208-コロニー見学(前編)
私たちはアドアステラに乗り、どこの軌道上にも位置していない超巨大コロニーへと辿り着く。
その正式名称は超大型食糧生産コロニー・ケラクライム。
『こちらコロニー警備艦隊、そちらの所属と目的を明かせ』
当然、アポ無しで飛んできたアドアステラは警戒される。
だけど、こっちには紹介状がある。
それを提示しつつ、アドアステラの所属と見学目的であることを述べる。
『確認した、誘導ビーコンに従って入港せよ』
「感謝する」
流石にコロニーは巨大なので、アドアステラが入港するだけの大きさのドックはあった。
そこに入港し、今度は女の人に歓迎を受けた。
「ようこそ、ケラクライムへ。私はツアーガイドのフィラン・コーテンです」
「コーテン...? まさか」
「お父様のご紹介でいらっしゃったのですね、傭兵のお方」
「...カルだ」
「カル様、ではこちらへ」
あの男、妻子持ちだったのか...
そう思いつつ、私たちは案内される。
その先は、ロビーらしき広い空間だった。
あちこちにカウンターがあるものの、今は無人だ。
「済まんな、急に押しかけて。準備も出来なかったようだ」
「いいえ、この部屋は数十年前から無人ですよ」
「そうなのか?」
「ええ」
ガイドは、私たちにここの歴史を軽く教えてくれた。
最初に王国がこの星系に入植した時、どの惑星も居住可能な環境ではなかったらしい。
テラフォーミングは可能だが、当時の王国の技術水準では何十年もかかる大事業であった。
そこで、巨大なコロニーを建設してそこに居住、テラフォーミングが完了するまではそこに住んで待つという策に出たそうだ。
惑星のテラフォーミングが完了してからは、住民たちはそちらに移住、農業惑星としての開発が始まってからは他所へと移転した。
そして、放棄の運命を辿ろうとしていたコロニーだったが、農業惑星としての計画を実行していた当時の超巨大コーポレーションの手によって改装され、農業用の環境操作型コロニーへと生まれ変わったらしい。
「王国に存在するコロニーの中で、このコロニーは五番目に古いものになります」
確かに、凄くスケールの大きい話だ。
入植から数十年、そこから二百年程経っての農業惑星としての開発、それが終了してから既に三十年以上経っている。
「この減圧室を通過すれば、いよいよコロニー内部になります、準備はいいですか?」
「ああ」
「大丈夫です!」
「構いません」
「いいよ、行こう!」
「「はい!」」
「...はい」
そこそこ長い通路(減圧室)を抜けると、その先は――――
超広大な空間が広がっていた。
円筒形のコロニーでしか見れない光景だ、最奥部の壁面を除き、それ以外の全てに地面が張り付いている。
どうやら慣性制御は壁面を中心に発生しているみたいで、壁を歩くような格好になるようだ。
「ここは耕地面積こそ惑星表面に比べて小さいですが、他にもコロニーは新設されていますので問題ありません」
「惑星表面に比べて耕地の準備が楽そうだもんね」
「実際は手間の面ではそう変わりませんが.....土地が有限ではないのも大きい面がありますね」
ラビの言葉はある程度は合っていたようで、ガイドさんは楽しそうだ。
「ここではどんなアクティビティが?」
「では、ここから穀類、野菜類、人造肉、最後に果樹園を回ります。果樹園では収穫体験もやっておりますよ」
「やったぁ、持って帰れるの!?」
「安全基準の観点から、そのままでは持ち帰れませんね。我々の手で回収後、加工して缶詰としてお届け致します。」
「そっかぁ...」
ケインが意気揚々と聞くが、流石に採れたてでもそのまま食べられはしないようだ。
まあ、文明圏で生まれた人間が非文明圏の水を生で口にできないように、何かしらの不都合があるんだと思う。
「こちらが、穀類エリアですね」
穀類エリアでは、ビルが無数に建てられており、吹き抜けとなっている部分からは生育中の麦や米が見えた。
「フォースフィールドで密封した上で独自の環境をなるべく再現し、様々な星の穀類を別々の収穫サイクルで量産しています」
「土壌の疲弊はないのですか?」
その時、ノルスが初めて発言した。
土壌の疲弊ってなんだっけ....
あ、そういえば。
植物学でちょっと齧ったような気がする。
先駆者が凄すぎて成果が出しにくい分野だったからあんまり勉強してないけど。
「土壌の育成設備を別に設けていますので、スキャンを活用して土壌の状態を見て入れ替えを適宜行っています」
「成程」
よく分からないけれど、地球の技術水準だったら結構高度な事をやってそうだよね。
私達はマイクロバスのようなものに乗って、次のエリアを目指して走り去るのであった。
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