253-カナードのお中元
三日後。
出港準備が整ったので、オストプライムを一度離れる事にする。
「チェックリスト確認」
『食糧・調達不可物品の満載を確認。燃料類オールグリーン。弾薬類フルです』
「機体チェック完了」
「機関に問題ありません」
『いつでも出撃できるよ!』
「分かった、機関始動!」
アドアステラのブリッジ。
ラビがいないのもそうだけど、アリアとソフがいないのが寂しい。
特にソフの席は私の隣だしね。
「シトリン、航路設定。ラグランジュポイントD-2に一度通常航行で移動する」
『了解....ですが、そこには何も.....』
「いいから」
「機関始動完了、メインスラスター点火」
「サブワープドライブにエネルギー注入」
シトリンがガントリーロックを遠隔解除し、アドアステラの対地浮遊システムが作動する。
地上の重力からこの船の内部の管制制御が独立したことで、私たちは少しの振動を体感する。
「こちらアドアステラ! 軌道上に上がりたい! ルートを指定してくれ」
『こちら自動管制塔です、しばらくお待ちください。ルートをそちらの航行システムにトレースします』
艦船同士が衝突事故を起こさないように、オストプライムのような大型の惑星には自動管制塔がある。
行きも使った奴だ。
すぐに取るべき航路がリンクされる。
有効時間は5分以内。
「出航する!」
舵を取るのは私。
アドアステラは前方向に加速し、そのまま船首を上げることで上昇する。
このままだと航路から外れるため、私はアドアステラを旋回させ、速度を上げる。
惑星の重力から逃れるだけの加速があれば十分だ。
「主人、どこへ行かれるのですか?」
「ちょっとね、会いたい人が居るんだよ」
「彼」はここに来ている。
協力を求めたら、不気味なほど簡単に頷いてくれたのだ。
「彼」は私に何の見返りを期待しているのだろうか?
「ラグランジュポイントD-2に接近する」
大気圏を抜け、軌道上に飛び出したアドアステラは、衛星軌道上にある一点に向けてSWDを起動して接近する。
ワープするよりは遅いが、伝言役は「ワープではなく通常航行で接近してください」とだけ言っていた。
「さて.....来たけど......」
指定の地点の2000m以内に接近したが、何もいない。
近くに何かあるのかと思ったけれど、そうではなかった。
待ってみる事にするかと思ったのだけど......
『D-2付近に出現する物体あり』
「なっ!? ズームしろ!」
映像を拡大すると、空間が僅かに歪んでいた。
そこから、まるでテクスチャーが剥がれ落ちるように白い艦体が出現したのだ。
「遮蔽.....装置......!」
兄のやっていたゲームに出てきたものだ。
艦体の表面を周囲に同化させる光学迷彩に、スキャン波を素通りさせる技術。
『やぁ』
「カナード!」
『悪いけど、ここに居られる時間は短いんだ。僕は指名手配だからねぇ....それとも、ここで墜としてみるかい?』
彼はそう言うけれど、間違いなく未知の技術で回避されるだろう。
だからここは、黙って従う。
「全額前払いだ、例の技術を買いたい」
『ああ、コンテナを射出するから回収してくれ。おまけも付けておいたからね...おまけは海賊には渡すな、パワーバランスが崩れるからねぇ』
「分かった」
『じゃあね』
白い艦はコンテナを射出すると、ワープして消え去った。
私たちはコンテナを回収し、中のカナード製技術データを回収する。
「これは....何に使うのですか?」
「手土産だよ、これからマフィアに会いに行くんだからね」
「なっ.....!?」
この件は私達だけではどうにもならない。
けれど、事を大きくは出来ない。
情報が要る。
「たまには、このネームバリューを生かさなきゃ」
私は拳を握り締め、堂々と宣言した。
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