256-収監
その頃。
ソフは誰かに殴られて目を覚ました。
「っ!?」
目を覚ましたところで、目の前に見知らぬ大男がいたために一瞬でその意識を覚醒させた。
周囲を見渡すと、自分が狭い部屋にいること、隣にアリアが倒れていることを確認し、目の前の大男に向き直った。
「やっと起きたか。ちっ、なんで俺がガキのお守りなんか」
「こ.....ここはどこですかっ!?」
ホテルが襲撃された後の記憶がないソフは、状況説明を目の前の男に求めた。
「お前....俺が怖くないのか?」
「怖いですけど....ここはどこか教えてくれませんか?」
ソフが続きを口にしようとしたとき。
大男は一歩退き、ソフからは見えない壁面のパネルを操作した。
そして、扉が閉まってソフと大男を隔離した。
「何を....するんですか!?」
「教えてやるよ、お前らは誘拐されて、人質になったんだ。だから俺はお前の敵で、俺はお前があまりに起きないんで叩き起こしたんだ、分かったか?」
「.......っ」
あまりに情報量の多い事実。
けれどソフはそれを、賢い頭脳で受け止めた。
「私たちは人質なんですよね?」
「ああ。言っておくが逃げようなんて思うなよ、ここは独房で、俺はお前らの専属の獄卒だ。ここは上級独房で周囲20kmは橋を架けないと入れないからな、逃げてもオートタレットに撃たれるだけだ、痛いのは嫌だろう?」
ソフはそれを聞いて、考える。
何故この人物はこんなに丁寧に教えてくれるのかと。
「.....っと、喋りすぎたな。まあ逃げるなんて考えるなよ」
「...はい」
「ついでにそっちのガキも起こしとけ、飯の時間が近い」
「....はい」
それだけ言うと、大男は扉に背を任せる形で座った。
ソフはアリアの元に戻って、彼女を揺り起こす。
「ん....」
「アリアさん、起きてください、起きて....」
「...おはよう、ソフ」
「よかった.....」
ソフは胸を撫で下ろす。
アリアが無事でよかったといった様子だ。
「....こ、ここは....?」
「私たち、敵に捕まったみたいです」
「....ひっ!」
その一言だけで、最悪な未来を想像したのかアリアは蹲る。
「だ.....大丈夫ですよ、ご主人様なら絶対、海賊なんて倒して助けてくれます」
「.....」
アリアにそう言い聞かせていたソフだったが、唐突に大男が発言する。
「カルってやつは強いのか? 俺はあんまり詳しくなくてな」
「....あなたよりはずっと強いはずです」
「そりゃあいい、ダラト人よりも強い奴がいるってのが広まったなら、俺ももっと暮らしやすいからな」
ソフには大男の言葉の意味はよく分からなかった。
けれども、
「.....悲しいんですか?」
「んな訳ねえだろ。能天気なお前が羨ましいぜ」
「お前じゃなくて、ソフです!」
「ソフちゃんね、俺はアレブリュート、アレブとでも呼びな」
大男は振り向かずにそう言った。
その時、壁際に設置されたスピーカーからアラームが鳴った。
「「ひゃっ!?」」
「お、メシの時間だな。安心しろよ、飯くらいは出る、なんたってお前らは人質なんだからな」
恐る恐る、壁に近寄って開けるソフ。
そこには、紙に包まれたサンドウィッチ二つが、それぞれ二人分入っていた。
「アリアさん....今は食べましょう」
「.....うん」
ソフはこの状況下でも折れなかった。
アリアに対しても、アレブに対しても容赦する気はない。
何故なら。
「(私は主計係! どんな時でも冷静に!)」
彼女は心の内でそう宣言し、サンドウィッチにかぶりついた。
その音を聞きながら、アレブは面倒くさそうに欠伸をした。
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