080-嵐を乗り越え
内部に進入した私は、ケインと共に廊下を歩く。
中央のドーム状になっている何かを囲む回廊は、警備というものが一切なかった。
一周するかしないかくらいで、ゲートが見えた。
「逆向きに行けばすぐだったな」
「うん」
ゲートは開かなかったが、ケインが抱えてきたミサイルの爆発機構を置いて、急いで逃げる。
時限信管はこういう時に便利だ。
「この手に限る」
私たちは、その先の部屋に足を踏み入れて――――
それを目にした。
「凄いな」
「そうだね....」
とんでもない数のコンピューターが並び、その中央にデータバンクらしい球体があった。
何の研究施設かは分からないが、数十年分の積み重ねと演算のデータが入っているのだろう。
「まずは電源を切るぞ」
「うん」
技師見習いのファイスが不在なので、手探りで電源ケーブルを探し、抜いていく。
流石に電源を抜いたらすぐに停止するという訳ではなく、フィルセーフを行ってから停止するようだった。
全ての電源を抜くと、自爆シークエンスが作動――――する様子もなく、ただ球体についていた電源インジケータが消えただけだった。
「ここに侵入する人間がいる事を想定していないのは、本当だったのか...」
油断させておいて――――みたいなのを想像していたが、そういうのは一切なかった。
「運び出そう、ケインそっち持って」
「うん!」
台を固定するネジを横からニケで吹き飛ばし、二人で台座ごと抱えて持ち出す。
目立った抵抗もなく、二人でデータバンクを船まで運ぶことに成功した。
「シトリン、船の修復状況は?」
『アーマーの仮修復が完了しました。ただし、元素材からの劣化率は70%。早急な交換を推奨します』
「わかった」
単純なアーマーリペアでは、ナノマシンによる擬似金属しか生成できない。
元の素材より劣化してしまうために交換が必須なのだ。
『ワープコアの拘束場の修復は完了。パワーコアは十分な冷却期間を経た上で、隔壁を常備金属で修復完了しました』
「誰が修理を?」
「私がやりました」
その時、ファイスが格納庫に降りてきた。
その姿は...
「何か...大きくなったか?」
「はっ、死を乗り越えた結果成長したのかもしれません」
「...そうか」
ファイスは今までも私よりちょっと大きかったが、より大きくガタイもよくなっていた。
「もう死ぬなよ」
「ご命令とあらば」
ファイスは深く頭を下げる。
今回は私も悪いね、こんな無茶....仲間を無理やりにでも置いていくべきだった。
そうすれば死ぬのは私だけ......って、こういうのがダメなのかな。
「さあ、出発するぞ! ここから直接ハイパージャンプする!」
「了解!」
「うん!」
本当はドローンの残骸も回収したいし、証拠も隠滅したいけれど...
この大量のセントリーガンは中央部のシステムと独立しているので無理だ。
「接続は切ったから、一週間くらい経てば電源は切れるだろうがな」
私たちはブリッジに上がる。
すると、そこではアリアが待っていた。
「これは.....」
「その...艦長室に残ってたメモリーです...大切なものだと思って、戦闘後すぐに回収したんです」
「貸して」
私はそのメモリーを、自分のコンソールに繋げた。
すると、少しノイズがかかったお兄ちゃんの画像集が読み込まれた。
「.....ありがとう、アリア」
「はいっ!」
私はアリアの頭を撫でた。
....お兄ちゃん、待っててね。
「さあ、帰るぞ! 全員着席、アドアステラ発進!」
アドアステラは推進を開始しながら回頭し、ジストゲートの方へ向く。
そして、ハイパージャンプを起動し――――秘密施設を後にした。
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