223-荒事
翌日。
私達はクロイセンⅢにある商業ステーションに入港していた。
ここは商業ステーションなので、まあ見るべきものは何もない。
じゃあ、どうして入港したのかと言うと。
「頼もう!」
「......」
私とユルトは、ユルトの部下数人とファイスを引き連れて、傭兵ギルドの支部に入った。
このクロイセンでの傭兵の立ち寄る場所と言えばここであり、私はユルトが何をするつもりかなんとなくわかった。
「おいおい姉ちゃん、こんな場所に何の用事だァ?」
「姉ちゃん....? 私はユルトだ」
「やれやれ....」
私はため息を吐く。
「おい、兄ちゃん。あんまり調子に乗んじゃねえぞ、ここで傭兵やりてえなら、俺に逆らうんじゃねえ。ケラカ人なんか連れやがって――――」
こいつどうしようかなぁ、と思った直後。
ファイスが男を掴み、持ち上げていた。
「があああっ!? こいつ、速――――」
「ファイス....」
「いけませんでしたか?」
「いけないが....まあ、いいだろう」
ユルトのよく分かんない趣味に付き合わされてるので、ノリノリでそれに乗るしかない。
「君の名前は今知ったよ、シルバー傭兵のフロッツ・ベインか」
「シルバー? 有象無象か....」
「こいつ....あだだだだ!」
「姐さん、流石にやばいっす!」
「ああ、離してほしいな」
「だとさ、ファイス」
「はっ」
ファイスが男を床に降ろすと同時に、私達はランクエンブレムのホログラムを投影した。
私はプラチナ、ユルトはアプレンティス傭兵のものである。
「さあ、道を開けたまえ」
「(やる事が情けない....)」
そう思いつつ、私達はシルバー傭兵の横を通り抜ける。
「次からは、喧嘩を売る相手は選んだ方がいいぜ」
「......クッ」
そして、とどめを刺すのがグーンズフリートの中の一人、ダレイン・イオスだった。
ハゲ面の気のいい大人って感じの人だけど、ちょっとユルトに対する矢印が重い気がする。
「で、何をするんだ?」
「依頼を受ける。クロイセンからスレイムへの輸送依頼があれば、少しは貢献度を稼げるからな」
「そういえば、そんなのがあったな」
貢献度。
これが一か月ごとに設定されていて、ダイヤ以上の傭兵はこれを満たせない場合降格になる。
私達は気にする必要がないけどね。
「ケラカで稼いだんじゃないのか?」
「超過分は持ち越せるのだよ、なら稼ぐのは悪い事ではないだろう?」
「そうしたいならするといい、俺は関与しない」
「ふふふ」
ユルトは謎に笑う。
私はそれを不気味に思いながら、依頼リストに目を通すのだった。
船に戻ると、ファイスが溜息を吐く。
「ファイス、今日はらしくなかったね」
「すみません」
「私は別に殺気を向けたわけじゃないんだけど、それを勘違いしちゃったかな?」
「.....はい、恥ずかしながら」
不快だな、くらいには思ったんだけど。
それを読めるほどに、ファイスは鋭敏になってきている。
「それは多分、成長の証だよ。ファイスは多分、人が出す匂いで感情が読めるんだ」
「....そうなのですか?」
「よくは分からないけど、自分の意志で行動したんじゃないんなら、そうじゃないの?」
匂いは感情によって違う、そんな学説をどこかで読んだ気がする。
ファイスの成長を感じつつ、私達はまた旅立つのであった。
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