083-再び空へ
修理を完了したアドアステラは、再びアレンスター所有のドックに戻っていた。
私たちはそれに乗り込む。
「おや......狭くないですね」
「少し幅を取ったんだ。もともと緩衝材のスペースが余分だったから」
艦内はより広くなっている。
シラードの伝手で見つかった修理業者の人が、割と注文を受けてくれたので、アドアステラはより最適化されている。
回避行動に円滑に移れるよう、スラスターをより多くしてあるし、砲台も多くした。
パルスレーザーは左右舷に二丁ずつになり、何より大きいのは――――
「私たちの戦い方は、結局機動戦にあると思ったんだ。だから――――」
「これは......まさか、民間用のサブワープドライブを....!」
エンジンを増設した。
フォートモジュールでパワーコアとワープドライブとハイパードライブが封じられる中、推力こそ劣るものの民間用サブワープドライブで高速移動ができる。
ゲームの頃は推力全般のエネルギーが使われていたものの、現実になった事でこうして裏技が出来るようになったみたいだ。
「こっちのマニュアルは既に端末に送っておいたから、ノルスとファイスは確認しておく事」
「はっ!」
「分かりました、御主人」
アドアステラは民間、傭兵仕様にいくつか互換性を持たせている。
それから、フォートモジュールの燃料を調達することが出来た。
反物質を、素粒子加速器で作っている企業から大量に購入したのだ。
お値段は張ったけど...代替燃料を見つけるまでの繋ぎにはなると思う。
『お帰りなさいませ、艦長』
私がブリッジに上がると、シトリンが出迎えてくれる。
顔のディスプレイに浮かんだ笑顔が、なんだか可愛らしい。
『システムチェックは大丈夫です』
「わかった。ありがとう」
なにぶん無理やり繋げたので、どこかで綻びが生じていてもおかしくない。
出来るだけ時間をかけてシステムチェックをシトリンに行うように命じていた。
『キャパシターバッテリーの自動装填システムも、遠隔で問題なく稼働することを確認しました』
「よし」
スーツと仮面を数十時間かけて除染する事になった身としては(検査の結果、遺伝子異常が発見されなかったファイスの保護者としても)、いちいち機関室でキャパシターバッテリーを交換するのは御免被りたい。
そこで、実弾の装填システムを転用して、倉庫から運搬したバッテリーを自動装填する装置をファイスと作ったのだ。
「これで緊急時も安心だね」
『ワタシとしては、緊急時を避けるように進言したいのですが...』
「.........うん、分かってるよ」
私の勝手な行動で、ファイスを死の淵にまで追いやったのは、もう忘れない。
「私の勝手で仲間が死んだなんて、お兄ちゃんが聞いたら...」
私は絶望する。
きっとお兄ちゃんは、「お前なんて俺の妹じゃない」と私を突き放すかもしれない。
それだけは...それだけは避けないと。
避けないと。避けないと。避けないと。避けないと。避けないと。避けないと。避けないと。避けないと。
「......とりあえず、30分後に出発するから」
『わかりました。システムの再チェックを行います』
私は自分の席に座り、復元データを呼び出す。
そこには、お兄ちゃんの写真があった。
写真に写っているのは、現実のお兄ちゃんではない。
あくまで、かつてお兄ちゃんがSNOをやっていた頃の所属勢力の仲間たち、そのアバターの集合写真に過ぎない。
でも、お兄ちゃんが関わっていると......まるで、今すぐにでも動き出しそうに見える。
でも、それはもう“死んだ”。
写真にはノイズが走り、元の姿を取り戻すことはできない。
「失敗は必ず生かす」
『ガントリーロック解除』
マスクを起動する。
視界がフィルターを通したものになり、同時にコンソールが起動する。
空中にモニターが投影され、私はそれを見ながら、コンソールを操作する。
『全艦に告ぐ。これより大気圏離脱を行うため、衝撃に備えよ』
全員が揃うのを待つ必要はない。
慣性制御のシステムを最適化したので、もう艦内にほとんど衝撃が来ることはないからだ。
「御主人、パワーコア、ワープドライブ、ハイパードライブに点火完了。民間用はより電力を点火に消費するため、45秒後に起動します」
「分かった」
私は静かに、出撃の時を待った。
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