267-TRINITY.介入
同時刻。
ステーションの外周部では、三つ巴の壮絶な戦いが巻き起こっていた。
ステーションから発進した主力艦一隻.......の残骸を中心とした大艦隊と、レイヴが率いるガヴェイン艦隊、そしてアドアステラである。
『アドアステラを狙え! 全艦進撃!!』
アドアステラを狙い、発砲しながら前進する艦隊は、アドアステラの長距離砲撃によって数隻をまとめて失っていく。
それを横から撃つのは、ガヴェイン艦隊である。
『いいぞっ、入れ食い状態だ!』
ガヴェイン側の方が数は少ないが、アドアステラから飛んでいるドローンが追随しているために全く問題になっていない。
アドアステラの長距離砲撃が先ほど主力艦を沈めたばかりだというのに、ラーハヴェク側の勢いは全く衰えない。
「これは.....薬物でもキメてるのかな?」
ラビはブリッジでつぶやく。
まともな回避機動とは思えない軌道で艦隊が突っ込んでくるためである。
「まったく、困るなぁ」
そう言いつつ、ラビの手は止まっていない。
アドアステラを操船しつつ、砲撃計算の上で纏めて串刺しにしているからである。
かつて天才と呼ばれた彼女の操船技術は、アドアステラを以てしても変化することがない。
「みんなを収容しないといけないんだから――――消えてね!」
ラビがコンソールに表示された疑似的なトグルをつまんで倒せば、アドアステラの両翼に取り付けられた兵器が起動する。
アドアステラのパワーコアから出た余剰なエネルギーを溜め込んだ、最強の一撃。
クリムゾンウェイ――――
「やっぱりこれ、突貫工事だよ」
なのだが、右舷の砲身が発射の瞬間に崩壊し、左舷は正常に発射されて進路上の艦隊を纏めて吹き飛ばした。
紅蓮の道と名付けられただけあり、それは一度に艦隊の後方にまで到達する。
旗艦がそれによって爆沈し、ラーハヴェクは統制を失った。
砲身を分離し、身軽になったアドアステラは、再編成中のラーハヴェク艦隊に斬り込む。
「近接装填....って、私しかいないけど!」
近接用の集光クリスタルに換装したアドアステラは、まるで戦場を駆ける騎士のように、近寄っては撃ち、近寄っては撃ちといった勢いでラーハヴェクの艦隊に損害を与えていく。
「凄い、凄いんだけど.......ますます惨めになるかも」
アドアステラの力を知れば知るほど、ラビはかつての船に思いを馳せる。
勿論、フリゲートと重巡洋艦では火力が違うのは間違いないが。
『こちらカル、敵の首領を殺した。今からアドアステラに戻る』
「了解、こっちもカタがつくよ!」
ラビがそう言おうとしたとき。
ローカル通信に声が響く。
『現宙域にいる全ての不法戦闘者に告ぐ! 我々はTRINITY.強制捜査艦隊である!』
ワープアウトしたのは二千隻の大艦隊。
その中央にはTRINITY.の強制捜査揚陸主力艦『ジルドレン』が見えていた。
対要塞用の超巨大な強襲揚陸艦である。
『やべぇ! お前ら逃げるぞ!』
レイヴは慌てて撤退指示を出し、そのまま艦隊をワープアウトさせる。
逃げていくガヴェイン艦隊を追わずに、TRINITY.は再編成中のラーハヴェク艦隊に迫る。
『お前ら! 逃げるわけには行かねえぞ! 殺せ!』
『コロセエエエエエエエエエエ!!!』
ラビの予想通り、彼等の雑兵は薬物投与により極度の興奮状態にあり、TRINITY.艦隊に猛然と向かっていく。
『諸君。我々は犯罪者の摘発において、ある誓いを立てている。それを未だ覚えているのなら、宣告し執行せよ』
この場に出てきているロンドベルの放送と共に、全ての艦の艦長から通信が返ってくる。
『撃ってくるものに、法の庇護と己の慈悲が向くことは無し。射撃開始!!』
TRINITY.の武装である三点収束レーザーが放たれ、脆弱な海賊艦隊を次々と撃沈していく。
アドアステラは射線上から抜け出し、ドローンを回収するとステーション側へと向かうのだった。
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