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6 顔合わせ

「隊長。王都より巫女姫様が到着されたそうです」

「わかった。すぐ行く。巫女姫は客室に通すように案内を。あと、エレナを呼んでおいてくれ」

「はい」


 伝令の報告を受け、隊長と呼ばれたこの館の主は彼を見向きもせずに新たに指示を出す。伝令の少年はそれを不満に思った様子もなく、自分の仕事を果たすため、タッと部屋の外へと駆けて行った。


「結局、受け入れるの?」


 伝令の少年と入れ違いになるように誰かが部屋の中に入ってきた。敬意を払っていた伝令の少年とは異なる言葉遣いに、館の主は顔をあげる。


 変声期前の高い声。まだ成長途中の細い体。それを覆い隠すオーバーサイズの魔導士のローブ。

 燃えるような赤い髪に、猫のように鋭い金の瞳を持つ少年がそこに立っていた。


 館の主は少年の問いに諦め交じりに答える。


「王命なんだから仕方ないだろう。こちらとしても断れるなら断りたいくらいだ」

「だよねー。『役立たずの巫女姫』なんて噂されてるくらいだもん。かなり面倒くさい子だったりして」


 少年はぼやきながら身を投げ出すようにしてソファに腰かけた。礼儀も何もない年相応の姿を見せる彼に、館の主は怪訝な目を向ける。


「それで、何しにここへ来たんだ? 何も俺をからかいに来たわけじゃないだろう」

「うん。これから隊長は巫女姫に会うんでしょう? オレもついて行こうと思って」

「一応聞くが、何でだ?」

「ここの専属魔導士としてのお仕事ってとこ。巫女姫って役立たずとは言われてるけど、『浄化の乙女』の代表みたいなもんでしょ? オレが会ってみたかったのは『異界の乙女』の方だけど、巫女姫でも悪くはないかなって」


 明け透けに答える少年を館の主は冷ややかな目で見た。

 天然なのか、計算なのか、はたまたそういう性格なのか。この少年は取り繕うことを嫌う。年齢の割に有能なのは確かだが、その言動ゆえにトラブルを招くことも少なくなかった。


「……確かにお前についてきてもらった方がいい事もあるだろうが、言っていい事と悪いことは考えろ」

「と、言うと?」

「役立たずだとか、『異界の乙女』の方がよかったとか、そういうのを巫女姫の前では言うな、と言ってるんだ」


 館の主の真剣な言葉に、少年はキョトンとした顔を浮かべる。


「なんで? 事実だし、別に良くない? それで巫女姫が怒ったとしてもここから出てってくれるんだから万々歳じゃん」

「確かにそれはそれで楽かも知れないが、相手は王族だぞ? 不敬だと言われたら俺でも庇えない。それに、誰だって面と向かって『役立たず』だと言われたら嫌だろう」


 少年は館の主の言葉にピンと来ていない様子で、いまだキョトンとした顔を続けている。少年は館の主の言葉を反芻するように少し押し黙ったあと、本人も納得いってないような顔で口を開いた。


「つまり、巫女姫の前では黙ってろってこと?」

「……とりあえず、今日はそうしてくれ」

「はーい」


 本当に理解したのかわからないような少年の返事に、館の主は溜息をつく。


 少年が起こすトラブルは今に始まったことではないが、今回の相手は王族、それもワガママなお姫様だと噂されている王女だ。小さなトラブルがどんな結果を招くのか、少しも予想できない。


 これが『異界の乙女』相手なら、彼ももう少しましな言動をしただろうか。館の主の頭にそんな考えがちらつく。


 彼がもう何度目になるかわからない溜息をつこうとしたとき、書斎の扉がノックされ、はきはきとした女性の声が響いた。


「お呼びにあずかりました。エレナです」


 館の主と少年は互いに顔を見合わせると、どちらからともなく椅子から立ち上がった。



   ♢♦♢♦♢♦



 王都からやってくるのは『異界の乙女』ではなく『役立たずの巫女姫』である。


 その話は嘆願書の返事が来てから、一日も経たずにロブストフェルスの館内に出回った。


 これに対する騎士たちの反応は様々。館の主も、何故『異界の乙女』ではなく巫女姫なのかと頭を抱えたが、彼が最も悩んだのは、ロブストフェルスの騎士たちの中から巫女姫の護衛を選ばなければならない、ということだった。


 いくら王都で『役立たず』と噂されていたとしても、王女は王女。追い出すこともできなければ、雑に扱うこともできない。そんなことをしようものならば、これ以降、国がロブストフェルスの嘆願を聞き入れることはないだろう。


 だが、そのことに対し、不満を持っていてもどうにもならない。とにかく今は、『役立たずの巫女姫』と呼ばれる王女に対して、ある程度まともな扱いができる騎士を選ばなければ。


「言っておくが、無理をしてまで王女の護衛にあたる必要はない。身の危険を感じたり、護衛としての責務が果たせないと思ったならすぐに言ってくれ」

「はい、頑張ります!」

「だから、そうじゃなくて……」


 館の主の心配をよそに、部下の女性は元気よく答える。

 王女の護衛に選んだのは、ロブストフェルスでも数少ない女性騎士であるエレナ・クライン。高く結い上げられた金髪と、それと同色の瞳はやる気に満ち溢れている。


 エレナは王女の護衛に相応しい実力を持っているが、少々楽観的な性格をしているのが不安要素の一つ。だが、彼女のその明るい雰囲気は、ワガママ姫の毒気に晒されても大丈夫なのではないかと思えるようなものがあった。


「まあ、無理だと思ったら言ってくれ」

「はい!」


 エレナの気前のいい返事を聞き、多少の不安を抱きつつも、館の主は客室の扉に目をやった。どれだけ対策を取ろうとも、最終的には相手との相性を考えなければどうしようもない。

 巫女姫の良からぬ噂はロブストフェルスでも広まっているが、彼女が一体どういう人間なのか、会ったことがある者は誰もいないのだ。


「巫女姫様ってどんな方なんでしょうね。私、ワクワクしてます」

「……楽しみにしてくれて助かるよ」


 能天気なエレナの言葉に勇気づけられつつ、言いつけ通り大人しくしている魔導士の少年を側に置いて、館の主は巫女姫を待つ。


 やがて、数回のノックと共に、伝令の少年に連れられた巫女姫が扉の向こうから姿を現した。


 白。


 巫女姫を言い表すのに、その言葉以外必要なかった。

 ドレスも白。靴も白。頭のてっぺんから肩の下までを覆うベールも白。顔は分厚いベールのせいでよく見えず、その下からわずかに覗く髪が金色であることだけがわかった。


 オバケみたい、と少年がぼそっと呟く。慌てて少年を肘で軽く小突き、館の主は咳払いをして彼の失言を誤魔化す。

 幸いにも巫女姫に少年の言葉は聞こえなかったのか、彼女が何か反応することはなかった。


 しずしずと巫女姫が部屋の中に入り、その後ろに続いて年配の女性も部屋に入ってくる。おそらく彼女の乳母だろう。


 バタン、と客室の扉が閉められたのを確認して、館の主は胸に手を当て、深々と頭を下げた。


「遠路はるばる、ようこそおいでくださいました。私はここロブストフェルスの館を預かる、ウォルター・レイビス・ロブストフェルスと申します」


 館の主——、ウォルターの挨拶に巫女姫は一瞬怯んだ様子を見せた。が、すぐに巫女姫の後ろにいる乳母がしっかりしなさい、というように彼女の背中を軽く叩く。

 その激励に勇気づけられたように、巫女姫は今一度背筋を伸ばすと、ドレスの裾を持って軽く頭を下げる。


「お、王都より、兄、リオネス王の命を受けて、やってまいりました。リヴィア・フィリグランツ・ブラウイーレ、と、申します」


 緊張で上擦った声は震えていて、ベール越しのためか、くぐもっている。その上、ところどころ言葉が詰まっていて、やけに聞き取りづらかった。


 あまりの巫女姫の様子にウォルターは面食らった。表情には出さなかったが、コッソリと後ろの部下二人を確認すると、やはり二人ともなんとも言えないような顔をしている。

 彼らも巫女姫の言葉がよく聞こえなかったのかもしれないし、もしくは噂の巫女姫と実際の巫女姫があまりにかけ離れていることに驚いているのかもしれない。


 だが、想定と違ったからといって、何か話が変わるわけでもない。


「……ひとまず腰をおかけください。後ろの女性も一緒に」


 ウォルターが促すと、巫女姫はどこかほっとしたような雰囲気を見せた。

 そのまま二人を客室のソファに座らせると、ウォルターも彼女たちの向かいに腰掛ける。エレナと魔導士の少年は黙ったまま、ウォルターの後ろについた。


 部下二人が動きを止めてからほんの一瞬間を置いて、ウォルターは神妙な顔をして話を始めた。


「まずは、我々の嘆願を聞き入れていただいたことに感謝を、と申し上げたいところですが、一つ、はっきりさせておきたいことがあるのです。何故、『異界の乙女』ではなく、『巫女姫』である貴方がここへとやってきたのか。その理由を」


 びく、と巫女姫の体が震え、乳母の目つきがキッと険しくなる。だが、ウォルターがそれに怯んだ様子はない。


 先に嘆願と異なることをしてきたのは巫女姫たちの方だ。全てが叶えられるわけではないとわかっているが、理由を問う権利ぐらいはあるはずだ。


 冷え切った空気の中で、俯いた巫女姫に改めてウォルターは尋ねた。


「貴方は我々が『巫女姫』ではなく『異界の乙女』を求めていたとご存じでしょうか? もしもご存じなら、陛下は何を思って貴方をここへ? 我々はそれを知りたいのです」


 ロブストフェルスが望んでいたのは貴方ではない。侮辱ともとれる言葉だが、黙りこくった巫女姫は何も言わなかった。


 ウォルターが目線を巫女姫から乳母に移せば、乳母は怒りに満ちた顔でウォルターを見ている。後ろの部下二人はすでにそれに気づいていたのか、彼らは巫女姫ではなく乳母の方を警戒していた。


 これ以上何か言えば、巫女姫の乳母は暴れるかもしれない。けれども、ロブストフェルスのことを思えば、引き下がるわけにはない。


 ウォルターが質問を続けるか、乳母が先に怒りの声をあげるか。この一触即発の空気を切り裂くように口を開いたのは、この二人のどちらでもなかった。


「……あ」


 か細く震える声の主に、ばっとその場にいる全員の視線が向かう。一斉に目線を向けられた巫女姫はそれに怯みながらも、恐る恐るというように言葉を続けた。


「あ、あの……。私は、知っていました。ロブストフェルスが『異界の乙女』を求めていたこと」


 声を震わせながら一言一言語る巫女姫に、乳母は一旦身を引き、ウォルターも警戒を少し和らげる。


「では、陛下の考えは?」

「……兄は、」


 巫女姫は言葉を切ると、再び俯いた。ベールに隠されたその顔からは、彼女が何を考えているかを伺うことはできない。

 だが、彼女はそこから口を完全に噤むことはなく、ギュッと手を握り締めた後にもう一度口を開いた。


「……ごめんなさい。私には、兄が、陛下が何をお考えなのか、わからないのです」


 そんな答えで、一体誰が納得できる。


 ウォルターは真っ先にそう思ったが、口には出さなかった。王の真意は王にしかわからない。ここで巫女姫を問い詰めたとしても、彼女を怯えさせるばかりで答えが得られるはずもない。


 ウォルターは一度溜息をつき、すぐに巫女姫に向き合った。


「わかりました。では、最後に一つ。貴方がここにやってきたのは伝令でも、冷やかしでもなく、ロブストフェルスに尽力するためだという認識でよろしいでしょうか?」

「……、王命、ですので」

「それが、私の部下として扱われ、私の指示に全て従っていただくことだとしても?」


 ピタリ、と巫女姫の動きが止まった気がした。顔も見えない。動きが大げさなわけでもない。だが、ウォルターの確認の言葉に、巫女姫は確かに動きを止めた。

 彼女はそこからのろのろと顔を俯かせると、はい、と小さく頷いた。


「それがここの規則なのであれば、従います」


 強欲で、傲慢で、ワガママなお姫様。もし、巫女姫が噂通りの人物であれば、こんな返事は絶対にしないだろう。

 むしろ、ワガママ姫の方が拒絶しやすくて良かった。そう思いながら、ウォルターは重たい口を開いた。


「……わかった。では、ここからは客人ではなく、一人の部下として扱わせてもらう」


 態度を変えたウォルターの言葉に、巫女姫は緊張でギュッと身構えた。


「まず、後ろの二人は私の部下だ。女性騎士の方はエレナ・クライン。彼女には貴方の護衛をやってもらう。どこへ行くにしても、必ず彼女を同行するように」


 そう言って、ウォルターはエレナを指差す。エレナはウォルターの紹介に合わせて静かに頭を下げた。


「少年の方はヒューロット・メロウ。ここの専属魔導士だ」


 エレナの次に指を指された少年——ヒューロットは特に挨拶をするわけでもなく、巫女姫のことをじっと見つめていた。

 部下二人を立て続けに紹介された巫女姫は、オロオロとしながらウォルターの指の先を追う。その間もウォルターからの説明は続いた。


「館の案内は後でエレナにさせる。危険な場所や立ち入り禁止の場所もあるが、そこはエレナに従ってくれ。何か交渉したい事があるなら、私に直接言うか、エレナを通すように」

「……はい」


 巫女姫が頷いたのを見て、ウォルターは、最後に、と前置きをしてから、巫女姫のベールを指差した。


「その服装を改めてもらう。特に今後、そのベールは絶対に外すように」

「……え?」


 今まで従順にウォルターの言葉に従ってきた巫女姫が初めて困惑した。表情は見えないのに、彼女が動揺し、焦っているのがわかる。

 行動の制限や見張りをつけることには文句を言わないのに、服装に関しては拒否をする。どこか価値観がズレている巫女姫にウォルターは軽く違和感を覚えた。


 が、それは突如響いた、バンッと机を叩く音にかき消された。


「先ほどから聞いていれば、あなたはお嬢様を何だとお思いですか!?」


 巫女姫よりも先に怒りを爆発させたのは、彼女の隣にいた乳母だった。乳母はそれだけでは物足りないというように、次々に言葉を捲し立てる。


「ええ、ええ。確かにお嬢様は気弱な方でいらっしゃいますよ! けれどもねぇ、だからといってあなたに見下されるような身分の方ではないのです! 先王の血を引き、『浄化の乙女』の力を持つ、唯一の『巫女姫』! その方の有り様どころか、陛下の定めた神聖な衣装にまで口を出すなんて、あなたは一体何様のつもりですか!?」

「……ば。マ、マーサ」


 巫女姫が乳母を咎めれば、彼女は納得がいかないような顔をしながらも押し黙った。


 ウォルターからしてみれば、巫女姫の行動は正直ありがたい。もし、ウォルターが乳母を止めようと試みたとしても、彼女はほぼ間違いなく激昂しただろう。


 乳母が少し落ち着いたのを見て、ウォルターは再び口を開いた。


「巫女姫が『異界の乙女』の代わりにここへ来たのであれば、『浄化の乙女』として戦場に出てもらうことになる。その際に身動きの取りにくいドレスを着ていたり、視界を遮るベールを着けていれば、護衛のいる方へ逃げてくることもできない。ロブストフェルスの騎士のためにも、巫女姫の身の安全のためにも私の命令には従っていただく」


 ウォルターの言葉に、乳母は何も言い返さなかった。いや、本当は言い返したい、と顔に出ているのだが、巫女姫の安全のためだと言われれば口を噤むしかないのだろう。


 乳母は黙った。あとは巫女姫がどう出るか。


 ウォルターが巫女姫に目をやれば、彼女は乳母と同じく押し黙ったまま、けれどもベールを外そうと手を動かすこともしなかった。


 激昂しながらも納得した様子を見せた乳母と、従順そうな様子を見せながらも最後の一線は譲らない巫女姫。

 説得における厄介さで言えば、乳母よりも巫女姫の方が上かもしれない。


「貴方の安全のためにも、そのベールは外してもらう」


 ウォルターがもう一度促したが、巫女姫は黙ったままギュッと膝の上で手を握りしめた。


「……。めんどくさいなぁ」


 重い沈黙を破った声はウォルターの後ろから聞こえた。

 は? とウォルターが後ろを振り向くと、魔導士の少年が巫女姫に向かって腕を上げるのが見えた。


 ヒューロットが手を前に差し出すのと同時に、パチッと魔力を使う時に出る閃光が瞬く。魔法が使われる。その事実にここにいる誰もが唖然とする暇もなかった。


 ぶわり、と突然室内に突風が吹いた。その風ではためいた巫女姫の白いベールが吹き飛ばされる。突然吹いた風とそれに巻き込まれたベールは、まるで吸い込まれるように少年の手のひらに収まった。


「はい。これでいいでしょ」


 と、ヒューロットは事もなげにウォルターにベールを差し出した。

 ウォルターはその行動に一瞬呆気に取られたあと、すぐに立ち上がりヒューロットからベールを取り返した。


「バカ! 何してる!」

「何って、ベール取っただけじゃん」


 散々無礼な態度をとってきた自覚はあるが、巫女姫が嫌がることを無理強いするつもりはなかった。あくまでベールを取ることを本人が納得するまで説得するつもりだったが、こんな事態になって巫女姫はどう思っただろうか。


 ヒューロットへの説教はあとにして、ウォルターは巫女姫の方を振り返った。あれだけベールを取るのを嫌がっていたのだ、今度こそ巫女姫自身が怒り狂っても仕方ない。


 自分の部下が申し訳ないことをした。そう謝罪しようとしたウォルターは巫女姫の姿を見て、言葉を失った。


 風で乱れた髪を手で押さえて、突然開けた視界に怯えている少女。まだ何が起きたのか理解しておらず、混乱の中にいる瞳がウォルターを捉えた。


 綺麗に結わえられた癖のない金色の髪に、春の空のように柔らかな青い瞳。儚げで、弱々しくて、華奢で、どこか陰鬱そうな雰囲気を纏う少女。


 巫女姫は驚きで目を丸くしたあと、怯えた様にサーッと顔を青ざめさせた。


 彼女がかすかに口を動かす。音にはならなかったが、その口の動きは確かに『レイ』と言っていた。


 巫女姫が呼んだのは懐かしい名前。ウォルターが時折使う偽名だが、それを知る者は限られている。

 そんな名を呼んだ彼女をウォルターは知っている。彼女の雰囲気を覚えている。


 ウォルターが口を開こうとした瞬間、フラッと彼女の体が傾いた。青ざめた顔はそのままに、青い瞳は閉じられて。


「お嬢様!」


 乳母は叫ぶと同時に倒れそうになった巫女姫の体を受け止めた。

 お嬢様! リヴィアお嬢様! と乳母は体をゆすって巫女姫を呼ぶ。だが、巫女姫が目を開けることはなかった。

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