069-大戦闘(後編)
「くっ」
戦闘は有利に進んでいたが、カルは歯噛みしながら電子と遠隔のカーネルへのエネルギー供給を切った。
燃料の目減りが凄まじく、このままでは維持できないと悟ったからだ。
「目測でも結構当たるものなのか....」
砲撃が、アドアステラの真横をかすめる。
海賊艦は、ロックオンをせず直接アドアステラを狙ってきていた。
「一旦距離を取る」
『させるかよ!!』
距離を取り始めるアドアステラだったが、艦隊から分かれた数隻が、アドアステラに迫る。
機関をオーバーロードさせているのだ。
「後部副砲開け!」
アドアステラから砲撃が放たれるものの、彼らは急旋回で砲撃をかわして接近する。
次の砲撃は、先頭の艦が盾になって防ぐ。
『知ってるか、クソ野郎! 海賊はな...手段を選ばねえっ!』
アドアステラに肉薄した海賊艦は、至近距離で自爆する。
「何だと!?」
流石に予想外だったカルは、シールドが削れるのを見て焦る。
だが、彼らは次々と自爆を敢行し、アドアステラのシールドに損傷を与えていく。
勿論、アドアステラのシールドは回復する。
彼らの突撃は無駄だったのだ。
『連動ワープ!』
......無駄ではあったが、活路は開いた。
海賊の艦隊が、アドアステラの周囲にワープしたのだ。
短距離ワープを、残骸に衝突することで実現した形になる。
同時にゲートが起動し、数百の艦隊がフォービュラ側へと出現した。
「.....くっ」
逃げるしかないのか。
そうカルが判断しようとした時。
『思ったより派手に暴れてくれたな! 借りを返す番だ』
海賊艦隊の背後で、ゲートから一隻の船が飛び出す。
船は弾幕を突っ切って、アドアステラへと近づき――――無数のミサイルを放った。
そのミサイルはアドアステラ........の周囲にいた海賊艦隊で起爆し、シールドを剥がしたのちに装甲を焼いた。
『よう、カル』
「.....アルゴか!」
その時、アドアステラのシップスキャンに、その船の情報が映る。
◇ネメシス 戦術巡洋艦 オーナー:アルゴ・ヴェンタス
”修理代”のもとは、この船だったのだ。
カルはマスクの下で笑う。
散々迷惑をかけてくれた人間が、窮地に現れてくれたのだから。
「借金分は働いてもらうぞ」
『了解だ』
しかし、状況は不利のままだ。
「しかし......増援にしても、少々物足りないな?」
『安心しろ、数の差ならこれから覆るんだからよ!』
直後。
ゲートから、数十隻の艦隊が出現する。
通常の艦船と、カルの見慣れたデザインの船――――TRINITY.の船が入り混じっていた。
『TRINITY.だ! シラード伯爵家の通報により、諸君らを制圧する!』
『ふざけやがって、誰がてめえらなんかに...!』
『馬鹿野郎、逃げるぞ!』
海賊たちは一斉に逃げ始めるが、アドアステラが放った重力波によって、ワープを阻害される。
「役者は揃った...なのに逃げるなんて、実に卑怯じゃないか?」
カルは呟く。
そして、仮面の下で表情を引き締めた。
「だが、実に海賊らしい。さあ...その生涯に、自らの罪で幕引きをするといい! 行くぞ!」
カルは一通りお兄ちゃんの名言を口にし、悦に浸りながら戦闘再開を命じるのだった。
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