219-君を泣かせはしないから
「......お願い、力を貸して」
私の願いに応えるように、カルセールが起動する。
三つの円環へと変形した先端部が高速で回転して、火花と共にエネルギーが収束される。
「ユルトを泣かせはしない、海賊共...恨みはないが死ね!」
私は口の中で溜めるようにそう呟き、
静かに引き金を引いた。
「――――ッ!!」
膨れ上がる極光。
網膜を焼くその光に、私は思わず目を閉じた。
そして、太陽のようなその輝きが消えると同時に目を開け――――
「やった!」
艦首から艦橋にかけて大穴の開いた主力艦が目に入った。
だが、まだ油断できない。
「シトリン、両舷増速! 主力艦に体当たりをかける!」
『了解』
シールドを纏ったアドアステラは、海賊主力艦に体当たりをかました。
凄まじい衝撃が襲い、私は甲板に磔にされる。
だけど....
「このまま、押し切れ!」
『了解』
推力を失った今なら、軌道を変えられる。
私は引き続き、船を加速させる。
けれど.....
「間に合わない....」
この加速を止めて、軌道をずらすのは不可能だ。
アドアステラ単艦の推力では、個の質量を動かすのには時間が掛かる。
『カル! 我々も手伝おう!』
「....ユルト」
見れば、背後からグーンズフリートの巡洋戦艦が速度を上げて迫って来ていた。
遅れて巡洋艦も来ている。
『私を泣かせはしない....か、本当に惚れそうだぞ、カル!』
「聞いてたのか」
『被差別種族の私に、アプレンティス傭兵という高みにいる私に。そんな頼りがいのある言葉をぶつけてくれたのは君が初めてだ! さあ、行くぞ!』
旗艦の巡洋戦艦が、アドアステラの横で主力艦の装甲に体当たりする。
『カル、改めて教えておこう! この船の名は、「オーネスト」! 異国の言葉で、誠実という! お前の想いは本物だった! なら、我々もその想いに全力をぶつけるつもりだ!』
六隻の最大出力で押すことで、主力艦の向きが変わり始める。
それどころか、少しずつ押し返して減速させられている。
『面白そうなことしてるな、加えてくれよ!』
その時。
通信にそんな割り込みが入った。
主力艦の推進器を飛んできた砲撃が破壊し、私たちの援護をしてくれた。
「済まない、色々と...」
『”一杯の恩”だぜ! 俺たちは絶対に約束を守る! 借りた金は返さないこともあるが、貰った恩は必ず返す! .....それに、アプレンティス傭兵サマもいるんだからな! キルアシストは頂きだぜ!』
色々理由を付けているけれど、きっとあの残骸に乗っていた人たちがいなければ、私たちはコロニーを守れなかっただろう。
だからこそ.....
「ファイス! SWDオーバーロード!」
「了解!」
アドアステラは200%推力で押し切る。
そして、回路が焼けつく頃には、主力艦は完全に停止したのであった。
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