232-オストプライム・ステーション
「こちら、今回の買い取り額になります」
「ありがとうございます」
私は買い取り額を受け取る。
データは既にTRINITY.に売り渡していて、多額の報酬を受け取っている。
ここにきて大暴れしているのは、オストプライム周辺はとんでもない数の海賊の拠点があるからだ。
プローブを派手にばらまいて、同じく派手に稼いでいる。
「さーて、次はどこに行くか」
オストプライムのステーション内部は、整然さや潔癖さからはややかけ離れている。
色々な人種が行き交っているのもそうだけど、汚いし臭いし空気は澱んでいる。
マスクを着けていてよかった、このマスクに標準搭載されている生命維持機能でなんとか息は出来る。
「主人、この後はどちらへ?」
「何か買って帰ろう」
「はっ」
ここでする事と言えば買い物くらいしかない。
とはいえ、マーケットを観光するのはまた後日。
私達はその辺にあるコンビニのような小売店に入る。
ステーションの中の濁った空気が、店内に入ると消え去る。
「物価が安い....」
「そうですね」
その辺の商品の値札を見ると、周辺星系の価格より遥かに安い。
地球の電気街などで見られたものだ。
競合店が多いから、値段の安さで競い合った結果の価格なのだろう。
お兄ちゃんはそういった値段競争の関係性を常に把握していて、変動予測をある程度立てたうえで常に献立計画と食料買い出しを効率的に行っていた。
とりあえず、皆の好きなものを.....いや。
「主計長と相談しないと」
私は、携帯端末のメッセージアプリで、ソフと相談する。
足りないものはあるか等、尋ねた結果。
直近であるとうれしいもの、調味料数種類と、野菜缶詰の類を購入しておく。
「意外と足りないものがないな」
「ソフはうまくやっていますね」
ステーションに寄るたびに、買えるもの、補充できるものを見極めつつ、正確に在庫を管理している。
うまく財布と兵站の番人となっている。
アドアステラに欠けていた、健康という面ではソフは凄く役に立った。
トマトもどき煮込みばっかり食べてるわけにもいかないからね。
「やめろ! 俺はやってない!」
その時、店の中に一人の男が、もう一人の警備員に抱えられて入ってきた。
そしてそのまま、店の奥まで連れられていく。
「万引きでしょう」
「治安も相応に悪いのか」
仮にやってようとやってまいと、そんなことはお構いなしに、
とにかく捕まえてしまえることが容認されている。
それだけ治安が良くないという事なんだろう。
買ったものを持って店の外に出る。
見上げたステーションの天井は、あちこち消えているものの、その照明は黄昏色に染まり始めている。
このステーションの標準時での夜がやってくるみたいだ。
「帰ろう」
「はっ」
私たちは、ステーションの通路を通ってハンガーに出る。
色々な船が並ぶ中、アドアステラはプラチナ傭兵専用のスペースに鎮座していた。
メンテナンスが極論不要なため、他の船のようにメンテナンスボットや機材が周囲にないのも、一際存在感があるように感じさせる一因になっている気がする。
「こちらカル、ブリッジ、ハッチを開けてくれ」
『合言葉は?』
「...今夜の晩御飯はにんじん抜きか?」
『残念、にんじんのステーキです』
ハッチが開いた。
誰が考えたのか、いつのまにか合言葉として浸透している。
ハッチを昇って、私とファイスはアドアステラへと戻るのだった。
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