灯り
夜は長い。
パトカーの赤色灯が消えたあとも、住宅街は眠らない。
警察は言った。
「発見には至っていません」
繰り返す。
「現在も捜索中です」
ビルの中は空だったという。
荒れているだけ。
古い机。
壊れた椅子。
人の気配は、ない。
そう言われた。
でも。
私はあの窓を見る。
三階の奥。
一番奥の部屋。
カーテンもない、暗い穴。
さっきまで真っ暗だった。
なのに。
今、かすかに灯りがある。
点いている。
一瞬だけ。
すぐ消える。
見間違いかもしれない。
誰も気づいていない。
誰も見ていない。
私は喉が動かない。
あの青年の家を見る。
玄関の灯りがついている。
影が動く。
カーテン越しに。
ゆっくり。
行ったり来たり。
まるで誰かに話しかけているみたいに。
私は思い出す。
あの子の声。
「怖い」
あの震え。
ビルはもう調べたと言われた。
何もないと。
でも。
あの奥の部屋までは。
本当に。
ちゃんと。
風が吹く。
遠くで、金属がきしむ。
私は玄関の灯りを消せない。
もしかしたら。
もしかしたら。
まだ、そこにいるかもしれない。
助けを待って。
息をひそめて。
——
住宅街は静まり返る。
三階の奥。
暗闇の中で。
何かが、わずかに動いた気がした。
誰も、見ていない。
まだ、見つかっていない。
——
終。




