235-道の駅(宇宙版)
私達が次に向かった先は、食料品区画だった。
食べ物の買い物は嵩張るが、ハンガーベイまで搬送するシステムを使えば問題ない。
普通のステーションと違って少しばかりお金がかかるけれど、悪くない金額設定なのでこのまま行く。
「せっかくだから、皆の故郷の食料品でも探してみようか」
「.....故郷と言われても、記憶がないんじゃ思い出の味にはならないような?」
「ラビはそういう考えか」
「ううん、悪くないと思うよ。私も故郷の食材を探してみるよ」
食べなれたものは、人の深い魂に宿る。
故郷を知るラビは一人だけ離脱し、私達は食品売り場を練り歩く。
ケインとアリアの故郷は不明だが、ノルスとファイスはどこから来たかは明白だ。
「あった」
「クローリア特集......」
クローリア星はデンバー星系の第二惑星の別名である。
惑星の環境は温暖だが、過去に起きた隕石衝突の名残で動植物関連が貧弱であり、
「あんまり美味しそうじゃないね....」
「可食面積とコストが釣り合っていません...」
縮んだ、やたら赤い肉や、何かの植物の茎が結構な額で売られていた。
ちゃんとパッケージされているので、とりあえず携帯端末を通して購入しておく。
「後で食べてみよう」
「....ええ」
興味はそそられるのか、ノルスは歯切れ悪く頷いた。
私も別に食べたくはないけれど、ノルス一人に犠牲になってもらうのもおかしな話だ。
そうだ、ラビも誘おう。
被害者は多い方がいい。
「あ、あったよ」
「.....これが、私の故郷の...」
ファイスが生まれたロートラはドイバティン星系の第四惑星である。
クローリアとは異なり、気候の厳しさとは裏腹に動植物は豊富、争いが絶えないのは水資源が少ないためだとか。
よく食べられている果物系を人数分購入、これだけでフリゲート艦の小破修理費くらいだけど、更に肉類も追加購入。
「後が楽しみだな」
「....その、良かったのですか?」
「俺のポケットマネーだ、文句はあるか?」
「.......いいえ」
この間読んだ書籍で、「余った金は運用するでもなければ、家族のために使うべきだ」という一文を見かけて、成程確かにそれはそうだと思ったので、実践する事にした。
仲間たちに分配した後は、ほとんど減らない残高を清算するときだろう。
「カル! 見て見て! あったよ、私の故郷のやつ!」
その時。
遠くから駆けてきたラビが、飛び掛かってきた。
慌てて避ける私。
ラビは転ぶ前に商品を上に投げ、即座に手を突いて姿勢を回復、商品をもう一方の手で受け止めた。
凄い身体能力だ。
「そこは抱きとめてくれてもいいんじゃない?」
「で、何だそれは」
私はぷりぷり怒るラビを無視して、持ってきたものに目を向けた。
それは、丸太のようなもので、到底食材には見えない。
「あっこれ? 故郷の植物でね、蒸すと柔らかくなって、中の部分が柔らかくなるんだ、カルにお勧めするならこれかなと思ったんだけど」
「......注文するから、戻してこい」
「了解!」
調べると、直ぐにヒットする。
複数の種類があるようだが、ラビが今持ってきたやつ以外は基本的に現地人の消化器官でしか消化できないようで、腹を壊す危険性があるらしい。
「ラビ.....」
雑なようでいて、そこらへんはしっかりしている。
私が男だったら....いや、そんな仮定は無意味だ。
私が私であり続ける限り、異性としてラビとくっつくことはない。
私が身を捧げるべきだと信じる相手は、お兄ちゃんしかいないのだから。
「次はソフの故郷のものを見に行こう」
「えっ....私、ですか?」
「ああ」
このままここにいるとラビが戻ってきて面倒だしね。
私達は角を曲がり、次の目的地を目指すのだった。
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