表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/35

018 旅立ちの前に

 結局のところ、向かう先は一つに絞られる。

 つまり、


「精霊廟へ行く」

「ま、そうなるわな」

 リックは肩をすくめる。一度使者を送り、芳しい返事は得られなかったが、それはそれ。市長がとった政治的な手段でしかない。

 だが、カロンとリックが向かうということは別の意味を持つ。それは、不可侵とされる『精霊廟』に対する干渉だ。


「頭の固い連中だが、私のことは無視できまい。そこに期待しよう。それでも無理なら――」

 にやり、とカロンにしてはやけに好戦的な笑みを口の端に浮かべる。


 リックは呆れるでもなく、

「一筋縄じゃ行かないだろ。何せ、本部は『精霊全部を敵に回して勝つための砦』なんだからな」

 一般に知られる組織の印象とは真逆のことをしれっと口にする。このあたり、伊達にカロンの友人、そしてセシリアの幼馴染をやっていない。そして、彼の言ったことは比喩でもなんでもなく、ただの事実だ。


 一般に『誤解させている』通り、精霊廟は精霊に対する人間の不可侵を保つ為の組織でもある。その点、誤解ではないのだが、その理由は世間と真逆である。

 つまり、


 ――人間の営みを継続させる為、精霊という存在を隔離する為


である。


 それはさておき。


 いくら人より魔法力に優れた宿し子であるカロンや、戦慣れしたリックと言えども、手ぶらで旅などできるものではない。

 なんとなく、ユウのいる寮に戻るのも憚られたので、いったん旧魔法街の雑貨屋へと赴き、必要な物資を引っ張り出していく。とは言え、ほとんどの主要な荷物を寮の方へ運び込んでいたことが災いし、旅装は完全には整わなかった。


「仕方ない。フォルのところで仕入れるか」

「それが妥当かね?」


 というわけで、とりあえずかき集めた品々を鞄に詰め込み、フォルの店へ。


「おやおや、二人してどうしましたか、まるで今から旅に出るようじゃないですか? いや、まさかその通りなのですか? いやー、さびしくなりますねぇ!」


 返事も聞かないうちから一人で納得し始め、さらには勝手に寂しがる始末。いつも通りと言えば、いつも通りではあるのだが、

「お前が情報をつかんでないってことはないだろ。つまらん三文芝居はよしてくれ」

「まあ、ある程度の動きは掴んでおりますとも。おりますが、貴方がどう動くかは、貴方自身にしか決められないこと。所詮、それは情報とそこから来る推測であって、決定事項ではないですからね、はい」


 真面目腐った顔で宣うフォル。口の端に忸怩たる思いが滲んでいるのが、彼らしくない。


 だが、彼が気に病む理由もわからなくはないのだ。

 彼の言う通り、情報を得ることと、それを活かして立ち回れるかは別問題なのだ。

 さらに、カロンとフォルの生まれに付きまとう宿し子という宿命。世に影響を与えうるからこそ、フォルは動けない。

 動くことを制限する代わりに彼は知る。知ることで回りを動かす発端となる。そう生きることを決めたと、かつてフォルは言っていた。


「知りたいのは司祭の行方、そしてその真意、といったところでしょうか?」

 飄々とした態度に戻り、彼は問う。


 リックは問いの内容に口の端を歪め、

「やっぱ侮れ―な、アンタは」

「ははは、そう言っていただけると、情報を集めたかいというものがありますよ。さてさて、どこから話したものでしょうかね?」


 人の悪い笑みを浮かべ、フォルは事の起こりを語り始めた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ