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第十四話 パルディアの蜘蛛襲来

「それじゃあ、ユウが一人前の魔術師になったのとフィリアさんのお別れを兼ねて、乾杯!」


 アスラが言うと同時にキンッとコップ同士が当たる音がはじけた。


 食卓にはアスラ、ライラ、俺に加えて今日の主役でもあるフィリアが、それおぞれ思い思いの食べ物を手に取って食べていた。


「これでユウも一人前の魔術師か……」


 アスラが感慨深そうにつぶやく。


 本来魔術師は師から基礎を学ぶとあとは独自で自分の魔法を磨いてなければならない。


 なんせ魔法の源はイメージである。人それぞれ千差万別のためまったく同じというのはなかなか出来ないのだ。


「あっという間でしたよ、ユウはすぐに魔法を自分のものにしてしまうのですから」


 フィリアが嬉しそうに言う。褒めてもらった俺はちょっと顔を赤くしながら黙々とパスタを食べる。


「これからフィリアはどうするんだい?」


「西にあるグラバス帝国に行こうと思っています」


「ほぉ」


 フィリアの答えに意外そうな声を上げるアスラ。


「グラバス帝国に新しく魔導学院が出来るそうなのでそちらの教師になろうかと」


 少し照れたように話すフィリアは普段の微笑みと違い、また別の可愛らしさがあった。


「ふむ、帝国学院か……」


 アスラが少し考え込む。


 俺はその瞬間フィリアから魔力を感じふと顔をあげる。


 次の瞬間ーーーー




 

 アスラの右胸を氷の槍が貫いた。




「かはっ……」   


 突然起こった出来事に俺もライラも呆然とする。


 アスラは口から血を吐き出し自分の状態を見てハッとするとフィリアの方を睨みつける。  


  直後、屋敷の玄関の方から悲鳴が上がった。


「貴様ら何者……ぐっ!!」


「きゃぁあああああ!!!!」  


 悲鳴と怒号、それらが飛び交い屋敷はパニックになっていた。


「どういうことだ、フィリア!!!!!」


 アスラが今まで目にしたことのない剣幕でフィリアを睨みつける。


「さすがに私がやったと気付きますか、王国でも有数の魔術師なだけはありますね」


 フィリアはいつも通り微笑んだまま呟く。


「どういうつもりか……はこれを見れば分かるでしょう領主様」


 右腕の袂を捲り上げ、大胆に肩まで晒す。



「……!パルディアの蜘蛛か!!!」 


 肩にあったのは背中に大きな一つ目を持つ蜘蛛の刺繍だった。


 アスラはそう叫ぶと、一気に魔法を練り上げフィリアに向かい火炎の渦を引き起こし取り囲む。


「随分と雑な魔法ですね」


 フィリアはあわてた様子もなく、魔法を受け……ずに魔法はフィリアの目の前で消滅する。


「なっ……!?」


 さらに食堂のドアが強引に開けられ、黒いローブを被った集団が入ってきた。その数は数十人を軽く越えている。


「きゃっ!!!!!」


 黒いローブの集団は俺たち家族を囲むようにして円形に広がる。


「フィリア様、屋敷にいた邪魔者は排除しました」


「ご苦労様」


 近づいてきた黒ローブの1人に、そっけなく言う彼女は改めて俺の方を見る。


「さて、あまり時間も無いですし仕事は早く終わらせましょうか」


 フィリアがそう言うと囲んでいた黒いローブの集団は、フードから短剣や長刀を取り出し俺やアスラ、ライラに襲い掛かる。


 俺に向かってくるフードの集団を見た俺は動けなかった。足が竦んで何も出来ずただ棒立ちになる。


 短剣があと少しで当たる……そう確信した俺の前にライラは飛び込んきて俺を突き飛ばす。


「ちゃんと生き残るのよ」


「えっ……?」


 目の前に広がった真っ赤な鮮血。


 続け様にライラを斬りつけトドメをさす黒ローブ。


 目の前にあったのは先ほどまで笑っていたライラの死体だった。


 俺はライラに駆け寄るが黒ローブが邪魔をしてきたので雷撃で黒こげにする。


 それを見たフィリアは驚いたのをアスラは見ていた。

   

「母上!!」


 何度呼びかけても答えは返ってこない。それでも俺はライラに呼びかける。


 アスラは険しい顔をしたまま、フィリアに向かい魔法を発動するが全てフィリアに届かず消滅する。


「ユウ、今すぐお前はこの街から逃げろ」


 やがて、アスラが突然俺に向かって叫ぶ。


「いいか、こいつ等の狙いはお前の魔力だ」


 俺はハッとフィリアを見つめる。


「フィリア…嘘だよね?」


 俺は呆然とフィリアに話し掛ける


「いいえ、本当ですよユウ。あなたの魔力は黒の協会に必要なんですよ」


 俺はそう言ったフィリアの笑みに背筋がぞっとした。


 いつも優しかったフィリアの姿なんてどこにもなかった。


 微笑んではいるが、そこには狂気が感じられ俺は恐怖に震える。


 なんで、なんで!!


 そんなことを何度も考える。


「ユウ!」


 アスラが叫んだ。


 ハッと顔を上げるといつの間にかフィリアがナイフを持って目の前に迫っていた。


 俺はとっさに腕で頭を覆うが彼女容赦なくナイフを俺に向かって振りかざす。


 俺は何もできないまま右腕にナイフが刺さり、地面に崩れ落ちる。


「安心して、母親と違って殺しはしないわ。ちょっと痺れてもらうだけよ」


 不気味に微笑むフィリアは再びアスラの方を向く。


「さて、あんまり長居すると厄介なことになりそうですのでそろそろ終わらせましょうか」


 そう言って黒いローブの集団に何事もないように「殺せ」と命じる。


 俺は必死に叫ぼうとするが体が痺れて声が出ない。


 数人係りで襲い掛かるローブの集団を前にアスラは動かない。


 黒ローブが目の前に迫ったところで、アスラが決意したような顔をして、こう言い放った。





「精霊魔法起動 ホーリーロウ」

結局まだ続きます(泣)

じ、次回でおわるはず……

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