目次 次へ 1/21 第0話 後悔してるんだよって言い逃したあの日 潮の香りが風に混ざって届いた。 秋の気配をまとった海風は、夏の出来事を連れ去るように通り過ぎていく。 誰もいない屋上は、なによりも自由だと思った。 手が届きそうなほど近くに感じる、海を反転させたような澄み切った空。 世界中に私一人だけみたいだと錯覚するような開放感と孤独感。 ──ねえ。あなたにこの声は、届いていますか? 私の歌声は風と一緒に、波音の彼方へと溶け込んでいった。 ──────────────────