250-大激動の時
「...........」
翌日。
私は一睡もできずに目覚めた。
寝巻から普段着に着替え、アドアステラのブリッジに上がる。
そこでは、疲れ切った様子の皆がいた。
「........主人」
「....何?」
「私は、あなた様の誓いを果たせませんでした、この末は、この命で――――」
「やめてよ! 情けないッ!」
私はファイスに失望して、吐き捨てた。
失って初めて、こんなに浅ましい忠誠だったのかと、意識してしまう。
「どこで学んだか知らないけど、騎士物語でも何でもないんだから、自死は美徳でも何でもない。それよりも、これからどうするか聞くべきだと思うけど?」
「も、申し訳ございません.....」
「ま、まあまあ、カル.....」
「何?」
私は、少しずつ近寄ってくるラビを睨み付けた。
睨み付けて、すぐに冷静になった。
息を吐いて、次善策を考える。
「落ち着いた?」
「うん.....とにかく、地下都市に逃げ込まれた以上、私達だけじゃ何もできない、TRINITY.を頼ってみようか」
私は勲章授与者だし、プラチナ傭兵の一人。
その仲間が巻き込まれたとあれば、TRINITY.も動いてくれるかもしれない。
だけど、それでも完全じゃない。
TRINITY.が動くと、事が大きくなる。
私達を確実に抹殺できなくなれば、あの二人を生かしておく価値もなくなる。
だからこそ。
「ねぇ....ラビ」
「?」
「裏社会に仲間入り――――ってのも、悪くないんじゃないか?」
「まさか!」
「ああ、そうする」
この国が一枚岩ではないように、この国の闇もまた一枚岩ではない。
現行の大きな流れが私たちを狙うのなら、傍流は私達という勝ち馬に乗りたがるはずだ。
「しかし、御主人.....それは、あまりに危険な道では?」
「危険とも言い切れませんよ、ファイス」
その時。
私たちの会話に、今まで参加していなかったノルスが入ってきた。
「ノルス、何か考えがあるの?」
「いえ、特には――――しかしながら、メリットを提示すれば、彼らは本来知られているイメージよりも誠実に動くはずです。....そのメリットが大きくなれば、なるほど」
「それを裏切るやつが居るから裏社会なんだけどね」
ラビは反対側か。
なら、最後の一人に聞くとしよう。
「ケイン」
「....はい!」
「あなたはどうする? 私と一緒に、裏社会の抗争に首を突っ込む気はある?」
「.......それで、ソフとアリアがとりもどせるんだったら.....やるしかないって、思う!」
「よし」
ケイン、私、ノルスが賛成。
ラビとファイスが反対。
多数決は、私達が有利。
それなら――――私はファイス。
あなたのその浅ましい忠義を、利用させてもらう。
「ファイス。あなたはここで死ぬと私に言ったよね」
「はっ」
「だったら、死ぬ気で守って見せろ。私の前に常に立ちはだかれ――――いいね?」
「この命に代えても、お守りします!」
これで、反対派はラビ一人。
私は、ラビの目を正面から見た。
「........ごめん、ラビ。後顧の憂いも断っておきたいし、あの二人を取り返せないなら私は一生後悔する」
「......忘れないで、ルカ。私はあなたが一番大事。だから――――もし本当に危ない時は、何を捨ててもあなた自身を守って」
ラビが私をカルと呼ばず、前に名乗ったルカと呼んだ。
ふざけていない。
おどけていない。
「......分かったよ」
私は頷く。
一瞬で考えた結果の考えだ。
あらゆる可能性を鑑みて私は、何があろうと私自身を守ると決めた。
「始めよう。大掃除を」
「はっ」
「はい!」
「うん!」
「.....分かった」
私達は、大仕事に手を付ける事になった。
それがどんな結末だろうと、初めて私が失いたくないと思ったものを守るために。
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