第九章 王子キンタ
今日は早めに帰れる日だった。普段ならパールと過ごすのだが、生憎とパールの方は講義があり、一平は空いた時間を青科のイメージトレーニングのために使うことにした。三の庭を選んだが、たまに人の出入りがあるので気にならないように茂みの中に潜り込んで腰を下ろした。
精神修養の瞑想に入って一時近く。次第に賑やかになる人声にそろそろ引き上げ時かなと思っていると、とんでもない話題が耳に飛び込んできたのである。
「ねえねえ、知ってる?あの一平さまって背中にひとつも傷がないんですってよ」
「えー、ホント?すごぉい。勇者の証よねえ」
「前の方は傷跡だらけらしいわよ。パールティアさまを庇っていたせいで」
「キャー、かっこいいー。あたしも守られたぁい」
「ホントよねー。あたし、この間ちらっとお姿見たの。素敵だったあ」
「あのガタイ、たまらないわよね。逞しくて。その辺の男が女に見えるわ」
「うふふ。あの胸に一度でいいから抱き締められてみたいわあ」
「あー、あたしも。それでその傷跡にそっと触ってみるの。ああ、たまらないっ」
一平の背筋を悪寒が走った。それこそ、『ぞっ』と音がしたようだった。
(なんだなんだ。この女どもは。一体何の話をしてるんだ)
女官たちの話題が他でもない自分のことだとわかって、一平は茂みから出て行くチャンスを完璧に失った。
「でもだめよ。一平さまにはパールティアさまがいるでしょ」
「そうよねー。お二人は三年間も二人きりで旅してらしたんでしょ。とっくに出来上がっちゃってて私たちの入る隙間なんてないに決まってるもの」
「あああ!悔しいぃぃ。あたしも行方不明になればよかったあ」
一平が王女のパールに求婚をしていて、青の剣の守人を目指していることはかなり知れ渡っていると聞いてはいた。しかし、こうして女官たちのおしゃべりの話題として実際に耳にするのは初めてである。
(よしてくれ。全く。女ってのはいつもそんなことを考えてるのか?)
「きっと、もうやっちゃってるわあ。あんなに男らしいんだもの…」
(やっ…)
顔から火が出そうだった。詮索するのは勝手だが、大概にしてほしい。取り沙汰されているのが、自分の性に関してだというところがどうにもこうにも居心地悪かった。
「あらあ、何言ってるのよ。パールティアさまにはまだ尻尾があるじゃなあい。そんなの無理無理」
(え?)
「わかってるわよお。ほんの冗談。お可愛らしい方だけど、あたしたちと違ってまだお子様なのよね。一平さまもおかわいそうに。持って行き場がないんじゃなあい?」
(余計なお世話だ。そんなこと)
しかし聞き捨てならなかった。
(パールにはまだ尻尾があるから無理?そうなのか?)
しかし、顔を出して行って女官たちに訊くわけにもいかない。
そうこうしているうちに休憩は終わったらしく、女官たちは慌しく引き上げて行った。
確かにパールには尻尾がある。大変態を経て足が出来て初めて成人と見做されると言う。
だが、一平は言われたものだ。『成人するまでは手を出すなよ』と。
その時はキスでもその『手』の部類に入るものと思い込み、失態を見せてしまったが、どうやら違うらしいという感覚はあった。王の言葉を分析するとそういうことは成人前でも可能なようなのだが、エスメラルダの言葉から推測するところでは無理っぽい。今の女官たちも無理だと言う。例によって、オスカーにはからかわれただけなのだろうか。一平にはわからない。
別にそういうことがしたくて悩んでいるわけではない。だが、いずれはぶち当たる問題だ。
地上の人間ならばどうするものなのかは大体知っている。ムラーラでは、成人した少年たちに年長の女性が手を取り足を取って教えてくれる。だが、そのいずれの女性にも、共通しているものは足なのだ。
しかし幼魚のパールに足はない。一人の女性としてパールを愛している一平は正直パールを抱きたいと思わないではない。だが、そのパールには肝腎なものがないのだ。一般的に男性が女性を好ましく思う欲情の対象となるものが。それでもパールを抱きたいと思う自分は異常なのだろうか。それとも本当に、足がない幼魚でもそういうことは可能なのだろうか。
一体誰に訊いたら答えがわかるのだろう。調べようにもここには書物というものがない。知識は全て口伝えだ。
大人ならば誰に聞いてもわかる類の話なのだが、生憎と、一平はまだそういう話をざっくばらんにできるような悪友を持つには至っていなかった。オスカー王には色々と相談に乗ってもらっているが、まさか当のパールの親に訊くわけにはいかないではないか。
次に親しいのはキンタだと言ってもよかったが、キンタはパールよりも歳がいかない未成年であった。
結局一平は問題を未消化のままにパールと接することになる。
だが、これもまた問題だった。
そのことが頭から離れなくなってしまったのだ。
一平はパールの顔もまともに見られなくなっていた。
想像してしまうのだ。パールの成人した姿を。しかもその下半身を。
ついでにこっちの身体も変化する。そいつが一番やばかった。
少なくともあんなことを聞く前は、こんな妄想ばかり浮かんではいなかったのだ。
女官たちのおしゃべりタイムに遭遇してしまった不運を呪い、何とか気を紛らわそうと、必要以上に武道の修行に励む一平だった。
そんな一平の変化に気づいた者がいる。
キンタだった。
キンタは一般教養部門の同級生たちに負けず劣らず一平の崇拝者になっていた。ただし、接し方は彼らとは違う。父親に似たのか飄々としたところのある彼は、およそ王族の一員とは言い難い雰囲気をも兼ね備えていて、パールと同じく人前とのギャップが激しかった。
年上の一平に対してもタメ口を聞くところは横柄とも言えるが、妙に板についていて憎めない。不思議と周りの者から等しく愛される性質であった。
生意気な口を叩いてはいても『勇者』である一平の事は尊敬していて、一平の言動に関しては関心が高くよく観察している。彼が自分の姉に求婚しているということは誇りに思っていたが、同時に、あの自分から見ても幼く頼りなく見える姉のどこがいいのか不思議に思う部分も大きい。自分の満足と疑問の解消のためにではあったが、二人を一番近くでよく見ていたのは、キンタであった。
そのキンタにして初めてわかるほどの小さな変化ではあったが、パールに対する一平の態度の急変は、彼にとっても不安を煽る出来事だった。
「どうしたのさ」
「えっ?」
突然部屋にやってきて質問を発したキンタに、一平は目を向けた。
「この頃さ、なんか変だよ。何かあったの?お姉ちゃんと」
「……」
「最近さ、お姉ちゃんから時々目を逸らすだろ?誰も気づかないみたいだけど」
「……」
「何もないんならいいんだけどさ。お姉ちゃんて案外敏いところあるから気をつけた方がいいよ」
「キンタ…」
一平は驚いてキンタを見つめた。この洞察力はなんとしたものだろう。さすがはあのオスカーの一人息子。並み外れたところも既に受け継いで頭角を顕わしている。
「何か悩みがあるんならさ、一人で悩まない方がいいよ。オレじゃあ話し相手になんかならないかもしれないけどさ」
「ありがとう、キンタ…。気にかけてくれて嬉しいよ」
お愛想やお追従ではなく、一平は答えた。
「一度聞きたかったんだけどさ。一平ってロリコン?お姉ちゃんの一体どこがいいのさ。…もちろんお姉ちゃんはかわいいよ。性格だって素直で一生懸命でオレは好きだよ。けど、一平みたいな偉丈夫が恋愛の対象と見るにはどうしたって幼なすぎるんじゃないかな」
「パールはしっかりしているよ」これもお世辞ではなく、一平は思っていた。「確かに見た目は幼いかもしれないけれど、他者を癒せるっていうのは崇高な心の持ち主でなければできないことだとボクは思う。一緒にいて心の安らげる相手と一生添い遂げたいと思うのは当たり前の感情だろう?ボクにとってパールはそういう存在なんだ。もちろん抱き締めたいとかキスしたいとかそういうことをパールはボクに思わせてもくれる」
「それ以上のことも?」
核心を突くキンタの問いに、一平の心臓は飛び跳ねた。まさしく彼が悩んでいたのはそのことなのだ。
一瞬の逡巡を、これまたキンタは読み取った。
「今のお姉ちゃんを抱きたいと思えるの?」
キンタのことを子どもだと侮っていた自分を一平は叱咤した。キンタはすごい。自然に相手の懐に踏み込むことができる。知識も凡人以上に豊富だ。姉のパールよりも世間を知っている。そして大人のあれこれも。
言ってみるか、と一平は思った。
「オレは…パールを誰にも触らせたくない。もしもパールを傷つける奴が現れたとしたら、オレはそいつを許さないだろう。パールにはオレだけを見ていて欲しい。オレだけのパールでいて欲しい。それはおまえの言う意味と重なることだと思う。オレは確かに、あいつをこの腕に抱きたいんだ」
いざ口火を切ってみると、恥ずかしさはどこかへ吹っ飛んでいた。一人称まで変わっている。
「だけど…パールの方にはその用意はない。無理強いするつもりもない。あくまであいつが目覚めるのを待つつもりだ」
「それを聞いて安心したよ。やっぱり一平はオレの思っていた通りの男だった」
キンタはほっとした顔で笑顔を見せる。言うことはまるで弟ではなく、妹を見守る兄のようだ。
「だが… 一つだけわからないことがある…おまえなら知っているか?知っているなら教えてくれないか。このことに答えを見出せないと、オレはこの先パールにどう対していいか、いや、バールをどう守ればいいのかわからないんだ」
「一体、何さ?」
それこそが一平を悩ませ、不思議な行動を取らせている原因なのだ、とキンタは理解した。
言いにくいが聞かねばならない。これは神が与えたもうた唯一のチャンスなのだ。逃してはならない。
「幼魚を抱くことはできるのか?」
「へ?」
キンタは目を丸くした。その表情は何を当たり前のことを、と語っている。
「…そんなこと…気にしてたの?」
一平の情けない顔を見て、キンタははたと思い直す。一平は何でもでき、何でも知っているわけじゃない。海のことについてはこちらの思っている以上に無知なのだと。
「ごめんよ。一平の生い立ちを忘れてた…。答えは『無理』だ」
「…やはり…」
「なんだ、わかってたんじゃないか」
「いや、薄々だ。そうではないかとは、六割方思っていた」
「じゃあ、残り四割は可能かもと思ってたの?本当に?」
「あぁ…」
「だって足がないんだよ。大人になるってことは子どもを作るってことだから、子どもの生まれてくるところや乳をやる機能がなければ意味がないんじゃない?オレだってあんまり詳しくは知らないけど、そういうものは大変態の時に出来るらしいよ。足の付け根とかにさ」
「…そう…か…」
ほっとした。
自分の思いはまだ叶わないと言うのに。
だが、これで他の男にパールが汚される心配はひとまずなくなったのだ。以前と比べると一緒にいられることが格段と少なくなっているので、少なからず不安は付き纏っていた。ここにはパールと結婚したがっている男が少なくとももう一人はいるのである。その男が女癖のあまり良くないプレイボーイだという情報を、一平は修繕所で得ていた。そいつからまずパールを守りたかったのだ。
無理だと聞いたことで、いくら妄想に取り付かれても徒労に終わるとわかる。ドギマギするだけばかみたいだ。そんな事はパールが成人してから悩めばいいのだと、頭の隅でもう一人の自分が囁く。
「変なの」
キンタが呟いた。
「な…に⁉︎」
「お姉ちゃんを抱きたかったんじゃないの?そんなほっとした顔しちゃってさ」
そんなにズバリと聞いてくれるな、と今更ながらに一平は思った。
確かに、自分は『パールを抱きたい』と打ち明けた。けれど、他人からはっきり指摘されるのはかなり気恥ずかしいものがある。しかも相手は当の娘の実の弟だ。
少々軽はずみなところのあるこの王子は、今の一平にとっては貴重な存在になっていた。普通なら近づきにすらなれないであろう身分の少年に、混血の新参者が対等な口を利いている。『おまえ』と呼ぶことすら許されている。いくら五歳年下だからといっても、これは破格の扱いなのだ。
そのことをキンタ自身が何の抵抗もなく受け入れているのは、一平がパールの恩人であることで父の国王が一目置いているのに加えて、性格、力が共に秀でている一平にキンタ自身が憧れ、崇拝しているからだ。それにしては、タメ口を利いたりからかったりと、信奉者らしからぬ言動をするが、そこはそれトリトニアの気風というか、父親であるオスカー王の影響というか、環境と血のなせる技である。
「いいんだ。どのみちそんなことは許されないんだから。今のパールにそんなことをして嫌われたくはないよ。オレのものにならない代わりに、他の誰のものにもならない。それで充分だ」
「まぁあれだけ好かれてりゃそれでいいかもしれないね。誰が見たって一目瞭然だもんね」
「そう…思うか?」
パールは純粋で素直で実にあけっぴろげだ。まだ結婚できると決まったわけではないのに『一平ちゃんのお嫁さんになる』と憚らずに公言する。おかげで変な虫はつきにくいだろうが、いつの間にか世間に知れ渡っていて本当に驚いたものだ。
一平としては開き直る他なかった。その対応がまた潔くて、人々に好感を持って受け入れられることになったのだが。
「子どもなんだよなぁ、全く…」
キンタの方が年下なのに、姉を子ども扱いする弟の言動に違和感がない。パールはそれほど幼く無邪気に人々の目には映るのだ。
「本当に大変態を迎える年か?って思っちゃうよね」
パールの十三の誕生日は着々と近づいてきていた。時満ちて成人となる日は目前に迫っているはずなのだ。個人差はあるが、誕生日の前後一年の間に、十割近くもの少女が大変態を終えると言う。あのエスメラルダはパールより二ヶ月早く生まれただけだが、成人して九ヶ月が経っている。十三で大人とは言っても十二で既に身体は大人になってしまう者も少なくはあるがいると言うことだ。
そのことを知った時、一平はパールの大変態が旅の途中に起こらなくてよかったと思った。ムラーラにいた時ならともかく、海人と会えないところでは、衣服の調達が不可能だったから。
だが、それ以上に心配なこともある。年に一度の通常の変態なら一時間で終了し、本人も気づかぬほど痛みもないが、この大変態だけは別物で激しい裂けるような痛みを伴うものであるということだ。時間も四時間から半日近くもかかるらしい。例えて言うなら、女性が子どもを産む時の陣痛に匹敵するだろう。そんな状態のパールを目の前にして、一平はひとり何をどうしてやればいいのだろう。痛みを軽減する術も知らないし、その身を代わってやることもできないのだ。
この点に関してだけは、パールの成長が遅いということが幸運に働いた。
とは言え、いつ訪れるのだろう、その時は。
多分遅いとは思うが、それは医師にも測れることではなかった。目安としてはいくつかあるらしいが、男性の耳には聞かされない。
『そのことはお訊きあそばしますな』と言った王妃の顔が妙に毅然と、そして神秘的に見えたことを一平は思い出した。
「なんかさー、よくわかんないよね。女って」
わかったようなませた口を利くキンタを見て、一平の口から苦笑が漏れる。
「オレたちの鰭はさあ」そう言ってキンタは自分の膝から下にある足鰭を見下ろした。「いつもの変態みたいにすぐ消えるって言うけど、女は違うんだろ⁉︎大変だよなあ」
同じ幼魚でも、男子には足がある。脛の脇に一枚ずつ、薄いが丈夫な鰭が生えている。まだ体力の伴わない幼魚が早く泳ぐための補助と舵取りの役目を担っていた。常時必要になるため、幼魚は布などで足を覆わない。ムラーラの衣装のような裾の長いものは鰭を隠すことになり、生命の危険にも繋がるので御法度だった。
成人に関してはその限りではないが、トリトニアでは男は主に上衣と繋がった丈の短い服をベルトで腰に留めつける。袖も半袖と言うよりフレンチスリーブに近く、肩からマントを羽織ることが多い。
だが、子どものうちはマントを身に付けることはできない。成人して初めて親から贈られるものだと言う。一般的には腰の辺りまでの長さだが、地位や階級が上がるに従って長くなる。色にも制限がある。
因みに、一国の王ともなると、公式な場でのマントの長さは、地上なら地を這うほどで、色も深紅と決められている。地位が高くなれば、細々と動き回る必要がなくなるから、多少動きにくくても支障がないのでこうなったのだと思われた。とは言え、じっとしてばかりもいられないので、オスカーも普段は略式に、膝の辺りまでのものを着用している。色だけは真紅だが。
一平の目指す青の剣の守人はと言えば、明るい青である。白の剣の守人はもちろん純白だ。
この三色以外なら、人々はどのような色のマントを着てもよい。同じ赤でも朱赤ならばよく、薄水でも卵色でも咎められることはない。
一平は濃紺のマントを好んで着ていた。父から譲り受けた―というか、死後初めて目にした―マントは臙脂色に近かった。だが、オスカー王の色に近く、自分が目指すのは青の剣の守人であるため、青系統を選んでいるのだ。
そのマントを、一平の背後に回ったキンタが掬い上げた。
「いいなあ。オレも早く羽織れるようになりたいなあ…あと四年も先なんてつまんないよ」
ふと思いついて、一平は肩の留め金を外した。マントを肩から下ろし、立ち上がってキンタの肩に掛けてやる。
一平の身体に合わせたサイズの方形の布は、声変わり前の少年にはまだ大き過ぎた。まるで毛布を引っ掛けているようだ。
「どうだ?気分は」
あんぐりと自分の身体を見回し、キンタはため息を吐いた。
「結構…重いんだ…」
普段着る衣類よりは、確かに厚めで重い。大人の責任としての重さだ。
「わかってるんだよ。オレにはまだ似合わないって」
そうしてしょげるとパールを思い起こさせる。一平は言った。
「まんざらまずくはないぞ。ただおまえには青よりも赤だな。燃えるようなオレンジの髪とよく合うだろう」
同じオレンジの髪と真紅のマントの王を見慣れているからだろうか。一平にはそう思えた。
「いずれはおまえがあの緋色のマントを受け継ぐことになるのだろう?楽しみだな」
「そんなの無理だって。オレの柄じゃねーよ」
「だが、第一に試されるのはおまえだろう?オレと違って守人になれる可能性は一番高い」
「そうだけどさ…嫌なんだよ。みっともないだろ? 五人スキップした男の息子が真っ先にピンハネされたら」
なるほど、そういう考え方もあったのか。親が優秀だと、子どもには余計なプレッシャーがかかるということだ。
「親が立派だと子どもは大変だな」
「一平はいいよな。目の上のたんこぶがいなくて」
「そういうことを言うものじゃない。オレの生国にはこういうことわざがあるぞ。『親孝行したい時には親はなし』ってな」
「……」おしゃべりなキンタが絶句した。言い過ぎたとすぐに反省した。「…ごめん…」
「何もオレに謝ることはない。大切にしろと言いたかっただけだ」
キンタは真面目に頷いたが、唐突にこう言った。
「やっぱりわかんねーよ」
「?」
「一平はやっぱりすごいよ。なんでこんなにしっかり者のいい奴がロリコンなんだか」
「違うと言っただろう⁉︎」
そう否定する前に拳固が飛んだ。キンタの脳天に。




