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異世界の宇宙に船ごと転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜  作者: 黴男
シーズン8-ケラカ星系編

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209-コロニー見学(後編)

野菜の生産施設は普通だったのでカット。

普通というか、天候操作技術で自然に近い環境で生育しているというだけの話だ。

原理はさっぱり分からないので、ノルスにあとでわかりやすく説明してもらおう。


「こちらが、人造肉専用の飼育スペースになっております....が」


その時、ガイドが真剣な表情をした。

全員を一瞥したうえで、声のトーンを二段階ほど落として続ける。


「気分を害する、もしくは今後人造肉に対して嫌悪感を抱く可能性があります、それでも入りますか?」

「ああ.....ケイン、アリア、ソフは大丈夫か?」

「大丈夫!」

「私はちょっと.....」

「怖いのは嫌です、旦那様...あ、でも....命令なら行きます」


アリアとソフは駄目そうなので、外に残していく。

施設の中に入ると、長い通路がそこにはあった。


「この通路は、中で飼育されている改造生物が脱走した際に道を阻むためにあります....今はないんですけど、緊急時は切断レーザーが張り巡らされますよ」

「.....そうか」


脱走するとそうでもしないと止められないのね.....

不安を残しつつ、中へと入る。

その先には、無数の培養槽が並ぶスペースがあった。


「これが、人造肉の元となる生物.......の幼体です!」

「成程、確かにちょっと気持ち悪いな」


食べ物に貴賤はないので、私は気にしないけれど。

虫だろうと牛だろうと肉は美味しい。


「美味しそう!」


ケインは何か別ベクトルでヤバイ。

魚貝類じゃあるまいし、見た目で美味しそうとは思わないような。


「では、こちらへ!」


奥へ、奥へと進む。

すると、その先では。


「でかいな.....」

「餌を与えますと、標準的な高品質肉と同じ脂質・蛋白質を含有する成体へと成長します」


でっかいチクワみたいなワームが、何十匹も育成されていた。

どれも肥え太っている影響で、ほとんど動けていないようだが。


「ふむ、我々の食生活はあれに支えられているという訳ですね」

「画像では見たことあるけど、本物はまた違うね....ちょっと可愛いかも」

「軟体生物なのですね....興味深いです」

「うっ....」


ケインを除き、うちはゲテモノ耐性が高い連中が多いようだ。

気分が悪そうなケインだけど、吐くほどではないみたいで、振り返ると目を覆って首を振っていた。

施設を出た私たちだったが、私はある事に気づく。


「....そういえば、増やしたり加工したりするのはどこでやっているんだ?」

「そこは立ち入り禁止エリアですので」

「そうか」


倫理は浜に捨てて来たらしい。

私は聞かなかったことにして、アリアとソフを回収。

そのままマイクロバスに乗って最後の場所へ。


「次は果樹園だね」

「まあ、果樹園というには広大ですが....」


ガイドはそう言った。

そして、それは本当であった。


「....凄いな」


マイクロバスから降りた私は、一面に広がる森を見た。

コロニーの内部にあるそれだけで十分凄い光景だけど、中に入るとその異質さがよくわかる。


「木の生育が全部同じだと....?」

「誘導技術によって、収穫の際に邪魔になるイレギュラーな成長を阻害するんですよ」

「成程...?」


結構エグイ事をやってるな、と思ったけれど。


「じゃあ、収穫体験とやらをさせてもらおうか?」

「気が早いですね、ですが大丈夫です、既に準備は整っておりますから」


ガイドがそう言うと、色々なものを積んだドローンがこちらに向かって飛んできた。

よく見ると、ハサミとバケツだ。


「このハサミで、ここの果物をバケツに収まるようにお取りください。バケツから溢れたら、その分はツアー料金には含まれず、購入という形になります」


私達は全員分バケツとハサミを貰い、果樹園に散った。

エリアごとに別の果物が生っているが、私は甘い物には特に興味がないので、地球の蜜柑に似た果物をバケツいっぱいに収穫し、他の全員を見て回ることにした。


「ファイスはこういうのは興味ないのか?」

「ええ」


ファイスは森の中で固まっていた。

人工の環境とはいえ、森を吹き抜ける風が、宇宙暮らしのファイスには不思議に思えるようで、両耳があちこちを向いていた。


「とにかく、バケツ一杯は何か取っておけ」

「はっ」


私はその場を離れ、ノルスを探す。

だけど、先にケインが見つかった。


「ケイン、あんまり配分を考えないと後で困るぞ」

「う、うん...」


ケインは欲張って取り過ぎていた。

おまけにハサミの使い方もよく分かってなかったようで、切り損ねたものが複数見受けられる。


「ケイン」

「な、何?」

「ハサミはこう持って、親指に力を入れるんだ、切り損ねた分はお前のバケツに入れろ」

「はい...」

「植物は傷ついた分味が落ちる。切る時は責任を持ってやれ」


多分お兄ちゃんならそう言うだろう、お兄ちゃんは万物の生命に慈しみを向けているだろうから。

ケインを置いて森を探索すると、アリアとソフがいた。

アリアがソフを持ち上げているものの、高い枝に生っている果物に届かないようだ。


「ソフ、俺の上に乗れ」

「そっ、そんな...畏れ多いです!」

「いいから乗れ、高い場所に刃物を持って上がるのは危険だ」


私はソフを肩の上に乗せ、高い枝に届かせた。


「ゆっくり切るといい、そう難しくは無いはずだ」

「はい...!」


何かを切るような音が響き、「あっ」と小さな声と共に果物が落ちてきた。

ソフを振り落とさないように、それをキャッチする。


「次は落とすな」

「はいっ!」


私はその後、終わるまでソフとアリアの果物狩りを手伝ってあげた。

補助器具とかないのかなと思ったけれど、そもそも子連れが来ることもほぼ無いそうだ。


「では、皆様の取っていただいた果物はこちらで加工し、お届けさせていただきますね」


私とファイスは適当に好きな物を、アリアとソフは高い場所に生えていたリンゴみたいなやつを、ケインは何でもかんでも、ノルスは糖度が高い物を集中的に狙って取っていた。

それぞれ種類ごとに分けた上で、個人の名前付きの缶に詰めて送ってくれるらしい。


「ありがとうございました〜」


そして。

終始楽しそうだったガイドに見送られ、私達はコロニーを離れるのであった。


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