224-ゲート前戦闘
『いきなりで悪いが、パーラのゲートを海賊が張っているらしい』
ワープ中、いきなりそんな事を言われた私は目を見開く。
でも、それくらい星系軍でどうにかしてほしいもんだけど。
「星系軍でどうにかならないのか?」
『規模が大きすぎるんだよ、まるで我々が通る事を知っていたようにな』
「ああ....まあ、海賊にとって俺たちは、無視できない存在になったからな」
主力艦を吹っ飛ばしたのは私で、表向きはその功績をユルト達が受け取っている。
復讐者たちは主力艦を吹っ飛ばしたアドアステラを、海賊たちは自分たちを貶めたグーンズフリートを憎悪しているはずだ。
「で、どうする」
『我々が矢面に立つ、君たちの船は十分な火力を持っているのだから、後衛に専念してほしいな』
「前は任せろ、と言いたげだな」
『私は君の役に立ちたいだけだよ』
底が見えないな....
アプレンティス傭兵なんだから、もう少し偉そうに振舞ってもいいと思うんだけど。
「俺はもう少し偉ぶる方が好みなんだが....」
『っ...! 君はいつも、私の心を揺さぶるね』
「気は使わないでくれ、俺はあくまでプラチナ傭兵。アプレンティス傭兵のあなたに従う」
『ありがとう、早くアプレンティス傭兵になってくれ、対等の立場で君と接したい』
ユルトがそれだけ言うと、通信は向こうから切れた。
一体何なんだ....
「聞いたな、皆」
「はい、既に戦闘準備は終わってます」
「僕、ソフを呼んでくる!」
「ああ!」
ワープ終了まで残り十五分程。
ユルトから送られてきたデータによれば、ゲート前に居るのはフリゲート45隻、駆逐艦31隻、巡洋艦11隻らしい。
「小さいのが多くて面倒だな....ケインに頑張ってもらわないと」
前面のパルスレーザーとドローンで纏めて殲滅する。
ラビは出さない。
『ワープアウトまで、残り15秒』
「レーザー・スーパーチャージャー起動!」
「レーザー・スーパーチャージャー正常に起動、伝送管とリンクします」
ファイスが復唱する。
ちなみにレーザー・スーパーチャージャーとは、お馴染み博士と化したカナードから送られてきたものだ。
『聞いたよ、主力艦を落としたんだってね。僕の方の商売もうなぎ上りさ。いい宣伝になったから、お礼にこれを送っておくよ』
っていうメッセージと共に、一昨日届いた。
艦内工場で組み立てて、今は機関室に設置されている。
アドアステラも、新しい装備をいくつか積み込んであるので、以前より砲撃戦・格闘戦に特化している。
『ワープ終了、戦闘地域に侵入します。オーバーレイを戦闘モードに切り替え』
「スラスターモードを戦闘モードに切り替えます!」
私が視認するより先に、巡洋艦全11隻のロックオンが終了する。
とんでもない速さだ。
光学センサーなんだけど、改良でさらに性能が上がった。
「シトリン、全艦行けるか?」
『可能です、火力は分散しますが....』
「SHMを起動する」
私は即座に判断を下す。
どうせ動かなくていいんだから、これを使ってもいいと思う。
「SHM、正常に起動しました。サブワープドライブに推進出力を切り替え」
ストロングホールドモジュール。
これを起動すると、アドアステラの質量がとんでもない事になり、サブワープドライブを使っても高速移動や長距離ワープが不可能になる。
.......というか、質量が大きくなりすぎて惑星表面でも使えない。
「撃て!」
アドアステラから伸びた光は、巡洋艦のシールドを貫通して装甲を破損――――させることなく、そのまま貫いた。
「.......えっ?」
威力上がり過ぎじゃない?
これって、接触部分が破壊されてるわけじゃなくて、蒸発してるって事だよね.....
こわ~....
『敵巡洋艦隊、全滅を確認』
「続けて駆逐艦隊を撃つ! ケイン、ドローン......ハウンド全機発艦!」
ハウンドは打撃型のドローンで、性能改修によってシールドくらいなら簡単にぶち抜けるようになった。
流石にスペースが足りないので、昔使ってたドローンのいくつかは分解して新しいドローンへと転用したり、保管してある。
『ハハハッ、早速派手だな、カル! 私達もフリゲート艦隊を抑える!』
「任せる! 駆逐艦隊ターゲットロック開始! アリア! ミサイルランチャーに「Jav-112」を装填!」
「ハイ!」
Javシリーズは、めちゃくちゃ速いスマートミサイルだ。
その代わり威力は微妙なんだけど、強化されたミサイルランチャーの速射力なら、駆逐艦の推進力を無視して連撃を浴びせ掛けられる。
『敵駆逐艦、回避機動に移行します』
「威嚇射撃で動きを誘導するんだ」
『はい』
アドアステラの砲撃は、冷却に時間をかけるものの、ピーク時は秒間六発撃てる。
それを利用して、射線で敵を追い詰める。
『敵艦隊、ワープアウトしていきます』
「ん? 逃げるのか....まあいい、深追いはしない」
『了解です、戦闘終了。オーバーレイを航行モードに切り替えます』
逃げるくらいなら最初から襲わなければいいのに....とは思ったけれど、逃がしたのはちょっとまずったかな?
この船、ちゃんと対策されると普通に押し負ける。
主力艦相手にも(物理的に)押し負けるしね。
「ユルト、大丈夫か?」
『ああ、問題ない。そちらは?』
「無事でないように見えるか?」
『はは、相変わらずだな、君は....』
まだまだ旅程は長い。
こんなところで止まってられないからね。
私達はゲートへと接近を始めるのであった。
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