第六話 家族
リアルが忙しくなりつつある悲しみ;w;
「というわけで少し早いですが、魔力を練る作業に移ろうと思います」
昨日の呼び出し後、フィリアは俺の魔力を制御する修行を考えたらしいのだが、制御する方法は浮かばず仕方なく感覚で威力の調整を覚える……という結論に至ったらしい。
過去に神級の魔術師はいたらしいのだが、さすがに成長過程までは記録に載っていなかったらしい。
「今から練るのは火属性の魔法です。頭の中で火をイメージしてこの魔水晶に魔力を流し込んでください」
俺はフィリアから深紅色の水晶を受け取る。
「あと魔力の調整ですが、魔力は一気に流し込むのではなく5秒ほどで私と同じ輝きになるように注ぎ込んでください。これは魔力を制御する修行でもありますから」
フィリアに注意されたことを意識しながら俺は魔水晶に魔力を注ぎ込み始める。
自分の体にある大量の魔力を少しずつ、少しずつ流し込んでいく。もちろん頭の中で火をイメージするのも忘れない。
5秒たった時点で俺は魔水晶から手を放す。魔水晶は俺が初めて魔力を注ぎ込んだ時と同様、ランプ程度の明るさだった。
「これは魔力を抑えすぎましたね、魔力は抑えすぎてもよくありません。各魔法に必要な魔力を必要なだけ引き出す力は魔術師にとって重要なことです」
もう一度、俺はフィリアから魔水晶を受け取り魔力を注ぎ込む。
今度は頭の中で自分の中の魔力を大きな火種としてイメージしてみる。別々に考えていた思考を魔力の制御のみに集中する。
魔水晶に再び手をかざし、イメージを固めていく。
自分の中にある火種から魔水晶の大きさの火種を5秒間数えて注ぎ込む。魔水晶は火種を注ぐイメージをするたび明るくなっていく。
また5秒が立ったので手を放す。さっきよりは明るく輝いている。
「これでこの魔水晶の魔力の半分程度ですかね」
う~ん、やっぱりそう簡単にはいかないらしい。
それから俺はいつも通り何度も何度も魔力を注ぎ込む練習をした……
「修業の調子はどうだ、ユウ?」
家族での夕飯、その途中でアスラが俺に修行の様子を聞いてきた。
「ひとまず魔水晶を割らずに魔力を込めれるようにはなりました」
あれから魔水晶を割ることはなかったが、適量な魔力を注ぎ込むことは出来なかった。
「そうか……、まあ時間はまだある。お前がその力を制御できるようになれば悪用するような輩も出ないだろう」
俺の報告を聞いて少し不安そうな顔をしたがアスラはすぐにいつも通りの笑顔になる。その後、俺は家族で他愛もない話をしながら食事をした。
食後、俺は部屋に戻ろうとすると……
「ユウ、お父さんはあなたを心配しているのよ。誰かがユウを悪用するために連れて行くんじゃないかって……」
ライラがそうアスラには内緒で教えてくれた。アスラは自分の息子が世界でも数少ない神級と知って、俺が危険な目に遭わないかを心配して修行の様子を聞いてきたのだろう。いざというとき、自分の身を守れるように……
「はい、分かってます。父が心配してくれていることは」
「そう……、ならいいのよ」
ライラは俺の言葉を聞いてホッとしたようだ。
俺は部屋に戻るといつも通り日記を出す。
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×月××日 今日の成果
初めて魔力を属性に変換してみた。
変換自体に問題はなかったけど、
魔力の制御が難しかった。
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「こんなもんかな」
最近は簡単な報告だけで特にチャラ神からの返信はない。
まあ、あったとしてもロクなもんじゃないだろう。
そのまま俺は布団に入って前の世界でのことを思い出していた。
前の世界での家族は両親と俺、妹が一人といったまあごく普通の家族だったと思う。だが妹は俺より優秀で、両親は妹に期待し可愛がっていた。
両親は共働きでよく家を空けていたため、俺と妹は二人で食事をすることは多かった。それなりに会話もしていたし、兄妹の仲は悪くはなかったとは思う。
学校では人気者というわけでもなく一人で本を読んでいることが多い地味な生徒だっただろう。いじめに遭うこともなく、仲間外れにされるということはなかったが、ほかの誰かのほうから俺に話しかけてくる……というのはなかった。
だが、今の家族は俺が一人っ子のためかすごく可愛がってくれる。アスラは普段は仕事で忙しいが食事は必ず一緒に食べるし、ライラの家事手伝いをしたりして、おしゃべりするときもある。家の執事やメイドも俺に優しく話しかけてくれる。
なんとなくだが、俺はこの世界に来て初めて人の優しさに触れた気がする。今のこの世界の家族はちゃんと俺のことを正面から受け止めてくれる、それが俺にとってはうれしかった。
だから夕飯の後、あんなにすんなりと「分かった」と言えたのだろう。心配してくれていることが伝わっていたから。
俺は家族に心配をかけないよう、改めて修行を頑張ろうと決意し明日に備え眠った……
ふぅ・・・・・
遅くなりましたがやっと更新できました!
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