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闇の巫女part  イーステルムの意見箱-7

『プレキュルスール』の店主………グレルアラングムートは俺がバーカウンターに座ったのを見て、一応お冷やを置いてきた。名前が長いのには理由があるらしく、基本的にはグレルアと呼ばれているらしい。


グレルアの服装はバーテンダーには到底見えづらい、青のトレーナーに、緑色のチノパン、そしてウサギの描かれている茶色のエプロンである。


そんなグレルアは、俺の方を睨むように視線を合わせ、低い声を出した。どうやらただの餓鬼と思われていて、邪魔者みたく見えているのだろうと思う。


「で、餓鬼がなんでこんな所に来ているんだ?」

『荷物をお届けに参りました。』


これは本当の事なので、俺はスケッチブックで筆談する。こういう所にいる人間が都合良く魔人だったりハーフだったりするという幻想は見ないことにしているからだ。


「荷物?そーいや今日はマルタの野郎が来るんだったな……。そうか、とうとう隠居したのか。」

『いえ、俺が殺しました。それで、この荷物をどこに持って行けばいいのかが分からなかったのでここに持ってきました。』


すると、グレルアはとても驚いた顔をした。まさかこんな餓鬼が殺しをしたなんて思わないからだろう。


「まぁ事実なんだろうな。ここに最初に来たってのも嘘じゃねーみたいだし。隷属魔法掛かっていたら俺の所には最後に来るだろうしな。そうか、あの腹黒夫婦はようやく死んだのか……。」

『それで、この荷物の謝礼として情報が欲しい。この国に転生者が来たって噂についてだけど………。』


俺のスケッチブックを見て、グレルアはそんなんでいいのか?と言いたい顔で俺の方を見た。そして、俺の知りたかったイーステルムに来た転生者達の事の話が始まったのだった。


「まず、勇者と呼ばれた奴と、取り巻き二人が豪遊しているが、基本的には騎士団の方に吸収されていたな。近々転生者達を使ってジーブルフリーデなんかの勇者のいない国に戦争を仕掛けようと画策していたが………色々あって、60人ほどは騎士団には入っていない。」

『農村の方では勇者以外は追い出されたという噂だったけど………?』

「多分農村の奴等の情報源は城の中の情報までは見えてないらしいな………。転生者はドバッと数百人来たんだが、城下町から追い出されたのはたったの十五人だな。向こうの世界ではお前は俺の配下の立場のくせに生意気だ!!なんて追い出している勇者の野郎が俺には笑い物だったしな。」


多分追い出された奴等でそう罵倒されていたのは勇ノ宮グループでの配下、食品関連のトップの社長令息である、政野まさの 秀樹ひでき先輩だろう。


彼は勇ノ宮をよく思っていない伏があり、勇ノ宮に従わなかったのだろう。それで短気な勇ノ宮がキレてもおかしくはない。残りの十四人は政野先輩に着いていきたいと思った人か、イーステルムの態度に苛立っていた人などだろう。


『成る程……で、騎士団に入っていない残りの45人はどうしているんですか?』


まさか全部援交などは有り得ないだろう。もしそうだったらどれだけ性の乱れた高校になるんだよと、母校に思ってしまう。まぁ、答えを聞くとそんな事は無かったと安心できるのだけど。


「娼婦の道に走ったのは全部で20人ほどだ。戦闘能力が低くて本人達も望んでいたらこうなった。今では兵士達の11ヶ月分の給料を一晩で稼いでいる。こう言っちゃあなんだが『伝授』を使って職業がそれ関連じゃ無い奴も人気があるらしい。俺は行く気にはなれないがな。」

『うわっ………思ったより多いなぁ………。』

「まぁ残りは城の下働きやら武器の整備やらでこき使われているらしいけどな。まだ奴隷契約まではされてないがいずれやられるんじゃないか?と思うぞ。」


とりあえず、飢えて死んだという例は少ないだろうと思う。しかし、あまり心配する気が起きない。まぁ愚王殺しが一段落ついたら本格的に流達を探す事にしよう。愚王のいる場所に転生していなければいいけど………。


「で、次は何が聞きたいんだ?話を気にする辺り一応転生者かそれに近いんだろうが、情報は大事なのは変わらないからな。」

『じゃあ王族について教えて欲しい。第五王子は良い人だと聞いているけど………。』


すると、グレルアは多少嫌な顔をしたが、仕方ないかという顔で話し始めた。グレルア曰く、王族に関する話題は古い記憶の中て嫌な思い出になっているらしい。それに、王の妾の子にすら不快感を感じる様な人だ。なにか因縁があったのだろう。


「まぁ、最初に言っておくが、このイーステルムという国は元々は別の国だった。まぁ、俺の名前もそれに関係しているからな………。話を戻す。イーステルムの王には9人の子供がいる。王子が六人、王女が三人だな。…………で、まともなのは噂通り第五王子だけなんだがな。」


九分の一しかまともなのがいないってどれだけ酷い確率ですか。ここの王には悪い人間を産むという遺伝しでもあるのだろうか?と感じていると、グレルアはため息を付きながらこう言ったのだった。


「この中で国に残っているのは第一王子と第三王子に第五王子、第二王女だけだ。後は死んだり他に嫁いだりしている。とゆーか第五王子以外にもこの王政に反対していたりしたが、王族の魔法を恐れて他の国に逃げたんだよ。第五王子以外で残ってる奴は悪政に手を貸している。」


殺すのは王も含めると全部で四人ほどか………。まぁ、明日には全員殺せるだろうけどね………。


「まぁ、悪政に反対すれば王族の魔法で処分される。第五王子が自由に動けているのは第五王子が王族の魔法の無効化ができるからだ。」

『それはどうして?』


するとグレルアはそれまで立って話していたのだが、ため息をついた後にから笑いしながらこう言ったのだ。


「俺の血を使って王族の魔法に対する妨害を行ったんだよ。他の王族の血とそれに付着している魔力が、身内の王族にしか使えない王族の魔法を完全に拒絶するんだ。これで、王は第五王子を絶対的に殺せる王族の魔法では殺せない。」

『…………それだと、グレルアは別の国の王族だったわけ?』


すると、グレルアは悲しそうな顔になってこう呟いた。それは、とても暗く、俺に背を向けていたのだ。そして、振り返ることも無かったのだ。


「………俺は、今の様な愚かな王の一族がこの地を統べる前、この地を守ってきた心優しき王族…ラングムートの末裔だ。今はしがないバーテンダーだけどな。」

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