094-辿り着く真実
こうして、海賊のブラックマーケットでの戦いは終わった。
....のだが、アラッドの弟は見つからなかった。
どうやら、襲撃された船団の客は二つに分かれたようで、改造されたり性奴隷に出来そうな人間はこのブラックマーケットの流通ルートに、肉体労働などに使えそうな人間は、もう一つのルートに乗せられたようだ。
そして――――
「この度は、本当にすみませんでした....」
「構わない、それより彼女は元に戻せそうか?」
私はライズコンソーシアムを訪ねていた。
あの女性研究員は、キメラに改造されており胴体を吹っ飛ばしたのだが、人体部分は元に戻せるかは分からないそうだ。
「ですが、人格は元に戻る可能性があります。記憶障害は激しそうですが....」
「そうか」
そして、私はもう一つの用件を口にする。
「それで、社長とは面会できるか?」
「ええ、只今の時間はお暇だと思います。社長も、あなたの働きぶりに感心していらっしゃいました」
それは良かった。
なんで私がこの星系に留まっていたか、その答えがそこにある。
「このまま通ってもいいのか?」
「はい、セキュリティに登録してありますから」
「分かった」
私は奥につながる扉を開き、オフィスに入る。
中で歩き回る研究者たちは、入ってきた私に一瞬視線を向けるが、すぐに戻す。
傭兵には変わり者も多いだろうし、珍しいことでもないのだろう。
そのまま中央エレベーターに乗り、途中で研究員たちが乗り降りするのを見ながら、最上階まで向かう。
意外と無防備なその最奥にて、私は扉の横のチャイムを押す。
『どうぞ』
というわけで、私は室内に入る。
周囲を見渡し、特に仕掛けや隠し人員がいないことを確認して。
「ああ、カル殿か......一体、何の用事かな?」
「一つ、聞きたい事が出来たのだ」
私は、あの研究施設のデータを解析した資料を見たとき。
奇妙な既視感、そして情報の同一性に視点を置いた。
「答えられることであれば」
「C.C.....このイニシャルを使っているのは、お前だな?」
「.....ああ、その事かい....裏社会の人間が吐いたのかな?」
途端、カナードの雰囲気が一変する。
下手なことを口走れば、即座に何かをするといった様子だ。
「フォービュラにある中性子星に隠された研究施設。そこのデータベース....そうそう、スリーパードローンについての兵器転用研究、人権を無視した非道な生物適応実験、内部機関の危険性を排除する手段――――そのデータの署名者は、お前だったんだな?」
私の言葉に、カナードは一瞬呆けた顔をする。
私は、その反応に意外なものを覚えた。
だが、私の推測は間違っていなかった。
「......へぇ、腕の立つ傭兵だとは思ってたけれど。あの防備を突破できるとはね」
「パスワードはもう少し難しいものにした方がいいぞ」
私は忠告しておく。
だが、決定的な証拠は得られた。
「......で、何が聞きたいのかな?」
「お前の研究が、スリーパーを刺激していることは知っているか?」
私はそれが聞きたかった。
スリーパーはいずれ、このジスト星系を完全に破滅へと追いやるつもりだろう。
その引き金を引いていることを、この男はどう思っているのだろうか?
「ああ、そんな事か。――――勿論、どうでもいいと思っているさ」
「....お前の祖父も死ぬぞ」
「知らないよ、あんな老害の事なんか」
こうして、私は直面した。
彼の本性に。
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