258-裏の顔
さて。
アドアステラの改修を開始した私達だったけれど。
「誰も来ないんじゃなかったのか?」
「見るだけだ、減るもんじゃないのだろう」
レイヴが遊びに来ていた。
彼女に対応しつつ、私は改装中のアドアステラを俯瞰する。
元々四連装砲だったアドアステラの主砲は、艦内工場で新たに製造した36センチ三連装砲に置き換えられている。
これでマルチロック兵装としての役割は失われたけど、火力を前面に集中する際の突破力は生まれた。
「ほぉ~う、いいものだな、船の改装風景というのは」
「そうか?」
「なかなかお目に掛かれるものではない、ウチのメンテナンス担当はシャイでな」
アドアステラの装甲部分は、今回のコンセプトに応じて迷彩デザインが施されている。
レイヴは移動して、艦底部を見る。
「見て面白いものでもないだろう」
「いいや、面白い。見たことないデザインだからな、どこの国の企業が作ったのか、非常に興味がある」
「教えてやってもいいが、恐らくは知らないだろう」
「言ってみろ、後で調べてやる」
「星間国家ジェンテル、スプリーグ軍事開発企業の製品だ」
もっとも、これはメキステリーグというPvPイベントの報酬の限定生産品だけどね。
兄が譲り受けたこれのほかに、ゲーム内に後4隻存在しているはずだ。
「知らないな.....フフフ、謎多き男というやつか」
「いいのか? 男で通してるんだろう。部下に変な誤解をされかねないぞ」
このヒト、会って数日なのにめちゃくちゃ距離が近いんだよね。
結構ロマンチストだったり、キャラがブレブレな人だ。
「そういう噂を流されたとして、それは俺が部下共にモテているという証拠でしかない」
「こっちは大迷惑だがな」
私は作業用エレベーターで甲板に上がる。
ここは重力が弱いから、普通にジャンプしても届くけどね。
一応改装中で電気系統とかがむき出しだし、安全を取る事にした。
「しかし......この船はとてもフレキシブルなようだな」
「そうか?」
「コンポーネントが整然としていて拡張性があるように思えるな」
そうかも?
SNOの艦船装備で艦船をある程度拡張できたから、現実化に伴ってそれが反映されたのかもしれない。
「海賊の船の改装プランについてはよく聞かされるが、本来の用途から大きく外れた用途に改造することは難しいと聞いている」
「そうなのか」
「この整然とした回路構成は、電気屋どもを唸らせるだろうよ」
「ふん、そうか」
アドアステラの改装はあと数日で終了する。
それが終われば後は試験だけ。
まあ、実戦でテストになるだろうけど。
「必要な物資はあるか? 手配するが」
「ああ、後でリストにまとめて提出する」
「頼りにしているぞ」
「ああ、勿論だ」
私とレイヴは、互いに手を握り合うのだった。
その時、ブリッジ横の扉が開いてラビが現れた。
「カル~、アレの最終調整が終わったよ」
「もう!? 何でもできるね、ラビ....」
「カルの資料があれば何でもできるよ、凄く良くまとまってるもの」
ラビは私を抱きしめて、レイヴの方に流し目をしていた。
もしかして妬いてる?
いや、ないか.....ううん、ありそう。
「ふふ~ん?」
「くだらないな、カルは下品な女を好くような男ではないだろう」
「だってさ、カル?」
「はぁ.....」
ただでさえ心中穏やかじゃないのに、なんでこんな争いに巻き込まれなければいけないのか。
私はマスクの中でため息を吐いた。
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