261-突入
翌日。
光学迷彩により姿を隠したアドアステラは、レーダースキャンを掻い潜ってステーションに接近した。
『ブラボー、これよりステーション外壁に接近する』
『バンディット、了解』
アドアステラから射出されたオクティアンは、同じく小型化されたクローキング・デバイスで遮蔽。
スラスター出力だけでステーションの外壁に張り付き、そこで外壁の操作盤を作業用アームで強引に引きはがした。
「パラライシスリンク.....起動」
オクティアンの全身に張り巡らされたインジケーターが青緑色に発光する。
それと同時に、ノルスの意識はステーションの管理システムに侵入。
毒が全身に回り麻痺させるように、瞬時にステーションの管理システムを麻痺させた。
だが、これだけでは不足である。
「出来る....筈だ」
ノルスは、自分の全ての意識をパラライシスリンクのサイコリンカーに集中させる。
生体細胞のように複雑なシステムを、高速言語による干渉で書き換えを行っていく。
そして、Ve’zという発達した技術を利用したパラライシスリンクは、シトリンが予測した2分を上回り、1分16秒という速さでステーションの管理システムを完全に掌握する。
『ブラボー、権限移譲を開始します』
『バンディット、受諾。では、移乗を開始する』
アドアステラは遮蔽したままステーションに横付けし、フル武装のカルとファイスを降ろした。
『ステーションに緊急事態警報を発令、LEVEL10、味方信号のない対象を無許可で射殺および制圧せよ』
シトリンが指令を出す。
それによって、鎮圧ボットが動き出す。
対海賊用の白兵戦装備が今、正しい形で運用されようとしているのだ。
「おい! どうなってる!?」
「分からない、こっち側からの操作を一切受け付けない!」
「権限が全部unknownに書き換えられてるぞ!」
ステーションは一斉に大混乱に陥る。
「クソッ、何だこいつら!」
「鎮圧用ボットですよ、対海賊用の....ぎゃあっ!」
「おい! クソッ......催涙弾か! ぐっ!」
かろうじて動ける人員も、鎮圧ボットによって射殺されるか、無力化されていく。
そして。
「六番デッキに侵入者!」
オクティアンの肩に相乗りしたカルとファイス、そしてケインが、ステーション内に侵入した。
隔壁をオクティアンの衝撃砲で吹き飛ばし、防備の薄いデッキから海賊を殲滅しに突撃したのである。
「おい! あの仮面!」
「皆殺しのカルだ!」
「あいつを殺せば....!」
デッキにいた海賊たちは一斉にレーザーガンを取り出すものの......
「くそっ、撃てないだと!?」
「ぐわあっ!!」
”白兵戦最強”のカルとファイスには、レーザーガンなど無粋なものは必要がない。
カルの拳はカーボンファイバー製の軽鎧を貫通して海賊の一人を昏倒させ、ファイスは瞬時に三人を蹴りだけで戦闘不能に陥らせた。
二人がいなくなったことで安全に攻撃が出来るようになったオクティアンは、衝撃波砲で非武装の人間を纏めて無力化する。
「次は僕の番!」
ケインが右腕を構える。
電撃を放つ装備は強化され、より広範囲かつ対電流装備を貫通出来るようになっていた。
バンッという音と共に、射線上にいた海賊たちは倒れ、全身の穴から白煙を漂わせた。
「オラオラオラーッ! カルさま団のお通りだーっ! 遠きものは音にも聞けー!」
「近く場寄って目にも見よ!」
ケインの台詞をノルスが引き継ぐ。
両腕に搭載された、カルの持っているものの原型であるシールド展開装置でレーザー弾を防ぎ、オクティアンの中でノルスは不敵に笑う。
「その程度ですか?」
オクティアンは右腕を構え、直後一番手前にいた男の動きが変わる。
ぎこちなく銃を構え、仲間を撃ったのである。
パラライシスリンクの効果は生物の精神にも及ぶ。
それを実証した瞬間であった。
「効率が悪いですね、大型の生物であればあるいは....」
ノルスは呟くと、すでに先行してしまった三人を追って速度を上げるのだった。
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