206-潜入!食料加工プラント!(前編)
翌日。
私たちはケラカⅣの軌道上にある食料加工プラントを訪れていた。
アドアステラではプラントに入港出来ないので、シャトルに乗っての宇宙旅だ。
アドアステラはケラカプライムの中型船舶ドックを借りて、そこに入港したままにしている。
アドアステラにはシトリンが残っているので、留守中でも大丈夫だ。
「このプラントの見学者なんてほぼ居ませんからね、責任者である私、フォーシュ・コーテンが直接ご案内します」
ケラカ星系は、ケラカⅡの軌道上にある軍事・民間ステーションに人口が集中しているためだろう。
外からの客はほぼ来ないらしいというのを、今朝の出発前に聞くことができた。
「いいのか?」
「ええ、何か問題が起きない限りは、この仕事は暇ですから」
正社員がそんなこと言っていいのかな...
そう思いつつ、私たちは彼に続く。
「除菌室のようなものはないんですね」
「見学コースは完全に滅菌される空間ですので、全く問題ありませんよ」
ノルスの疑問に、コーテンはそう答えた。
食料加工プラントは、宇宙空間に浮かぶ超巨大な構造物で、惑星で生産されたものは此処に運び込まれて加工されたのち、集積ステーションに運ばれたのちに流通に乗せられるようだ。
「まずは、輸送艦に乗せられてきたものがどうなるかをお見せしましょう!」
私たちは少し歩き、ドックが一望できる展望台に出る。
そこでは、輸送艦に接続されたコンベアがコンテナを運んでいた。
「現在入港しているのは、我らが誇る大型輸送艦、マンモスです!」
「マンモス......」
「機動性と速度を犠牲に、大量輸送を実現したのです! 現在は六隻が運用されています!」
穀物類を輸送する三隻と、野菜・肉・魚介類を輸送する三隻に分かれていて、今入港しているのは後者のようだ。
反対側を見ると、コンテナが三つのレーンに分けられているのが見えた。
「それぞれに分けられたコンテナは、その先でさらに種類別に分かれます」
私たちはさらに先へと進む。
ファイスは流れていくコンテナに興味津々と言った様子だったが、私が動くと同時にしっかり歩幅を合わせてついてきた。
「野菜などは、運ばれてきた段階で最低限の選別はされているものの、まだ不揃いな状態です」
「ここで選別をするのか?」
「そうです!」
ノリノリで解説するコーテン。
私は困惑しつつ、次の場所へ移る。
「ここでは、野菜類をそれぞれの方法で殺菌・殺虫・解毒・保存を行っています」
「おお....」
缶詰野菜のあの新鮮さを保つ行程がここで行われているようだ。
「状態保存加工技術ですね!」
「よくご存じですね、流石はクローリア星の方です、知識量が豊富だ」
ノルスが目を輝かせて言う。
原理はよく分からないけど、そういう技術があるのは確からしい。
「肉とか魚はどこで加工してるの?」
「こちらですよ」
さらに先へ進むと、展望窓からその工程が見えた。
コンベアの上を流れる何かの肉が、装置の中へと消えていく。
「有機物の組成に変異を及ぼさずに99%の除菌を可能とする装置に通した後、同じく状態保存加工技術で状態を固定、新鮮なままパッケージングします」
「魚介類はあまり見ないな、どこに流通しているんだ?」
「地方ではあまり収益が見込めないですね、現在は首都星系周辺での健康食ブームで需要が高まっていますから、そちらに」
「成程」
この世界でも健康食ブームとかあるんだ....
アミノ酸とか、ディーエイチエーとかだっけ?
「さて、ここはあくまで加工プラントですが......」
その時、コーテンが足を止め、こちらを振り返る。
「折角ですから、食事して行かれませんか?」
彼は屈託のない真剣な表情で、願ってもない提案を私たちにしたのであった。
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