270-王都へ
こうして、オストプライムを旅立つ日がやってきた。
目的地は今のところ二つ。
オルトス王国の首都オルトスプライムを目指すか、ファイスとラビの出身星系であるクローリア星系を目指すか。
その選択は、アリアに対する問いにかかっている。
「アリア、やりたいことは見つかった?」
「はい! 私は...生物学者になりたいです」
意外な答えに、私は珍しく意表を突かれた。
でも、その理由は何となく察していた。
「アレブさんを初めて見た時は、すごく怖かったんです。でも、力任せに暴れたり、脅したりなんかしなかったんです。だから、私は思ったんです、ご主人様みたいに優しい人をもっと作りたいって」
「私はそんなに優しくないよ」
「生物についてもっと知れば、私も出来ることがあると思ったんです。人間と、他種族の差、それを埋められたら、偏見や嫉妬で起きる差別をなくせるって、思ったんです」
「なるほど...いいと思うよ」
「ありがとうございます!」
なら、向かう先はもう決まったようなものだ。
私は顔を上げ、シトリンに命じる。
「航路設定、バオタ星系を経由して王都オルトスプライムに向かう」
『了解です』
ゲート二つを通れば王都だ。
不思議そうな顔をしているアリアに、私は説明する。
「オルトスプライムには王立学院があるんだ、そこなら宇宙中の知識が集まる図書館を利用できる。勉強するなら、丁度いいんじゃない? もちろん、他のみんなも」
ファイスは戦闘技術と技術者教育を。
ケインは学校教育を。
ノルスは機関士としての教育を。
ソフは家庭科と数学教育を。
アリアは生物学を。
それぞれ受けることが出来る。
「ちょっと高いんだけど、短期講習ってのもあるんだ」
無理をすれば最高効率で学べるカリキュラムが用意されていて、無理をしなくても最低限学べるようになっている。
流石に王立だけあって、大海賊団一つ分の賞金くらいの額はするけどね。
今の私なら別に払えないわけでもない。
「ね、ね、私は!?」
「ラビは...もうちょっと慎みを学んだら?」
「辛辣っ...!」
でも、そうだな...
「ラビってさ、いきなり一人になったとして何をやりたい?」
「ううーん...やっぱり傭兵かなっ?」
「じゃあ、傭兵の資格を何か取ってみたら?」
私の提案に頷くラビ。
その時、補給計画を作っていたソフが私に尋ねてくる。
「じゃあ、ご主人様は何を学ぶんですか?」
「私は王都に用事があるからね、勉強はついでだよ」
私は手をひらひらと振って、自分の携帯端末をブリッジの上部モニターに投影する。
そこには、
「王宮からの招待状!? それに同行者なしで!?」
ラビが絶叫する。
どうもクロス関連で何かあるらしくて、先日招待状が来た。
ご丁寧に、私一人を指名している。
「危なくはないから、みんなはそれぞれで過ごして欲しい」
多分、長くなるだろうから。
私がそう言い切ると、ラビも頷いた。
「お土産楽しみにしてるね」
「まだ着いてすらいないんだけどね」
出航の時だ。
アドアステラは現在、オルトスプライムの第六ステーションの周囲に漂っている。先の戦いでの事後処理に疲れ果てて、注意をしてくる警備艦隊も居ない。
かといって、無法者たちも今は鳴りを潜めている。
権力闘争とお零れ回収に忙しかったため、オスト星系は今日が一番平和だって言えると思う。
オストプライムの地下は監査の対象になるけど、全てを調べ終わる頃には宇宙に逃げられていると思う。
何も変わらない、ちょっと変わるだけ。
犯罪は起きるし、警察もTRINITY.もそれを捜査して捕まえる。
明日からは、通常営業だ。
「私たちも通常営業だね、ソフ! 補給状況!」
「食料、日用品、調味料をそれぞれ1ヶ月分、イレギュラー分のもう1ヶ月分確保してあります! 弾薬・燃料類も同じだけ揃ってます!」
「ケイン!」
「ドローン揃ってまーす!」
「ファイス!」
「各システム異常なし、最終メンテナンスは一時間前です」
「ラビ?」
「戦闘機は問題ないよ」
「アリア」
「レーダー問題ありません!」
「ノルス」
「機関に異常なし、出力80〜90%で安定」
「シトリン」
『各システム:オールグリーン』
じゃあ、問題ないね。
私は航路を辿り、HUDの表示を船の向きに合わせる。
「ワープ開始!」
また、新たな旅路が始まる。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




