子鬼「おちゅうしゃ」
「子鬼ちゃん、お出かけするから
お支度しましょうね」
お母さんが僕にお靴をはかせました。
「どこ行くの?動物園?」
「今日はね、子鬼ちゃんの予防接種。
さぁ、行きましょう」
よぼうせっしゅ???
お母さんと手をつないで
テクテクと歩いているうちに
子鬼は嫌な予感がしてきました。
病院に行く道だ。
「僕、お薬いらない、元気」
「元気でも、今日は病院よ」
嫌な予感が大きくなりました。
「もしかして・・・チックンする?」
「そうね、するかもね」
「おちゅうしゃこわい」
子鬼はお母さんの手をギュッと握って
引っ張りました。
「大丈夫よ。
子鬼ちゃんは強い子でしょう?」
うん、僕、強い。
でも、おちゅうしゃ、こわい。
病院に着くと、
ヤギさんみたいに白いヒゲを生やした
おじいさん先生が
ぎゅっと口を引き結んで
固まっている子鬼の顔を
覗き込みました。
「泣くかな?」
子鬼はブンブンと頭を振りました
「泣かない!」
ヤギさん先生はニカッと笑いました。
「よぉし、じゃあ腕を出してごらん」
子鬼が、むんっと腕を出すと
看護師のおねえさんが
スゥッとするものを塗りました。
子鬼は、キュッと目をつぶりました。
「すぐ済むからね」
その時です。
ヤギさん先生が大きな声で歌い始めました。
「げぇんこつ山のぉタヌキさん」
あ!この歌知ってるよ!
「だっこして、おんぶして、またあした。
はい、おしまい!」
え?
「本当に泣かなかったね、えらい、えらい」
看護師のおねえさんがパチパチと手を叩きました。
え?え?
腕に、クマさんのシールを貼ってもらって
子鬼とお母さんは病院を出ました。
「子鬼ちゃん、強い子だったから
グミ買ってあげようか」
うん!グミ食べる!
子鬼は、グミの袋を抱っこして
意気揚々とおうちに帰りました。
お父さんに今日のこと
いっぱいお話しようっと。




