249-手を離れた光
中型艦は、川を越えフードコートに侵入する。
それを追うカルは、ロガーヘッドに捕まったまま低空を超高速で飛行する。
「っ.....どれだけ速度を!」
カルは呟く。
中型艦は改造型のようで、スラスターを通常見かけるタイプから四つ増設しているようであった。
その速度は、ロガーヘッドにも勝るとも劣らない。
少なくとも、カルに合わせて飛ぶロガーヘッドの速度では、中型艦に追いつけないのだ。
「だったら!」
『マスター、何を!?』
「これで行く! 速度を上げて!」
『了解!』
カルはロガーヘッドの下部にワイヤーフックを固定し、飛び降りた。
ロガーヘッドはカル一人であれば重武装だろうと充分支えられる。
速度を上げたロガーヘッドは、そのまま中型艦へと迫り――――
『ビルから射撃されています』
「分かってる!」
カルはワイヤーを一気に巻き上げて、ロガーヘッドのシールド範囲内に逃れる。
射撃を避けたうえで、カルセールの充填を行い、かつ一発撃つ。
ビルの一室を融解させた一撃は、そのまま周囲のガラスを叩き割り、襲撃者を反撃不能に追い込む。
「足を落とせ!」
『はっ!』
ロガーヘッドが射撃し、中型艦の左、上から二番目の推進器を破壊する。
中型艦はそのまま、ビル群へと入り込んでいく。
カルはその後を追う。
その上を、悠々とアドアステラが通過していく。
ECM兵器を投射している都合上、射線を遮られると拙いのだ。
「シトリン、無理するな! フレスベルグを3機出せ!」
『了解!』
アドアステラが戦闘ドローンを格納し、代わりにフレスベルグと呼ばれたECMドローンを三機射出し、都市に影響が及ばない範囲まで上昇する。
フレスベルグは代わりにECM攻撃を行う。
『対空支援を行います』
「頼む」
カルを追ってきていた小型エアロバイクに向かって、アドアステラのパルスレーザー砲の雨が容赦なく降り注ぐ。
船体下部に搭載されているもののため、その密度はあまり高くないものの、確実な妨害に放っていた。
「シトリン、速度を上げろ! このまま行く!」
『了解!』
四方八方から迫る敵を、カルはシールドを巧みに操り防御、ニケとカルセールの巧みな防御と攻撃のスイッチによって撃破していた。
ロガーヘッドが速度を上げ、中型艦に迫る。
次の瞬間、中型艦は唐突に降下してビルの真下をすり抜け、レーザー砲でビルを破壊してカルを妨害した。
「突っ切るッ!!」
崩壊するビルの残骸の中を突っ切ったカルだったが、中型艦は強引に舵を切り、左のビルに半ば船体をぶつけるようにして速度を落とし、ビルの切れ間を強引に押し通る。
ロガーヘッドの速度が出過ぎていたために、カルは急減速した中型艦に迫る事が出来ない。
「ッチ、仕方ない! シトリン、薙ぎ払え!」
『了解!』
ビルの先は、タンクの並ぶエリアだった。
アドアステラは、その手前に向けて砲撃し、進路を妨害しようとした。
だが、二人はこの都市の構造を完全に見誤っていた。
融け落ちる地面の先からは、地下の構造が完全に露出していた。
「しまった!」
『どうされますか、追いますか!?』
「いや......もう無理だ」
中型艦は強引に通過したものの、地下都市の自動修復システムのようなものだろうか、金属の壁が開いた穴を塞ぎ、カルとシトリンは二人の足跡を完全に見失ってしまったのであった。
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