053-作戦解説
「主人、結局、何が目的だったのですか?」
ハイパースペース内で、ファイスがモップを片手に聞いてくる。
私は雑巾片手に答える。
「あの一撃で、私はワープ妨害のコアを潰すつもりだった。結果としてうまくいった、稚拙な作戦だったけど...」
ワープ妨害無効化装置を逃げるためではなく、攻撃するために使った。
これでもう、あの海賊達は私達を追ってこれない...というよりは、追っても捕まえることが出来ない。
「ただ、向こうについてからが問題かも...」
ジストプライム星系に到着してからが本番だ。
あの海賊達は、アドアステラが運んでいる荷物について何か知っている。
つまり、これを届けた瞬間、私たちは巨大な陰謀に巻き込まれてしまうのだろう。
「どうりで報酬がいいと思った」
まあでも、構わない。
お金があれば、お兄ちゃんのいる地球に戻る研究ができる。
ワープ技術があるんだから、世界の壁を越える技術だってあるはずだ。
「主人が征かれるのであれば、自分もどこまでもお供致します」
「そう、ありがとう」
アドアステラは、アパルアンを抜けてアルタナゲートを航行中だ。
ゼロ・セキュリティ宙域だが、インターディクションを掛けられる様子は無い。
やはり、ワープ妨害艦はあれだけだったのだろう。
「ただ、気を付けて...シトリンが言うには、ここは物凄い数のセンサーが張り巡らされているらしいから」
『はい、事実です。星系内に大量のセンサーが存在しており、一箇所に長居すると海賊に遭遇する可能性が高いです』
というわけで、アドアステラは安全運転を心掛けている。
ハイパードライブを氷で冷やすというのは、とてもいい作戦だったが...
「こうして総出で掃除する羽目になっちゃうからね」
溶けた水があちこちに溜まって、このままだと危険である。
というわけで、ケイン、ファイス、私、シトリンの四人で清掃中だ。
ノルスとアリアは緊急時に備えてブリッジ待機を命じてある。
「自分の浅慮でした」
「私もこうなると予測できなかったし、お互い様かな」
雑巾をバケツの上で絞り、また水溜まりを拭く。
「主人、それでは水分が抜けておりません。お貸し願えますか?」
「え、うん」
ファイスがやって来て、私の手から優しく雑巾を取った。
そして、バケツの上で雑巾を絞った。
「グウゥゥゥゥ...」
「凄い...」
凄まじい膂力だ。
鉄棒くらいなら軽く曲げられそうな力で絞られた雑巾は、その水分の殆どを失っていた。
「ごしゅじんさま! 綺麗になったよ!」
その時、ケインが話しかけてくる。
そちらを見ると、既にケインの方の掃除は終わっていた。
モップで排水溝に流し込むだけだが、それでも結構力がいるのに...
力持ちばっかりだ。
『ご主人様、もうすぐでワープの出口です!』
「分かった...ちょっと上に戻るね、よろしく」
私はバケツの縁に雑巾を引っ掛けると、ブリッジへと上がった。
......そのあと、ワープの揺れで転んだケインがバケツをひっくり返してやり直しになったのだが、この時の私はまだ知らなかった。
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