、男も女も。それで犯した後に殺すようにのしかかるのが好みだと言うしねぇ。それで何人か殺している。」
『連れ去りとかがあるなら客引きの子達は大丈夫なんですか?下手したら死ぬかもしれないのに……」
「私の店の子は大丈夫だよ。お守り持たせているから、連れ去られかけたときに相手の手が焦げる程の衝撃があるから大丈夫さ。私は娼婦達の待遇を少しでも良くしたいのさ………第五王子もその辺は考えてくれるだろうしね。なりたくなくてもここで働くような子もいるんだしさ。」
スナックのママはそう言ってから、雇っている転生者の子…………客引きをしていた子の事について話してきた。
「まぁ、ここに働きに来るのは死んだ夫の借金を返すためだとか、男好きな奴が多いんだけどさ………中には娘や自分達に逆らえない子を連れてきてヤっちまおうという事を考えるのも少なくないのさ。接待よりも稼げる方に行かせるからね………実際あの子は他の四人程の友人に無理矢理連れてこられていたからね、助けてあげたんだよ。」
『優しいんですかね…………?』
「優しいんじゃない。恩を返したんだよ。私も母親に連れて来られて無理矢理に娼婦にさせられかけたんだ。その時に前のママに救われたから、私も同じ事をしたわけだよ。」
そう話終わった後に、俺はスナックの外に出た。すると、かなり遠くの路地裏から第三王子が口元と腹の方を血で染めている状態で出てきた。その路地裏には客引きをしていた女性の血塗れの姿があった。その口には大量の銀貨が入れられており、体はひしゃげて………あまりにも惨い殺され方だった。
「あぁ~、今日の子も美味しかったわ~。若い子の肉ってどうしてここまで美味しいのかしら?きっと沢山の栄養を採っているからよね?」
……………さてと、心は決まった。さっさと第三王子を殺してしまおう。消し飛ばさないようにしなければマルタ夫妻や第一王子などの様に纏っている服などの装備品も消し飛んでしまうので、殺し方は考えないとなぁ………。
そう考えながら、俺は第三王子を観察しながら、考えるのだった。……………まぁ、できれば喋りたくないし触れられたくも無いから遠くから殺しておきたいよなぁ………と思いながら。
……………しかし、死んだ女性の胸をパンを千切るようにとって食べる人間なんて見たくもなかったが、初めて見たなぁと、グロシーンを堪能しながら………………殺し方を決めるのだった。