052-一時決着
ワープアウトしたアドアステラは、熱源をカットするサーマルステルス状態と、センサーを遮断するジャミングを同時に行い、存在を隠蔽する。
「予想外だった...」
落ち着きを取り戻してきたブリッジで、カルはコンソールに両手をつく。
まさかワープ妨害を使われるとは、と。
「対策装備はあるが...」
しかし、発動には条件がある。
だからこそカルは、それを絶好のタイミングで使いたいと考えていた。
何故ならば、
「あれを使うと、冷却に時間がかかるからな...」
対策装備にはクールダウンがあり、無闇に使うとまた妨害された時に止められてしまう。
「主人、倉庫にあった急速冷凍コアを使用すれば、冷却にかかる時間を減らせるのでは?」
「? なんだ、それは...」
その時、カルの頭にとあるアイデアが閃いた。
「...ありがとうファイス、その意見は使えないが、代わりにとても良いことを思い付いた」
カルはファイスの顔の下を撫でてやる。
ファイスは表情にこそ出さなかったが、尻尾が揺れている。
「ファイス、機関制御は俺がやる。お前は急速冷凍コアを持って機関室へ向かえ」
「はっ!」
急速冷凍コアとは、本来は起動することで周囲を急速に凍結させるものであり、アドアステラの冷凍庫に使われているものの予備であった。
『ゲートへ向けてワープに入ります』
そんな声と共に、アドアステラはワープを開始した。
敵がまともであれば、絶対に道中で妨害をかけてくる。
そんな確信が、カルにはあった。
『インターディクションを検知、インターディクションを検知。FTL次元回廊が不安定化しました、通常空間に離脱します』
「来たな、戦闘に備えろ!」
そして、アドアステラは再び通常空間に放り出された。
「取り舵一杯、SWD起動! 距離を取る!」
アドアステラは左に回答し、海賊の艦隊から距離を取る。
旗艦は、破壊された箇所がまだ直っていない。
「シトリン、熱源を調査! 重力波が出ている場所を調べろ!」
『サーマルスキャン、グラビティスキャンを開始します』
アドアステラは速度を上げ、再び艦隊と距離を取った。
「やはり、そうなるか」
アドアステラが距離を取ったと同時に、旗艦を守るように戦艦が動き、アドアステラに砲撃してくる。
シールドの出力が、先ほどとは違ってそこまで距離の離れていない砲撃によって減衰していく。
「では、行くぞ!」
カルは、対策装備...インターディクトキャンセラーを起動した。
それと同時に、CJDも。
『敵のスキャンを完了しました。データを艦長に送信します』
「良いタイミングだ」
インターディクトを無効化したアドアステラは、CJDによって海賊の艦隊の背後に回り込む。
「主砲、副砲、パルスレーザー...狙う場所はたった一点のみ、発射!!」
アドアステラの全ての砲が同時に光を放ち、海賊旗艦のシールドを貫いて、その先にあったものを直撃する。
直後、空間が大きく歪んだあと、海賊旗艦の船体は内側から爆発した。
「ファイス、やれっ!」
『ははっ!』
ファイスは冷静に、急速冷凍コアのスイッチを入れて機関室から逃げ出す。
直後、機関室を極寒の冷気が埋め尽くし、過熱状態だったハイパードライブすらも氷で埋め尽くした。
『ハイパードライブ、安定化しました』
「ハイパージャンプだ!」
アドアステラはゲート方面に素早く回頭し、そのまま海賊の艦隊を置き去りにして飛び去った。
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