266-ラーハヴェク壊滅
同時刻、競売場――――。
そこでは、カルともう一人の男が銃を向け合っていた。
周囲には死体が散乱し、左右に両断される形で破壊された檻が転がっていた。
「やってくれたなッ!! カル・クロカワァアア!!」
「どうも、カルだ。やってしまったが、大事な仲間でも混ざってたか?」
カルに銃を向けるその男は、名をドグヴィンと言った。
希少種族「シドレー」特有の牡牛のような角を持つ、体格のいい男だ。
彼こそがラーハヴェクの生ける伝説、ボスであった。
「お前、ここまでやっておいて無事に帰れると思っているのか?」
「そっちこそ、俺を眼前にして生きて帰れると思ってるのか?」
ドグヴィンは仲間を殺され怒っていたが、カルはまだ二人が救出されたことを知らない。
そのため、少しでも情報を引き出すために相対しているのだ。
「てめぇ、死ぬぞ?」
「やれるものならやってみろ、今ここでな!」
「殺す!」
ドグヴィンが発砲するが、カルが躱すほうが早い。
スローモーションの世界の中で、カルは撃ってから回避に移るドグヴィンの、銃を持つ右手を正確に狙撃した。
「がっ?! てめぇ、どういう腕してやがる...」
だが、レーザー弾はドグヴィンの手から銃を吹き飛ばしただけに留まる。
それでもドグヴィンは、角を活かした突進でカルに迫った。
「そんなもの――――あまりに脆いッ!!」
カルは怒りに任せてドグヴィンの突進を両手で受け止め、そのまま角を掴んで地面に叩きつけた。
轟音と共に舞台が陥没し、ドグヴィンは血を吐いた。
「......何て力だ....お前も希少種族か?」
「ただの人間だ」
「嘘吐けェ!」
手を突いて飛び上がったドグヴィンは、その両腕でカルを抑えにかかった。
だが。
カルの腕が、ドグヴィンの腕をぬるりと流した。
勢いを保ったまま、近くの柱に突っ込むドグヴィン。
両者の力の差は歴然であった。
だが彼にも、勝機はあった。
まだ生きている部下が、丁度カルの背後にいるのだ。
「やれ!」
「っと!」
ファスト・ドロウの如く早撃ち。
察知など出来ない筈のその一撃を、カルは後方にシールドを展開することで防ぎ、即座に上方へ跳躍。
空中で一回転してワイヤーフックを抜き、天井に放つ。
そして、もう一方の手にあるニケで、ドグヴィンの部下にとどめを刺した。
ワイヤーフックによって巻き上げられたカルを、ドグヴィンは見上げる。
「お前....ほんとに人間かっ!?」
「人間だ」
「クソッ......こんな奴が居るとは......ヤキが回ったかよ!」
地面に降り立ったカルは、さてこの後どうしようかと考える。
四肢を潰して尋問でもしようかと考えていた時。
『カル! 二人を保護したよ、どっちも無事!』
「ああ、ありがとう」
次の瞬間、殺気を全く放たない状態から一瞬でカルセールを抜いたカルは、六発全てを一発に注ぐ一撃を放った。
「な――――」
回避に移ろうとしたドグヴィンは、ステーションの外壁を吹き飛ばすにまで至ったカルセールの射撃によって、ただ一瞬で消し飛んだ。
ステーションの内部と外部で気圧差が生じ、カルはステーションの外へと放り出された。
「ファイス! 保護は終わったか!?」
『終わりました、下層は既にガヴェインのチームが制圧しているようですので、ケイン殿とノルス殿をこちらに呼び戻しています』
「了解」
それだけ言うとカルは、スラスターとワイヤーフックを使ってステーションの外壁へと戻るのであった。
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