205-豪華な(?)ディナー
夜。
私たちは施設を見学し、職員用の食堂を訪れていた。
ここは数百人程が働いているらしく、その程度の食い扶持くらいなら保障してやるということなのか、惑星上で生産された食料品を使った食事が食べられるらしい。
メニューは固定で、週間サイクルで変化するらしいが。
「初めまして、カル様。責任者のライリーです、貴方の噂は予々聞いておりますよ」
「ああ、職員用の食堂を使わせて頂いて感謝する」
「もともと、ここは千人収容可能なのですが、技術の発展によってより少人数での運営が可能になりましたからね、余剰分の食料ならいくらでも提供出来ますよ」
というわけで、私達は食堂で夕食を頂くことにした。
今日は施設に宿泊し(戻ろうとしたら、軌道エレベーターとのスケジュールが合わないので待つのであれば宿泊施設を提供する、と言われてしまった)、明日また軌道エレベーターで帰還する予定である。
今日の食事はパン二つとマカロニの入ったトマト風スープとサラダであった。
一見地味に思えるけど、ちゃんと小麦粉を練って作られたパンと、トマト風のスープには、魚介系の出汁が使われていて、マカロニもちゃんと小麦製だ。
サラダに関しては、鮮度が保たれているというだけで宇宙では大きな価値を持つ。
「献立はAIが考えているらしいよ」
「なるほど、偏りがないのはそういう事ですか」
ノルスとそんな話をしながら、それらを完食する。
ただし、おかわりはなかった。
『申し訳ありません、健康データを管理して食事量を設定するAIなのですが、私と違い旧型なので...データのないお客様には、例外処理を設ける事しか出来ませんでした』
「ああ、構わない...」
私はあまり食べない方なので、食べる方のファイスとケインに譲った。
ソフの方は、ゆっくり食べていたので食欲がないのかと思ったが、
「その...旦那様にお仕えするには、常に十分食べるべきだと、アリア様が...」
ソフも少食らしく、お腹を壊して仕事に響くくらいなら...という考えのようだった。
「...それに、夜伽のためにも少しでも貧相な体から抜け出さなければいけませんから...」
私がなんとなく言った「痩せた女を抱く趣味はない」という言葉は、意外にソフに刺さってしまっていた。
彼女と会う時は大抵仮面をしている私を、ソフは男だと思っているようだ。
だから早くいい女になって...と焦っているらしい。
「無理するな、食事はすぐ体に現れない」
「ご主人様、そこですか!?」
「彼女が俺に仕える事以外を考えられるまでは、これでもいいだろう」
「...そう、ですね」
アドアステラはアットホームな職場だ。
奴隷なんて居ないし、重労働なんて全部機械がやる。
だから、ソフにはいずれ、生きているだけでそれが「価値」だと分かってもらえるはず
「今の俺が何か話したところで、結局誤解に終わる。こういうものは時間をかけて解決するものだ」
「...はい」
アリアは納得いかない様子だったけれど、もっと関係が拗れる方が面倒だし...
お兄ちゃん以外と形式的な付き合いしかして来なかった私は、人との誤解の解き方がよくわからなかった。
「お背中お流し致します」
「不要だ」
「そんな...」
数時間後。
私は部屋備え付けのユニットバスの更衣室で、ソフを拒否していた。
「旦那様のお背中を流したいのです!」
「いいが...私は女だから、えっちなシチュエーションには持っていけないよ」
「性別など関係ありません! 奴隷の仕事は旦那様に満足していただく事です!」
「...じゃあ、いいか」
私はソフを風呂場に誘った。
その後、浴槽に隠れていたラビに乱入されることになったが、誤解の一つはなんとか解くことが出来た。
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