197-救出
エミド主力艦を倒したカルは、
「う、動けない....」
ベッドに寝かされていた。
寝かされているというよりは、ベッドに倒れているのだ。
麻痺している訳ではなく、その全身に力が入らない状態であった。
カルセールの全力放射は、カルセールの四発しか残っていない状態での最大照射よりも高い威力を発揮した。
その力は、カル自身の得たある力に起因している。
だが、カルの自覚していないその「力」は、カルの今の身体ではまだ扱えない。
カルの脆弱な身体そのものを滅ぼしてしまうその力を、カルセールは吸い上げて利用したのだ。
動けなくなる程度なら安いものであった。
『予備パーツは必要か?』
『問題ない、備品ではなく時間が必要だ...こちらのレーダーは異常が起きており役に立たない、索敵を願いたい』
『分かった、我々はゴールド傭兵だ、報酬は.....』
『勿論用意する、法定の価格に加え、修理中は通常の依頼価格で雇用扱いにする....それから、帰りも護衛として来てくれるのであれば、追加の報酬を支払おう』
『その辺りは艦長と相談するが、良いか?』
『ああ、決まれば教えてくれ』
ファイスは副リーダーとして、艦隊のリーダーと交渉していた。
彼はカルが喜ぶものを知らないが、少なくとも報酬が高ければいい事を知っている。
なので、交渉でそれを得ようとしているのだ。
逃げずにとどまってくれたアドアステラに恩義を感じている艦隊リーダーは、最初から幾らでも出す気なので、交渉はいまいち歯車が嚙み合っていないのだが。
「あの瞬間に発生した熱量と、カルセール自体の許容量が嚙み合わない....しかし、次元からのエネルギー移動は....有り得ない、あの程度の熱量では.....」
ブリッジでは、一人ノルスが作業していた。
カルの放った一撃に違和感を覚えたためだ。
しかし、いくら計算してもカルセールの放った一撃に使われた熱量が、カルセールから消費された熱量より多い謎を解くことは出来なかった。
その横では、機能停止したシトリンが椅子にもたれかかっていた。
シトリンのアップグレードされたとはいえ旧式の機体では、船の舵を取るのはそれなりの負荷となっていたのである。
「ふふん、王手!」
「ああっ!? 負けちゃった…」
そして、ケインとアリアは将棋をしていた。
カルが二人のために作った仮想将棋であり、ルールも全く同じである。
アリアが得意げに王将を指し、ケインの敗北が確定した。
この将棋、カルがプログラムして作ったものではあるが、おやつを賭けられるのだ。
今ケインはアリアに取られたものを取り返そうとして勝負を挑み、反対に搾取されている所であった。
アリアはケインの指し手をどうやってか読み、それに合わせて指しているためケインに勝機はない。
『全ての艦の応急処置が完了した、これより移動を開始したい。どうか?』
そして数時間。
カルがなんとか立ち上がれるようになったタイミングで、そんな通信がブリッジに入った。
『どうされますか、主人?』
「行こう…もう少しでそっちに行く」
『はっ!』
ファイスは艦隊に追随する事を伝え、艦隊と共にアドアステラは連動ワープへと入るのであった。
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