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229-真っすぐな傲慢さで

私たちの船は、オスト星系へと最接近する。

オスト星系に隣接するスレイム星系へと辿り着いたのだ。


「スレイム星系は「中小企業のアウトポスト」と呼ばれるくらい盛んな場所なんだよ」


ラビが解説を入れてくれる。

オスト星系は大企業が占有しているため、こうして唯一の隣接星系であるスレイムに中小企業のオフィスが集中しているらしい。

ゲートの周囲も凄く賑やかであり、定期船らしいデザインの船やシャトルが無数に飛び交っている。


「っと....ここだと邪魔になるかもね、ワープしよう」


私はアドアステラごとグーンズフリートをワープに入れ、仲間たちと今後の予定について話し合う。

オストに行く予定だが、グーンズフリートとはここでお別れだ。


「何だか....名残惜しい、ですね?」

「ソフ.....」


まあ確かに、そうかも?

旅の間ずっと話しかけてきてしつこいとは思ったけれど、ユルトの声が聞けなくなるのは寂しい。

彼女たちはSELL….販売者経済連結リーダーシップという組織から依頼を受けているらしく、私達と違ってオスト星系には入らないらしい。


「ユルト達はここから依頼を受けて、ペリメーター星系っていう商業活性化地域に向かうらしいから、多分二度と会うことはないと思うよ」

「じゃあ....お別れは済ませましょう! 大事です!」

「うん、そうだね」


グーンズフリートの目的地はスレイムⅣにあるトレードハブだから、私達もそこで入港してグーンズフリートの皆に別れを告げる。

その予定だ。


「え?」


…..だったのだが、トレードハブの前で私達は門前払いを喰らってしまった。


『すみません.....非常に申し訳ないのですが、そういうルールですので...』

「分かった、済まないな」


私は平静を装い、通信を切った。

そして、皆に説明する。


「どうやら、要人を迎えるみたいで、完全予約制らしい.....」

「そうなんですか....」

「大丈夫だよ、まだ入港には時間があるから、会ってきなよ、カル」


入港待機列の中に、まだ旗艦オーネストは居る。

入港までには数時間かかるだろう。


「.....行くよ、ありがとう、ラビ」

「どういたしましてっ!」


私はアドアステラに積まれているシャトルに乗り込み、単身でオーネストに向かって飛ぶ。

勿論連絡は入れているけれど、果たして迷惑がられるか、歓迎されるか.....




「やぁ、カル」

「ああ」


大歓迎された。

結果として、シャトルはオーネスト艦内に迎え入れられ、私は格納庫でユルトと話をする事にした。


「どうしたんだい、君らしくないな」

「仲間に言われたんだ、この先長く会わないなら、別れの挨拶くらいは対面でしろとな」

「そうか......私も好かれたものだな」

「ああ、俺は特にお前を気に入ったしな」

「そ、そうかな!?」


一応社交辞令ではないよ、とアピールしておく。

何故か動揺した様子のユルトだけど、私はそれを無視する。


「短い間だったが、お前たちと旅できてよかった」

「わ...私もそう思うよ、カル。一緒に居られないのが少し悔しいが、許してほしい」

「ああ、だが.....結局、距離など問題ではないだろう」


どうせ、話そうと思えば超光速通信で(リレー式で遅延があるとはいえ)、いつでも話せる。

対面で話せないというだけで、今生の別れという訳ではない。


「そ、そうだな....距離は問題ではないな....」

「そうだ。だからこそ、今この瞬間には生身で会える最後の機会という価値がある訳だ」

「つ、つまり....?」

「別れの挨拶としよう」


私はユルトに手を差し出した。

ユルトはその手を取ろうとして、引っ込める。


「....どうした?」

「やっぱり、辞めておこう。私の身体は、君には勿体無い程醜いからね」

「醜いなどと言う事があるわけがないだろう?」


たかが握手で、なんで美醜が出てくるんだろう?

そう思いつつ、私は落ち込むユルトを励ます。


「その肌も、髪も、瞳も。醜い筈がない。もし美醜が人の目で決まるなら、俺はお前を美しいと思う」

「そ、そ、そうかな....と、というよりだな、これは私の問題というか....」

「人種という括りで人を見るほど、俺が浅はかに見えたか?」

「....そうだな、君はそういう人間だった。今一度改めて思い出したよ」


私を見るユルトの視線は、今までと違っていた。

まるで、対等ではなく目上の人間を見るような、敬う目だった。


「君は、私が思っているより大きな人間なのだね」

「俺は、お前が思っているよりは小さい人間だ」

「その高潔さが、君を際立たせる」

「この傲慢さが、俺を滅ぼすだろう」


私なんてまだまだ。

お兄ちゃんに比べれば大したことではない。

お兄ちゃんが前世でモテなかったのは、その性格も努力も苦労もすべて隠しているからだ。

みんながそれを知れば、お兄ちゃんとラブラブになるに違いない。

それはそれで嫌だけど。


「で、どうするのかな?」

「帰るが?」


私が踵を返そうとしたその時、野生動物を思わせるしなやかな動きで、ユルトが私に迫っていた。

嵌められた...?

そう思った次の瞬間、ユルトは私の仮面に口づけをして離れた。


「いつかその仮面の下も見れるといいのだがね、今日はここまでとしようじゃないか」

「ああ...」

「さらばだ、カル! また再び会う時まで!」

「またな」


私はシャトルに乗り込み、一度も振り返らずにアドアステラへと帰艦した。


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