211-ユルトの不安
「ここだ」
私は、ユルトに続いてハンガーベイへと足を運んだ。
そこには、ユルトの乗る旗艦と、他の数隻の艦船...多分駆逐艦かな?
それらが鎮座していた。
「ここが我々、グーンズフリートの本拠地だ...移動式、であるが」
「それで、用件は?」
「そう急くな、中でも茶でも出そう!」
うへ〜中に入るのか。
肉弾戦はあまり得意じゃないんだけどな。
まあ、罠じゃないならいいんだけど。
「親分、また捨て犬拾いですか」
「失礼だぞ、客人を連れてきただけだ!」
そして、旗艦に入るなり、部下らしき男に苦言を呈されるユルト。
意外と部下からの信頼は厚いらしい。
「すいやせん、お客様。親分は普段から、俺たちみたいなはみ出し者を拾ってくるんです」
「構わないが...」
思うに、そういうネーミングのクランだよね。
「はぐれ傭兵船団」という名前の通り、初期メンバーは褐色、黒色肌の人間達で、あとはユルトが拾ってきた面々なのだろう。
中に入り、エレベーターに乗って二階へ上がる。
少し歩くと、そこが客間だった。
「立つか? 座るか?」
「座らせてもらおう」
高級そうなソファに腰掛け、同じく腰掛けたユルトの目を見る。
「その仮面は外さないのか?」
「素顔を見せるのは、聊かリスクが高いな」
最近は男装ロールプレイが楽しくなって来たのもあるけれど、元々は私が女であると知られると与しやすいとバレてしまうからだ。
カナードには実際敵わなかったし、私は肉弾戦が苦手だ。
「そうか、では互いに隠し事ありで進めさせてもらおう!」
「ああ」
大仰な人だな。
そう思いつつ、私は話に耳を傾ける。
「まずは、我々がここへ来た目的だが...実は、ここは我々の故郷なのだ」
「故郷...もしかして、テラフォーミングをやった連中か?」
「そうだ、他星に渡ったものの、私達は元から王国では疎まれていた人種でな....結局、どこに行っても受け入れらず、チンピラから重犯罪者まで....まあ、色々あったのだよ」
「それで?」
「幸いにも我々はまともな道に進む事が出来た! それ故に、この場所を訪れようと思ったのだ。未来への一歩を歩むためにな!」
「成程」
アプレンティス傭兵がこんな辺境にいる理由は分かった。
それで、だ。
「....身の上話は終わりか?」
「うむ、終わりだ! 本題に入ろう! 我々は海賊共に大分恨みを買っているようで、ここに来た瞬間に準備を始めた! 見るといい!」
机からホログラム映像が投影され、私はそこに映った星系図を見る。
「これは.....ワームホール?」
「そうだ、奴らはここに繋がるワームホールを発見したようなのだ」
ワームホールとは、「ここではないどこか」に繋がる穴だ。
この宇宙かもしれないし、その先は別の異次元世界かもしれない。
後者だった場合、戻ってこれなくなる場合もある。
だが、そのどちらにしても、スターゲートを経由しない以上は、発見される可能性は限りなく低い。
「ワームホールを潰せば、阻止できるか?」
「いや、無理だ。既に基地の建設は始まっていて、人員も充分。私たちが襲うには、聊かリスクが高い....それにな、海賊らの狙いは、私だろう」
「何故?」
アプレンティス傭兵に向かっていくなんて、彼等にとっては自殺のようなものだろう。
いや、普通は倒せないからこそ....
「私を失えば、傭兵に....それこそ、奴隷の格好の素材である我々の種族の威信を大きく削れる。やらない手はないだろう」
「では、逃げたらどうだ?」
「....傭兵として、守るべきものを残して逃げられんのだ」
そう押し殺すように言ったユルトは、先ほどまで見せていた豪快な様子とは比べ物にならないほどに、弱々しかった。
「なら、お前は俺が守ろう」
「お前が?」
「主力艦のシールドに穴を開けた俺が、主力艦を倒せる数万の戦力を一身に宿して、お前を守る――――それでどうだ?」
「フ......面白そうだな!」
数を殲滅するユルトの旗艦と、個において圧倒的な殲滅力を持つ私たちのアドアステラ。
それらが組めば、海賊艦隊数万など物の数ではない。
「....アプレンティス傭兵より頼もしいゴールド傭兵か! 英雄譚の一幕のようだな!」
「いいや、こんなもの.....ゴールドのいつもの”見栄”だ」
「それでも、私はお前を信じる! デートに行くぞ、カル!」
「急だな!?」
急に立ち上がったユルトに手を引かれ、私は船の外に連れ出されるのであった。
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