216-『約束』
一時間前。
輸送艦の護衛任務に出ていた傭兵たちは暇を持て余していた。
当然である。
ケラカ星系は海賊が出る筈もない星系で、輸送艦マンモスは少数運用なので奴隷も集められない。
おまけにセキュリティが高い関係上、外に出るには星系軍の包囲を躱す必要がある。
割に合わないのだ。
「......暇だな」
「でも飲酒しないだけマシじゃないスか」
「当たり前だろ、一応は仕事だぞ」
輸送艦を囲む四隻の護衛は、それぞれ別の傭兵の船であった。
食糧生産コーポレーションの規定で、輸送艦を運用する際は護衛艦を四隻以上帯同させる必要があるのである。
「ところで船長」
「んだよ」
「ゴールド野郎への借りはいつ返すんです? 一杯の恩でしょう」
「......」
カルについて言及された男は黙り込む。
その場の勢いとはいえ、カルに借りだと言ってしまった以上、返さなければと考えているのだ。
「返せるときに、返せるだけ....だな」
「適当ッスねぇ」
「それでいいだろ?」
部下に嘲笑され、船長の男はムッと顔を歪めた。
その時、船はワープから離脱し、通常空間へと表出した。
「いつも通り、平和なコロニーって訳だな」
「これで食っていけるからいいじゃないスか」
「るせぇ」
護衛費用はかなり破格である。
だが、それは当然のことだ。
傭兵が護衛任務を受けるのはスリルを求めての面もある。
娯楽も華々しさもないこの星系で、スリルのない護衛依頼を受ける傭兵は逆に少ないのだ。
マンモス級の入港を待つ間、四隻はコロニー周囲の宇宙空間で屯する。
「.....船長、艦隊がワープアウトしてきました」
「あん? 星系軍か?」
「いえ....無所属です、何の用事でしょうね?」
「さあな」
その時。
コロニーの周囲に、一斉に艦隊がワープアウトしてきた。
敵だとはつゆにも思わない護衛艦隊は、次の瞬間目を疑う事になる。
「な、なぁ......」
「ええ....撃って....」
「馬鹿野郎、逃げるぞ!」
「はい!」
艦隊は一斉に、コロニーに砲撃を始めた。
それを見ていた船長は、部下に逃げることを命じた。
船がワープドライブを起動し、ワープに入る準備をする。
「.....いや、やっぱり止めろ」
「え? はぁ...?」
「”一杯の恩”だろ?」
「....そういう所、俺は嫌いじゃないっスよ」
他の三隻がワープドライブで離脱する中、その船だけは一気に加速し、コロニーの下部に回り込んだ。
「こちらエンフォース所属”クローバー”船長! ケラクライムが襲撃を受けている! 座標はここだ!」
船から発信された情報は、どこか遠くへと飛んでいく。
そして、コロニーはフォースフィールドを張って身を護る。
クローバーはフォースフィールドからはじき出され、完全に孤立する。
「ヤバいっすよ、船長!」
「アドアステラに座標と戦力を送っとけ! 俺が操縦する!」
クローバーはその後、海賊艦隊からの集中砲火を浴びながら三分間飛行。
その後、ワープのため減速したところを狙い撃ちにされて轟沈した。
そして。
『ワープアウトします』
アドアステラとグーンズフリートが、コロニーの外周部にワープアウトする。
『敵艦船、総数は...約七千』
「なんだ、少ないじゃないか」
『我らの故郷を襲う不埒者に天罰を与えるぞ!』
「「「「「「オオオオオオオオオオッ!!」」」」」」
気合十分。
アドアステラは猛然と砲撃の雨霰を海賊艦隊に浴びせ掛け、グーンズフリートも武装を展開し始めるのであった。
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