表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

214/272

212-友人契約

ユルトに連れ出された私たちは、ステーションの商業区画を歩いていた。

傭兵や輸送艦に乗る民間人のために誂えられた場所であり、私は見たことがないけれど風俗店もある所にはあるらしい。


「親分、酔っ払ってどこ行くんすか」

「カル、任せる!」


勝手に連れ出しておいて、人任せなのか。とは思ったけれど、一応先輩だし。

敬意を払って、周囲を見渡す。

看板を見る限り、飲食店、日用品店、酒場といった様子だ。

うーん、悩むな...そう思っていた時、ユルトの仲間の男が耳打ちしてきた。


「...もうちょい進んでください、陶器の専門店があります」

「...助かる、ユルト、行こう」

「ああ!」


物凄い強面だが、さすがに面子は大事だったらしい。

親切にも教えてくれた陶器の店に、私達は足を運ぶ。


「ここはなんの店なんだ、皿か...?」

「親分...」

「元々皿とは、プラスチックではなく何かを練り、焼きを入れることで固めて作っていたものだ。その技術は数代掛けて成熟され、ここに並ぶ物のように完成に至る」


私は知ったような風に説明する。

実際はもっと時間をかけて、精密に先鋭化されていく。

私が過去にやった時は、職人のものに近づけるのだけで精一杯だった。

沢山作るなんて、お兄ちゃんのためじゃなかったらきっと出来ないだろう。


「ほう、では...ここにあるのは、情熱の記録というわけだな!」

「そうだ」


値札をチラ見すると、消耗品にしては高いなという感じだった。

買えなくもない。


「親分...無駄遣いは...」

「だが、少しくらいはいいだろう!?」

「...」


私はユルトの眼を見る。

濁ってはいるものの、綺麗な翡翠色をしている。

私は商品棚の上の方にあった、緑色の陶器を指差す。


「店主」

「あー...へい、何ですか?」

「これをくれ、支払いは送金か? それとも支払い端末が?」

「送金です、こっちにコードが....」


私はコード先にMSCを送金し、品物を受け取った。

丁寧に包装されたそれを、ユルトの部下に持たせる。


「俺からの贈り物と思ってくれ、友好の証というやつだ」

「....ああ! 忝い!」


部下がそれを船に持ち帰る間に、ユルトは私を武器屋に連れて行ってくれた。


「コレが私の愛用のドラクター社製DRタイプ2型だ!」

「持ちにくそうだが....」

「逆だな! 持ちにくいように見えるが、握れば中々落ちないものだ、大きく動く戦闘では有利なのだ」

「成程....」


銃を落とさない構造というのは珍しい。

私はユルトの銃を見た。

確かに、握りにくいけど、握ってさえしまえば絶対落ちない。

腕ごとやられたら無理だろうけど。


「銃はこれだけなのか?」

「そうだ! 撃っても死なない相手には、仲間と共に対処するからな」

「というと?」

「プラズマキャノンなどで焼き払うのだ!」

「成程」


うちの仲間は皆肉弾戦特化だからなぁ.....

防御が厚い敵=全員で囲んで殴るイメージしかない。


「俺の仲間は肉弾戦特化だからな....」

「君の仲間は確か、人類種で無いものが多かったな、それなら肉弾戦でも十分だろう」

「はぐれ者に亜人はいないのか?」

「いるにはいるが、大抵は庇護を必要としないほど強い者ばかりだからな!」


成程、やっぱりそうなるのか。

最終的に、他人の庇護を必要とする亜人とは、種族系の敗北者なのだ。

うちの場合は、皆強いけれど、それは好きでついてきてくれるって事だね。


「ところで、急にデートなんて言い出したのは何故だ?」

「...その場の勢いだ!」

「...そうか」


この人、慎重なんだかノリが軽いんだかよく分からないな...

掴みどころのない人だ。


「...だが、そうだな...ちょっと着いてきてほしい」

「ああ」


ユルトは店から出て、暫く歩いた。

立ち止まったそこは、路地裏だった。


「ユルト?」

「カル」


ユルトは真っ直ぐ私を見た。

その目は、普段の自信に溢れた様子ではなかった。


「...私は、アプレンティス傭兵として、常にそれ相応の振る舞いを求められる。カル、君は...それが常に出来ているようだな」

「ああ」


話が見えない。

脈絡がない話をされても困る。


「私は、友人が欲しい。私をラータ種族の穢らわしい女とも、頼るべきボスとも、アプレンティス傭兵のリーダーとも思わずに付き合ってくれる、君のような人が」

「...そうか?」


どうでもいいからこそ、何も思わない。

私の態度は、常にそれだけだ。

お兄ちゃん以外に媚びるつもりも、理解しようとするつもりもない。

ただ人によって微妙に態度を変えて、角が立たないようにしているだけだ。


「私のような人間は、君の無関心さでも美酒のように感じるんだ」

「契約のような関係だな」

「まさに、そうだな」


何となくそうした方が善いと思って、私は手を差し出した。

彼女はその手を握った。

こうして、私は強力なコネを手に入れた。

面白いと感じたら、感想を書いていってください!

出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。

レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。

どのような感想・レビューでもお待ちしております!


↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ