081-シラードとの会話
その日。
ジスティアン領土の全てのシルバーランキングが、塗り変わった。
傭兵ポイントが異常に高い傭兵が、二人も出現したのだ。
「なんだ...あの仮面?」
「それより、アルゴって奴知ってるぞ、海賊の勢力をいくつも滅ぼした奴だ!」
シルバーの昇格ライン、そこに二人の人物が割って入った。
一人は、カル・クロカワ。
次に、アルゴ・ヴェンタス。
アルゴは順当に海賊狩りで名を上げたが、カルは依然として無名のままであった。
だが、傭兵ポイントの割り振りがあったということは、何かしらの高難度依頼をこなしたことになる。
人々は、カルという存在に興味を持ち...そしてそれが、小さな事件へと発展する事になるのであった。
「カル、とんでもないものを持ち込んでくれたな...!」
データバンクを星系軍に預けてから三日後。
修理中のアドアステラに、シラードが直接訪ねてきた。
「解析には成功したわけか」
「別に苦労したわけじゃないさ。“Password”って名前のパスワードを割り出すのに少々時間を食っただけだ」
「それはまた...御愁傷様」
「解析班は大笑いしていたぞ。それだけでもあのデータバンクの持ち主は金一封ものだな」
結局、あのデータバンクの持ち主は誰だったんだろう。
私はそれを聞いてみるが、
「分からんな...イニシャルで登録されていて、それ以外の情報はほとんど無かった」
C.C。
それが判明したイニシャルだった。
ミドルネームは無し、もしくはあえて入れなかった可能性がある。
「とりあえず、これほどの研究が出来る研究者を、このイニシャルで当たってみることにしたわけだ...つまり、見つかるまでは本報酬はお預けってわけだな」
「構わない。根拠のない報酬は受け取らない主義だ」
彼の身分でそんな事をすれば、賄賂になってしまう。
「いいのか? 修理費が嵩んでそうだが」
「元より貯金はあるのでな」
趣味無し、日課はお兄ちゃんの妄想小説を書く事なので、お金はほとんど使わない。
昨日はお兄ちゃんが艦隊を指揮して、あのセントリー群を打ち破るところまで書いた。
「将来設計をしっかりしてるのか。傭兵にしちゃ上出来だ」
「それはどうも」
勝手に解釈してくれたようで、シラードは頷いた。
「生きててくれて良かったよ、勝手に死なれたらアレンに殺されるからな」
「そこまでは、ないだろう」
「バカ言え、あいつは父親譲りで無能を装いつつ、利には敏い。お前がただの人間だったら、そもそもあいつはお前なんか気にも留めるか」
「...そういうものか」
私は半ば強引に頷く。
アレンスターが私を気に入った?
冗談だろう、あくまであれは契約、友情の真似事に過ぎない。
彼は演技がうまいから、外から来た私のことなんて、信用なんかこれっぽっちもしてないはずだ。
「さあ、帰れ。今日はまだする事がある」
「帰らせて頂こう。...なんだ!」
私は彼の肩を叩く。
「これを、持っていけ」
「ミネラルウォーターか、常備しているのか?」
「そうだ」
シラードは文句も言わず、ミネラルウォーターを飲み干した。
そして、こっちにペットボトルを投げ捨てた。
「また来る」
「ああ」
二度と来るなよ。
私はそう思いつつ、ペットボトルを踏み潰した。
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