077-喪失
「これは....!」
「確実に、拙いです」
私たちは機関室の前へと、大型のバッテリーを持って到着した。
....のはいいが、早速ガイガーカウンターが振り切れている。
「スーツの放射線耐性は、長くは持たない――――だからこそ、一瞬の油断が命取りだ...いいな!?」
「はっ、主人!」
私たちはシャッターを解放し、機関室の内部へと入り込む。
内部では、強烈な水蒸気が発生しているものの、特に変わった様子はない。
だが、それこそが最も危険な証だ。
「早く!」
「はいっ!」
私たちはパワーコア室への隔壁の横を通り抜け、配電盤へと辿り着く。
持ってきたバッテリーを、配電盤から伸ばしたコードへと繋ぐ。
「ファイス、任せた! 私は換気扇システムを起動させる!」
「了解!」
このままだと、突破した後にも影響が出る。
私は機関室の制御コンソールを起動して、換気扇の起動コマンドを指定する。
....ダメだ。
「ファイス急げ! 電力が落ちていてコンソールが起動できない!」
『艦長! 残存キャパシターが2%に低下、アーマーリペアラが停止しました!』
「くっ!」
直後、轟音と共に船全体が大きく揺れる。
慣性制御が切れかかっているのだろう。
「ファイス!」
「充電に時間がかかります!」
「...分かった!」
パワーコアの冷却装置が破断し、放射性物質を含んだ蒸気が吹き付ける。
その風で、マントが揺らめく。
『艦長、機関部に直撃弾――――回避できません』
「何!?」
直後。
轟音が響く。
シールドを貫通したレーザーが、機関部のワープドライブに直撃したのだ。
衝撃で、ワープコアの拘束場が歪んでいる。
「あれが切れたら、今度こそ.....」
パワーコアと違い、ワープコアが保持している放射線量は、致死レベルだ。
普段は拘束場という力場で厳重に保持されているからこそ、それを脅威に思う必要はないのだが....
「ノルス! MSDを切れ! ワープドライブをオフラインにしろっ!!」
『ダメです! こちら側からの操作を受け付けません!』
「くっ!」
私は制御コンソールから離れ、直接ワープドライブの制御盤へと向かう。
こちら側は電力が生きていて、操作が可能になっていた。
「緊急停止!」
私が緊急停止のコマンドを送信すると、ワープドライブが光を失う。
これで、力場が壊れても放射能漏れは起きないはずだ。
「ファイス!?」
「大丈夫です! 電力が回復中! 私はもう一本を取ってきます!」
「わかった!」
私は制御コンソールに戻り、機関室の制御システムを呼び出す。
そして、機関室の換気システムを起動した。
その直後の事であった。
「ぐうッ!?」
まるで横から殴り飛ばされたかのような振動が船を襲った。
『船腹部分に貫通弾! 装甲維持、完全に無効化されました!』
「ハルリペアラーとハードナーを起動しろ!」
私は周囲を確認するために、振り返って――――
それを見た。
「ファイス!」
ファイスが、横から突き出した建材に――――
脇腹を貫かれた姿を。
『敵施設に到達。 このまま吶喊します! 総員、衝撃に備え!』
「ま、待て――――」
ファイスに追い縋る暇もなく。
轟音と激しい振動。
そののちに――――
私の前で、ファイスは建材に串刺しにされた。
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