221-旅は続いて
数日後。
私たちの艦隊はフローサ星系を飛んでいた。
ここは重力源の恒星系が多くて、ワープをする時にはワープドライブの性能が低いグーンズフリートの艦を気遣わないといけない。
面倒だけど、たまにはこんな旅もいいと思った。
そういう訳で、アドアステラは通常航行でユルトの船...『オーネスト』と並行している。
「暇だなぁ」
私はそう呟きつつ、端末を操作する。
ちなみに口に出しただけで、そこまで暇ではない。
それというのも、
『カル、数時間ぶりだな!』
「ああ....」
ユルトが定期的に連絡してくるからだ。
正直、話すのは楽しいけれど、なんとなく連絡には即応したいからブリッジに釘付けになっている。
それでも、苦にならないほどに....話し相手というのはいいものだと思う。
『どこまで話したかな』
「ポリャニスティム星系の特殊な環境について聞いたな」
『....では、次はウルス星系の特異な星雲について話そう!』
ユルトはこれまでの人生で旅した星系などについてもよく知っていて、それについて話してくれる。
宇宙って言うのは不思議なもので、信じられないような特徴を持った天体や星が沢山ある。
その話をしてくれたり、
『オルサコンⅡに住む人は、身体が金属で出来ているのだよ』
「動けないんじゃないのか?」
『うむ、そう思ったのだが....流体金属のような感じでな.....』
そこに住まう人々や、彼らが形成する文化の話もしてくれた。
特に気になったのは、ガンズ星系。
そこでは、超能力を使う.....かは分からないけれど、不思議な事をする人たちが住んでいるらしい。
そこに行けば、私も超能力が使えたりしないかな.....
そしたら、お兄ちゃんにもっと楽させてあげられるのに。
『こんな時間か.....済まない、拘束するようで』
「いや、構わない。ユルトと話していると、時間を忘れるようだ」
『こんな私とでも、そう言ってくれる人は本当に少ない...ありがとう』
何故か感謝された。
私は通信を切り、艦内時刻を見る。
そろそろ、お昼だ。
ついこの前までなら、みんなインスタントか、私が買ってきたり適当に作ったもので済ませていたんだけど....
「遅れると怖いからね」
私はブリッジをシトリンに任せ、階下へと降りる。
食堂に向かうと、既に皆食事を始めていた。
「あっ、旦那様!」
「うん、今日もありがとう」
「いえ! 感謝なんて大丈夫です! これが私の仕事ですから!」
ソフ。
彼女、料理も出来るらしい。
私は発展・応用が出来ないので、彼女のように家庭的な料理は作れない。
しかも、家事の事になるとマルチタスク能力を発揮して、仲間たちみんなの食事をそれぞれ別々で作っているのだ。
ファイスなんかはとにかく肉って感じだけど、ノルスはその逆。
私はあのトマト風の食べ物...フィムハルを使った、ミートパイを頂く。
「ソフの作るパンは美味しいね」
「はい! 前の旦那様はいつも不味いと言っていたので、頑張って美味しくなるように勉強したんです!」
奴隷が当たり前の未開の惑星から拉致されてきたソフは、前の主人に相当ひどく扱われていたらしく、私が手を上にあげただけでびくりと縮こまる。
殴られると思うらしく、更には夜泣きすることも多い。
聞けば、前の主人に殴られる夢を見たという。
それでもソフのいいところは、決して主人の悪口を口にしないところだと私は思った。
『私は卑しい生まれです。本当なら、息をするにも旦那様のお慈悲を頂かなくてはならないんです。ですから、文句なんてありません、生きていられるだけで、とても素晴らしい事なんです』
.......とんでもない奴隷根性由来の事を除けば。
だから私は、いつかソフが、私に対して意見できる、自由になれるように助けようと思ったのだ。
それはそれとして、
「生地から作ったの?」
「はい、一日寝かせてます!」
「....そこまで手間をかける必要はないからね?」
「私がそうしたいから、するんです...そうですよね、旦那様!」
「....うん」
その日は思ったより近いかも?
そう思いながら、私はミートパイを口に運ぶのだった。
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